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宇宙の行方  作者: 春木
第一章 氷河の惑星
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11話 成すべき事

 白蓮が王妃の心臓を貫くと、次第に白蓮の身体は白く光り始める。


「何が……起きているんだ……?」


 その光はやがて、少しずつ昇月の元へと移り、昇月はどうやら、その光をロボットに入れる仲介役のように見えた。

 そして、狙っていたかのように行方の背後に現れる紅。


「最強種族、()()()()()()……。白蓮が惑星エネルギーを取り出して、それを昇月くんが受け取り、ニコちゃんのペコちゃんが媒体となってルキナちゃんに注いでいる。本来、もっと大掛かりな機械を要するのだけれど、この二人であれば直接エネルギーを取り出せる……というカラクリになってるの」

「それをお前は……奪いに来た……」


 ふふ、と少しだけ溢すと、行方の身体は透明な糸に絡まれ、身動きを取れなくさせた。


(やはり……紅には()()()()()()()()()()んだ……!)


「ご苦労だったな、真眼の紅」


 すると、国王もニタリと笑みを浮かべさせる。


「一度始めると止められない儀式……。これで、ルキナちゃんに入っていくエネルギーをあなたに注げば、この惑星のエネルギーは全てあなたの体内に入るわ」


(龍星群と国王は組んでいた……!? だとしたら……何故、白蓮は国王の動きを止めなかったんだ……? 今、身動きが取れなくなったらまずいことなんて、誰でも判るのに……)


 そして、行方とアテネの脳は同時に答えが出揃った。


「ふふ……。やはり侮れないな……宇宙は……」


 -異能力・武装-


 瞬時に、行方は拘束されていた糸を小型のナイフを触れずに操り切り裂く。


「あら……。拘束が解かれちゃったわ……」

「白々しい……。こうなる未来も知っていたんだろ……」


 -異能力・重力-


 そして周囲の重力を重くし、住民諸共、全ての人間の身動きを取れなくさせた。


「どうして黙って見ているんだ……紅……。僕のしようとしていることが判っているんだろ……?」


 しかし、紅は依然として動く気配はない。


(白蓮の狙いは、初めから僕に協力させる事。国王や住民、紅までも足止めできると判っていたんだ)


 国王は「なんとかしろ!!」と騒いでいるが、紅が何かをすることもなく、王妃の身体からはエネルギーが取り出せたようで、王妃の胸に開けられた穴も腕を取り出すと共に消え、眠りにつくように静かに気を失った。


「さあ、最後は国王からエネルギーを取り上げたいんだが、真眼の紅に動きがないことが気味悪いね」

「白蓮、僕はこのまま重力の拘束をしておけばいいか……?」


 白蓮は、全員が動けないほどの重力の中でも、平気な顔をして歩いていた。


「さあ? 君の能力は判らないからね。能力において私が君に指示をすることはできない。君が判断するんだ」


 白蓮の言葉に、行方はふっと笑ってしまった。

 そして、掌を翳す。


「お前が僕のよく知る嫌な奴だということは判ったよ……! 大団長……!!」

「もういい!! 龍星群が何もしないというのなら私自ら……!!」


 そうして、国王は再び上半身から変化が起こり、再び化け物に変わろうとしていた。 


(今のままでは惑星に飽和するエネルギーを取り込まれてしまう……。やはり、僕の成すべき事は……!)

 

 白蓮に背を向け、ボックスを取り出した瞬間――――。


 ザッ……!


「判っているわよね……? 未来が視えるって……」


 紅は一瞬の間に、行方が手に取ったボックスを糸を軽々と動かし奪い取った。


「やはり、荷重力で動けない……ように見せかけていただけだったか」

「えぇ。君は白蓮や昇月くんのエネルギーの移動を阻止してしまわないよう、調節したんでしょう。このくらいなら私でも動けるわよ」


 行方と紅が静かに話している傍ら、国王はみるみる内に変貌を遂げる。


「これ、さっきの異次元空間を生み出すボックスよね? これを封じれば国王の暴走を止める手段はもうないと思うのだけれど、次はどうするのかしら? 似たような能力でもまだ隠し持っているの?」

「いや、僕が思いつく限り、惑星エネルギーと断絶できるのはその異能力のみだ」

「じゃあ、コレが私の手元にある以上、君は力づくで止める……。いや、殺す以外の選択肢はなくなる……ってことね?」

「そうなるな」


「 オォーーーーーーーー!! 」


 行方は、ふぅと溜息を零し、再びけたたましい咆哮を上げる国王を背に、紅に振り向く。


「それが…… "本物のボックス" ならな」


 そして、胸元からボックスを取り出す。


「何故……!?」

「お前がこの後の行く末を視えているのなら、僕が再び『白世界』を展開させる未来を視えていたということ。未来が見据えられているというのなら、それを防ぐ手段は簡単だ!」


 -ボックス開放・白世界-


 再び、行方は異次元空間『白世界』を展開し、国王は再び、元の姿へと戻っていく。


「やられたわ。本当に」


 しかし紅の顔は、「やられた」というには依然として笑みを絶やさなかった。


 ザッ!! ……グサッ!!


 そして、タイミングを伺っていたかのように白蓮は国王の眼前へと移動し、王妃のように心臓部に腕を差し込んだ。エネルギーを奪われている間は半気絶状態にあるのか、国王の身体はピタリと止まった。

 その後、紅は黙って見ているだけだったが、次第に紅の身体は透過していく。


「なんだ……? 諦めて逃げるのか……?」

「ふふ、そうよ。また会えたら会いましょう。また……会えたら……」


 そう言うと、紅の身体は完全に消えた。

 その時――――


 キィン――――――――!


「お前は……!! 蒼……!!」

「覚えているな……。私は()()()()()()()を知っている……!!」

「クソッ……! 白世界の中でもホログラムの入れ替えは自由ってわけか……!!」


 蒼は万全な顔でニタリと笑うと、剣を構える。


(クソっ……。四人を守りながら白世界の中で戦うのは不利すぎる……。他の異能力が使えない……。まさか、紅はそこまで計算していたのか……!)


 しかし、行方の考えもまとまらないまま、蒼は次なる攻撃を仕向ける。


 キィン!!


 間一髪で行方は防ぐが、他の異能力が封じられている以上、守りに集中しなければ蒼にやられてしまう。


「昇月! 行方くんの援護に回れ!! このままでは全員やられてしまう!!」

「し、しかし……。俺が手を離せば、国王も再び動き出してしまいます……!!」

「国王は私が抑えておく! 先に二人で不死の蒼を始末してくれ……!」

「始末といっても……」


 そう、相手は "不死" で、その上、ホログラムである。

 昇月は中々、動き出すに動き出せない状況で、ロボットスーツの中からニコが歯を食いしばりながら飛び出す。


「わ、私が行く……!」

「ニコ……!! ダメだ……。ペコちゃんをルキナさんに預けたままでは、お前は戦闘するなど……! 相手は龍星群だぞ……!!」

「私だって……ルキナちゃんを……みんなを守りたいの……!!」


 そして、震えながら行方の隣に並ぶ。


「いいのか? ニコ……。今の僕に、お前を守れる力はない。最初に会った時のような…… "無敵" ではない」


 すると、未だ震えながらも強張った顔でニコは笑みを浮かべた。


「へへへ。あの時は驚いて "無敵” なんて言っちゃったけど……そんな人はいないの、知ってるよ……。大団長だって昇月だって……すごくすごく強いけど、無敵なんかじゃない。だから……みんなで協力するんだ。それが……私が今、成すべき事……!」


 そう言うと、ニコは薬のようなカプセルを一錠、飲み込む。


「ニコ……その薬は……?」


 ニコの瞳は、綺麗な水色に輝いていた。


「私……自分の()()を抑える為に、大星母に研究してもらってその体質を普段は抑えているの。でも、完全に消すことはできなかった。この薬は、その体質を元に戻すもの……。最悪の事態にいつも持ってるの……」


 昇月も、もう何も言わない。このニコの "体質" というものに不死の蒼を倒せる力があるのかは不明だが、もう行方には信じることしかできない。

 ここまで異能力を沢山得ていて、こんなにも絶体絶命な状況になるとは考えておらず、しかしながら、共に戦える仲間に出会えるとも思っておらず、行方はふっと微笑んでしまった。


「じゃあ、一緒に戦うぞ……! ニコ……!! 全員、守るんだ……!!」


 そうして、改めて行方とニコは不死の蒼へと構える。

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