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宇宙の行方  作者: 春木
第二章 神の治める地
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24話 平和を願って

 紅は最初からコレが狙いだったのだ。

 どう転んでも、セトの政権が保持されるか、ホルス率いる反逆軍が勝利するか、どちらにせよ、橙が乱入し、セトも他の奴らも始末するであろうことを。

 そしてその時、橙は、先程までとは違う力を発する二人を睨み付け、咆哮を上げながら周囲の兵士たちを吹き飛ばした。


「邪魔だァァァァ!!!」


 ゴォッ!!


 全ての人形を取り込み、全力の橙と張り合うほどの力を見せる二人。刃は砕かれることはなく、橙の棍棒とせめぎ合っていた。

 しかし、やはり神族を殺している組織の一人。あと一歩が足りない――――。


「もう愛称じゃなくていいよね、行秋くん」

「夏目さん……」


 二人には判っていた。ここで支援をすれば確実に橙を追い返すことはできる。しかし、それをすることは、今を死守できても、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ことを示すことにもなる。

 神族の子供たちが王政を握るということは、今後も龍星群には狙われる。二人は、それを越えられる力を示さなければならなかった。


「僕たちは……何もできないんでしょうか……?」

「さあ、それは()()()()()()()んだ……」


 その一言で、行方はハッとする。夏目の部下として動いていた頃、行方はよく「裏の裏の裏を読め」と言われ続けてきた。でも今の言葉は、そのまま受け取ればいい。『君自身が考えろ』、それが意味することは。


()()()()()()()()……。そういうことですね……!」


 行方が一人でに呟くと、夏目はニコっと微笑む。


(僕が加担して、且つ、今後ラムセスに強襲は難しいと龍星群にも思わせること……)


 ゴッ…………!!


 マアトは、反逆軍で対峙した時を遥かに上回る速度、威力で刀を振り上げる。


「ホルス……!!」


 そしてホルスもまた、以前とは比べ物にならない速度で動き回り、透明化を駆使して翻弄しながら刀を交える。

 トート、ファラオも同様に加勢するが、橙は四人係を相手していても、見切っている様子で棍棒を振り回していた。


「洒落臭ェ……!! 行方行秋!! さっさと身体を返せ!! そうすりゃこんな奴ら簡単にぶっ殺せるんだ!!」


(僕が身体を返さないだけで役目は果たせている……。しかし、逆に言えば、身体が元に戻れば今の四人をも上回る力を持つ……。僕には何ができるんだ……!)


 ふと、夏目と再会した時、夏目に言われたことを思い返す。


『君の作戦が成功するよう、僕の "友人" を紹介しよう』


「レイザー……?」


(レイザーの異能力は確かに強力なもので、イシス奪還も、今の戦闘においても、レイザーの力があれば橙を圧倒できるかもしれない……。けれど、それはレイザーの力であって……)


「いや……。レイザーの異能力……。僕の作戦……」


 行方は、均衡状態の戦場を睨み付ける。


   *


「クソッ……! まだ足りないのか……! もっと力を覚醒させなければ……!! もっと……力を……!!」


 その目の前に、行方が現れる。


「アキ……!? どうして……!?」


 何故、ホルスが行方の登場にここまでの動揺を示すのか――――。

 それは――――。


「何故……()()なのだ……!? アキ……!!」


 行方は霊体になっていた。その為、その姿はオシリスの神能を受け継いだホルスにしか映らない。


「僕を憑依するんだ、ホルス!!」

「憑依……!? ど、どういうことだ……!?」


 霊魂を憑依・支配していた楽のことを思い出しながら、ホルスの力になろうとするが、あくまで楽の行っていたことは異能力で成し得ていたこと。しかし、行方にはホルスにはできるという直感が働いていた。


「憑依か。面白いことを考えるものだ。異星人よ」


 そう呟いたのは、ホルスと行方にしか見えていないオシリスの姿。


「冥界に連れて行かれた者の魂は憑依できぬが、そこに現存する魂を憑依することはできる。しかし、だからといって大幅な戦闘力の強化になるとは思えん。貴様が……相当な手練でもない限りな……」


 行方が口を閉ざす中、ホルスが口を開く。


「いいや……。私はここまで導いてくれたアキを信じたい! お父様……憑依の仕方を教えてください……!」


 オシリスはニタリと笑むとホルスの肩を抱き寄せる。


「その者の魂に触れよ」


 オシリスが手を伸ばすまま、ホルスは行方の魂へと手を伸ばす。すると、ホルスの掌には自然と行方のオーラが集約されていく。


「そのまま、自身の心臓……魂に注ぐのだ」


 言われるがまま、行方の魂を心臓へと入れる。本来なら決して相入れることのない二つの魂に身体は拒否反応を示し、途端に眩暈に襲われる。


「意識を途絶えさせるな。お前たちの想い、願い、そして、意志を……()()()させろ……!!」


(ホルスは大丈夫なのか……? ラムセスには冥界という概念があるから、この憑依の策に賭けたが……予想以上に大掛かりな儀式だ……。それに……想い、願い、意志の三つを一体化させる必要があるとは……。ホルスは……何を……)


 しかし、ホルスの朦朧とする中に見えた強い意志に、行方は笑みを浮かべた。


「そうだよな、ホルス。お前の願い……もう僕は知っている。もう、関わってしまったから……!!」


「「 私たちの想い、願い、意志は…… "平和" ―――――― 」」


 -神能・憑依-


 ゴッ…………!!


 ホルスが行方を憑依した瞬間、両者の脳はリンクする。行方は瞬時にホルスの神能の全てを理解し、ホルスもまた同様に、行方の力をその身に宿した。


(な、なんなんだ、この男は……。腕力でいえば神族に遠く及ばないというのに、解析力が桁違いだ……。それに、それらとはまた違う底知れぬ力が垣間見える……)


 驚きも最中、狙うは橙。マアトも、待っていたかのようにニタリと笑むと、地に手を付ける。


「判ってるよ、マアト……。私たちで王となるのだ……!!」


 -神能・透明化-


「なっ……!!」


 ホルスが神能を唱えた途端、自分のみならず、マアト、トート、ファラオ、橙以外の全ての兵士を消した。ホルスの力任せな頭脳では考えることさえなかった、真の能力の扱い方を、行方を通して知ったのであった。


 -神能・紛争の乱-


 ゴッ!!


 そして、マアトもまた、真なる神能を唱える。瞬間、大地はメキメキと割れ、崩れた大地は無数に宙に浮く。


「なんつー力を隠してたんだ!! テメェら!!」


 雑兵に、力の芽生えていない若い神族と甘く捉えていた橙は、天変地異ほどの力を目の当たりに声を荒げる。


 ザン!! ザン!!


 そして、見えない兵士たちの無数の剣が橙を斬り付ける。咄嗟に察知して反撃をしたいが、足場の大地をマアトが操作している為、成す術無く負傷し続ける。


「クソッ……こんなはずじゃ……!!」


 ザッ――――――――


 そして、ホルスとマアトは、その姿を膝でギリギリ立っている橙の前に現れる。


「テメェらが兵士たちの中心なのは判ってんだ……。テメェらをぶっ殺せば……まだ……」


 二人は同時に刀を橙へと向ける。


「「 私たちの惑星から出ていけ!! 私たちがいる限り、この惑星には手を出させない!! 」」


 ゴッ――――――!!


 そして、完全に惑星エネルギーを掌握した二人から、膨大な力が発され、橙はラムセスより消えた。


「ハァハァ……」


 行方の憑依は解かれ、ホルスは慣れない能力を駆使した為か、血に膝を付ける。それをマアトは肩を抱いた。


「ふっ……。アキ……いや、行方行秋といったか。毎回驚かされるものだ……。地球人という者には……」


 行方は、レイザーにより()()()()を負わせることで、()()()()()()()させた。この時、ホルスの覚醒により冥界との境目が曖昧になっていた為、且つ戦闘中の今であれば、身体を保っている状態で橙に変換されることは無いと考えた。

 そして、トートの使用した薬は『傷を治す特効薬』。大きな穴は塞げないが、刃ほどの傷ならばすぐに治せる。火傷であれば、全身が痛手でも傷自体は小さいものの為、予想通りすぐにトートが手当てに入っていた。

 平和を巡る紛争は――――――幕を閉じた。


   *


 ホルスとマアトは、二人並んで墓石の前に立つ。


「ゆっくりとお休みください……お父様……」


 マアトが墓石の前の花を揃える中、ホルスはただ黙ってその光景を眺めていた。


「終わったよ。付き合ってくれてありがとな、ホルス」


 ニコッと笑い、マアトは足早に墓石を去る。これから、二人のやることは多い。

 しかし、マアトが少し先に行ってから、ホルスは後ろの墓石を見遣り、綺麗な敬礼の後、深いお辞儀を示した。


「あとは私たちにお任せください。二人の偉大なる王……」


 そう風の中に呟き、ホルスは、二人の墓石を去った。



 続 崩壊都市

◎惑星ラムセス

 オシリスを中心として神族五名により創造された世界。神族による結界が強く、外界から侵入することが難しい。実の兄であり、王政を敷いていた冥界の主オシリスの死後、紛争の主セトへと王権が回ったことで、『暴虐の徒』と呼ばれるほどの独裁制度を敷く。それに対するは、オシリスの息子セト率いる反逆軍によるセトの暗殺、及び王権を取り戻すことだった。


冥界の主 オシリス

 冥界とこの地を繋ぎ、死者を冥界へと送る役割を担う。ラムセスの創造主。

紛争の主 セト

 オシリスの弟。暴虐の徒と呼ばれ、自身を崇拝しない者の迫害をした。

豊穣の主 イシス

 オシリスの妻、ホルスの母。全てのものを活性化させる力を持ち、自然を豊かに守る。

正義の主 マアト

 セトの妻、マアトの母。正義、秩序を司る者。世界のルールにおいて絶対的な権限を持つ。

反逆軍 軍隊長 ホルス

 オシリス、イシスの子供。与えられた神能は透明化。全てを透明化させる力を持つ。

反逆軍 軍隊長 マアト

 セト、マアトの子供。母の正義を貫こうとしたが、父の紛争の力を受け継いでいた。

大太刀のファラオ

 紛争の番人。セトの右腕として働いていたが、本来はオシリスからの命により、紛争を抑え、決して敗けないことを使命とする。


大星母だいせいぼ

 様々な惑星の治安維持、エネルギーの安定化に努め、調査隊・戦闘部隊・技術班に分かれる、宇宙でも名の知れた大規模な組織。大星母にしかない技術も有している。


セトの配下のスパイ トート

 平和へと導く為に大星母から派遣されたスパイ。大星母の全面的な協力により、負傷した傷を即効で治療する特効薬、並びに、イシスが患っていた病を治す薬を持っていた。セトが打倒されても、ホルスが斬殺されても紛争は終わると考え、薬を持って待機していたところを、行方たちに出会い、龍星群の強襲に備える作戦へと変わった。出生はラムセスであり、トート以外は惑星に侵入できなかった。神族たちの子供である為、神能を使用することもでき、多勢をまとめて吹き飛ばす力を持つ。


龍星群りゅうせいぐん

 神族を滅亡させる為に集う犯罪者集団。一人で惑星一つを壊滅できる力が全員にあるとされ、宇宙中で最も名が知れ、その首に掛かる懸賞金も大きい。


真眼の紅

 自称、地球人。糸を巧みに操り、相手を拘束する。現在判っている情報では、『一度会ったことのある相手との未来を見通す能力』『触れた相手の記憶を覗ける能力』『惑星エネルギーの回収、移動が可能』と、多数の能力を有する。真実かは定かではないが、二宮二乃の意識を体内に存在させている。

人形師の橙

 鬼族で、角を生やす剛力な戦士。その上で技巧的な人形使いの面もあり、タイマン戦でも複数戦でも対応できる戦闘能力を持つ。複数の人形を自身に変え、一人で大多数を相手にすることも可能だが、今回の場合は神族が相手だった為、分散された人形の力では敵わなかった。しかし、全ての人形を一人の身体に戻せば、分散していた力は戻る為、より強固な一としての力にもなる臨機応変な戦闘が可能。


行方行秋ナミカタ ユクアキ

 地球出身の異能力者。自らの代わりに封印されてしまった二宮二乃を救い出す為に、『不死』の異能と数多くの異能を仲間から託され、果てなき宇宙へと出た。

 ・惑星ネージュで、ニコによる凍結状態にあり、人形師の橙の能力で人形に魂を移し替え、ラムセスへと侵入。上記の様々な異能は使えないが、人形師の橙の力を扱うことができていた。

夏目夏人ナツメ ナツヒト

 地球人の祖、アダム。行方と出会った時は、夏目夏人という日本人だったが、時代は巡り、現在はアメリカで生を受ける。『ワープ』という瞬間移動が可能で、輪廻転生を何度も繰り返してきた頭脳から、本来以上の能力の使い方を編み出す。

スティーヴン・レイザー

 アメリカで現在の夏目と出会った少年。夏目曰く、「現在の地球人で一番強い異能力者」。マグマ以上の高温から、氷河以上の冷温までの体温調節が可能で、高温状態時は仕向けられた刃、銃なども瞬時に溶かしてしまう。

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