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政の継承~戦国リーダーズ~  作者: 葵 悠政
第四章『沈黙の輪郭』

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第六十二幕 『静かなる協力者』

第六十二幕『静かなる協力者』


広忠の死因を巡る調査が進む中、信長はある人物に接触していた。

その人物の名は——於大の方。 広忠の元妻であり、尾張水野家の令嬢。 そして、尾張の議員・水野信元の妹でもある。


寺院の一室。 障子越しに差し込む光が、静かな空気を照らしていた。

於大の方は廊下を歩き、信長の前に姿を現す。 その足取りには迷いがなく、表情には覚悟が宿っていた。


その背後には、兄・水野信元の姿もあった。

知多半島北部を地盤とする尾張の議員として、彼もまたこの場に立ち会っていた。


信長は二人を迎えながら、静かに言葉をかける。

「……ご足労いただき、感謝します。 広忠殿の亡骸について、検視の許可をいただけると聞いております。」


於大の方は頷いた。

「兄から話は聞いております。 広忠様の死が“病”ではなかった可能性—— それを確かめるためなら、私も協力いたします。」


信元は一歩前に出る。

「私は尾張の議席を預かる身。 だが、広忠殿は妹の夫であり、三河の政に深く関わった人物でもある。 その死に疑念がある以上、出自も立場も関係ない。 妹の判断は、私も支持する。」


信長は目を細める。

「水野殿が尾張の議員としてこの件に関与してくださるなら、 三河の政だけでなく、尾張の均衡にも影響が出るでしょう。 それでも、進める覚悟は——ありますか?」


信元は静かに頷いた。

「真実を前にして、均衡など意味を持たぬ。 政は、事実の上に築かれるべきです。」


於大の方は静かに手を合わせた。

「広忠さんは、私にとって夫であり、三河の柱でした。 その死に、疑念があるのなら—— 真実を知ることが、私の務めです。」


こうして、於大の方と水野信元の協力により、広忠の亡骸は検視に付されることとなった。 政府系の検査機関による鑑定の結果、遺骨から微量のヒ素が検出された。 病死とされていた広忠の死は、毒殺だった可能性が高まった——。


信長は報告書に指を添えた。

「その結果——骨から微量のヒ素が検出された。 広忠が駿河文教党の議員だったこともあり、今川系の人間が近づいても誰も怪しまなかった。 義元、お前の手の者が、静かに毒を仕込んだ。」


元康の表情がわずかに揺れる。 息を呑み、言葉を絞り出す。

「……毒、だったのか。」


信長は答えず、義元の方へ視線を向けた。 義元はグラスを置き、静かに窓の外を見つめる。


政の選択—— それは、誰かの命を奪い、誰かの未来を繋ぐ。 その冷酷な均衡の中で、三河は形を変えてきた。


だが、均衡は永遠ではない。 その歪みは、確かに今、音を立てて崩れ始めていた——。


父の死の真相。 阿部家の悲劇。 そして、義元の影—— すべてが、静かに繋がり始めていた。


今回は、静かに動き始めた協力の輪が、広忠の死に潜む影へと手を伸ばす回でした。

言葉にされなかった想いと、積み重なってきた沈黙が、少しずつ形を帯びています。

揺らぎ始めた均衡の先に、どんな光があるのか——次の幕で、また静かに確かめていただけたら嬉しいです。

更新は毎週月・木の22時にお届けします。

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