第五百二十四話:倉庫へ侵入
すみません。投稿時フクちゃんのことを反映してませんでしたので訂正しています。
物流倉庫へ向かう幌のついた荷車をファス、トア、フクは追跡を始める。荷車は蜥蜴のような魔物に牽かれており、運転しているのは顔の片側に鰐の鱗がついている獣人だった。二人はそれぞれの得物をアイテムボックスにしまいファスはフードを目深にかぶりながら【精霊眼】で観察をし、トアは外套を体に巻きけながら鼻をクンっと動した。
「ありゃあ鰐の獣人だべ。ラポーネでは見たことねぇ獣人だな。あと、魚の生臭い匂いだがするだ。他には……豚肉の匂いもするだなや」
「中身の見えない樽はわずかで他は魚の塩漬けが入っていますね。恐らく獣人相手に鼻を誤魔化す為でしょう。ますます怪しいです」
「ルミコの方は見つかっただべか?」
「いえ、どうやら彼女はフクちゃんに匹敵する【隠密】の使い手のようですね。おそらくは特殊な装備を使用していることもあって潜伏中は見つけるのは至難です」
「ファスでもそうなると向こうから見つけてもらうか近づくしかねぇだな。合流が難しいならオラ達は隙を見て荷に近づくだ」
「そうですね武装した者も増えていますし、ここは様子を見ましょう」
二人は視線を避けながら荷車に付いて行く。物流倉庫は金属の杭と木板の壁で囲まれており、入り口の門には見張りが立っている。荷車に乗る鰐獣人が一言、二言何かを言うと見張りは荷を改めることなく荷車を通した。ファスがトアに視線を向ける。
「トア、何を言っているか聞こえましたか?」
「『餌やりだ』って言っただ」
「わざわざ見通せないようにした樽を運び込んで『餌』ですか。さて、どうやって入りましょうか」
(いこうか?)
フクがファスのローブから顔を出す。
「そりゃ、フクちゃんに入ってもらえばいいけんど、ここで待ってるだけじゃオラ達の張り合いがねぇだ」
「当然です。私達だけ手ぶらでは帰れません。こうなると、潜入に優れるフクちゃんには自由に行動してもらい、手分けして調べた方がいいでしょう。私達はあの荷を追います」
「賛成だべ【念話】で情報を共有しつつ、調べていくだ。余裕があればフクちゃんにはルミコと合流を目指して欲しいベ。頼めるだか、フクちゃん?」
(アイアイサー)
ピョンと飛び出てきたフクちゃんはすぐに壁を伝って中へ入っていった。
「では、私達もいきましょう」
「了解だべ。なんだか楽しくなってきただな」
トアとファスは顔を見合わせてにやりと笑みを交わした。そうして二人はぐるりと倉庫の外周を回って侵入場所を探す。ファスが壁の向こうまで見通して人がいないタイミングをつくり、ファスが【重力域】で二人を軽くして、トアがファスの手を掴み【空渡り】で空を蹴って二人で壁の上から超える。すぐに人の目を避けて草むらに飛び込んだ。
「ほい、侵入完了だべ。高そうな服を着たもんが多いべな」
「倉庫へは正面以外にも入り口が多そうです。これは……地下もあるようですね」
「ファスがいたら、隠しごとも何もねぇだな。まずはさっきの荷車に乗るだ。運び込む前に幌に入り込むだよ」
「わかりました」
二人が草むらから出る。高レベルの身体能力を遺憾なく発揮して視線をさけながら幌の中に入り込んだ。すぐにファスが樽に顔を近づける。
「中は見えるだか」
「流石にこの距離なら看破できます。……中は人ではありませんね」
「まぁ、そう簡単に人攫いの現場へ遭遇できるとは思ってなかっただ。そんで中身は何だべ」
「何か、白い粒のようですが……見ただけではわかりませんね」
「ちょい待つだ」
トアが太ももにとりつけた小型のアイテムボックスから手斧を取り出し樽に小さく傷をつけると中身を指先で摘まみ鼻先に当てた。
「白胡椒だべな。この香り、最高級品の『真珠胡椒』で間違いねぇだ。ただ、持っているとなんか嫌な感じがするべ」
「この感じ……微かですが砂漠で見た麻薬に近いもの感じます」
「ふぅん。これが人攫い達の収入源ってわけだか。胡椒に呪いをかければそれは麻薬に似た性質を持つ調味料になるわけだべ。高級胡椒なら船荷としても怪しまれない……食材に対する冒涜だべ。許せねぇな」
トアが犬耳を横にして目を細める。口調は軽いが、料理人として思う所があるようだ。
「この胡椒だけでは麻薬としての効果はかなり薄いですね。ここから加工するのかもしれません。まずは荷の行方を確かめましょう。この荷の行先が件の【赫竜の宿願】と繋がっているはずです」
「つっても、もう確かめるまでもねぇと思うだよ。こんな胡椒を使うってことは相当な金持ちか……貴族しかいねぇだ。そんでここは浮島とかいう沖に浮かぶ島行きの物流拠点だっていうでねぇか。だいたい流れは読めたべ。フクちゃんにも【念話】で伝えとくだ」
二人はそのまま幌を出て倉庫の中を隠れながら荷車へ付いて行く。そうしていくと、赤いローブを来たマーマンが訪れ、荷車を引き継いだ。
「赤いローブのマーマン……露骨ですね。この先にある昇降機へと向かっているようです」
「オラ達なら壁を伝って降りれるけんど、下に人はいるだか?」
「います。昇降機の先に広間がありそこで何やら怪しげなことをしていますね。動きはわかりますが、具体的に何をしているかはわかりません。壁を伝っておりようにも先が一本道で隠れるのは難しいでしょう。広い場所に行きさえすれば【スキル】で暗闇を作って身を潜めれます」
ファスの透視能力はあくまで魔力を読み取るものであり、何か怪しい動きを複数人がしていることくらいしかわからないようだ。
「そんなら、ちっと乱暴な手段を使うだか。荷を改めたマーマンは二人……昇降機前であのローブを貰うだ」
「そうしましょう。どのように襲いますか?」
「マーマンにこの手が通用するかわかんねぇけんど。オラが注意を引くだよ」
物陰から二人は出た二人はまるで初めからそうだったように自然に荷車に歩み寄り、赤いローブを来たマーマンに話しかける。
「『餌やり』ご苦労様ですだ。お兄さん達、お話してもいいだか?」
トアが外套をずらして、腕を寄せて身体のラインを見せる。
シャツの上に軽装の胸当てこそはしているものの押さえつけられたその豊満な胸元に男共の視線が釘付けになる。
「ん、犬獣人か。お前等用の胡椒はここじゃないぞ」
「まてまて、こんな上等の雌犬お目にかかったことねぇぞ。おい、お恵みの胡椒が欲しいのか肉好きめ」
「おい、これは奉納品だぞ」
「ちょっとくらいいいだろ」
二人のマーマンの注意がトアに向いている最中、背後から影が蠢く。【闇衣】で気配を消したファスが回り込んでいた。
「……マーマンにもそれは効果があるようですね」
聞こえてきた言葉に二人が振り返る前に、溝の入った短剣が振られる。
すぐにマーマン二人はその場に倒れた。
「フクちゃんの毒を付けた毒短剣。便利だなや。扱いも様になってるでねぇか」
手際良くローブを脱がしながらトアがファスを褒めるが、ファスはややむくれた様子で短剣をアイテムボックスにしまう。
「ご主人様に習った手刀の応用です。フクちゃんの昏倒毒は半日は目覚めません。さっさとローブを奪って地下へ向かいましょう。この者達は適当にその辺に転がしておきましょうか」
【重力域】で浮かべた二人を棚の陰に押し込んで、奪った赤いローブを着たファスとトアは荷車を牽く蜥蜴の手綱を引いて昇降機へと乗り込んだのだった。
なんか、この二人って思ったよりも好き勝手に動きますね。うん、バイオレンス。
ちなみに大体四つ足は獣判定なのがこの世界です。
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