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異世界駄菓子屋奮闘記 ~駄洒落スキルとセクシーハプニングを添えて~  作者: もりも理幽
第三章:王都決戦! 駄洒落よ、奇跡を起こせ
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駄洒落よ響け! 絆の逆転劇!

 王宮の地下深く、古代遺跡の中心部に位置する『聖なる炉』の間。

 そこは、もはや決戦の舞台というよりは、世界の終焉を予感させる混沌の坩堝るつぼだった。


 天井からは巨大な岩盤が絶えず剥がれ落ち、地面は悲鳴のような地響きと共に裂け、壁の亀裂からは制御を失った紫色のマナが、まるで血のように噴き出している。


 中央に浮かぶ巨大なエネルギーコアは、禍々しい光と熱を周囲に撒き散らし、その鼓動は早鐘のように空間全体を震わせていた。


 俺たちの前に立ちはだかるのは、古代の力をその身に纏い、もはや人ならざるオーラを放つローゼンベルク侯爵と、冷徹な計算で自律稼働するマナ兵器と無数の古代ゴーレムを指揮するグスタフ卿。

 彼らの背後には、安定を失い暴走寸前のエネルギーコアが、不気味な輝きを放っている。


「愚かな抵抗はやめ、世界の新たな秩序の礎となるが良い!」


 グスタフ卿の冷たい声が響き渡る。

 その言葉を合図に、石と金属の巨兵、ゴーレムたちが地響きを立てて突進を開始した。

 数は数十体か、あるいはそれ以上か。遺跡の床を砕きながら迫り来るその威容は、絶望的なまでの戦力差を俺たちに突きつける。


 同時に、周囲に展開していた菱形の浮遊兵器群から、紫色の破壊光線が雨のように降り注ぎ、俺たちの退路を断つ!


「うおおおお! 行くぜ野郎ども! ドワーフの意地を見せろ!」


 その絶望的な状況に、最初に風穴を開けたのは、親方のボリンが率いるドワーフ戦士団だった!

 彼らは雄叫びを上げ、分厚い鋼鉄の盾を前面に押し立てて密集陣形を組むと、ゴーレムたちの突撃を正面から受け止めた!


 ゴォンッ! バギンッ!


 凄まじい金属音と衝撃波が広間を揺るがす!

 盾を持つ腕が痺れ、足元がよろめく。それでも、彼らは歯を食いしばり、一歩も引かない!


「親方! 右翼が崩れそうだ!」

「構うな! 押し返せ! 祖先の眠る大地は、我らが守る!」

 ボリンは巨大な戦斧を振り回し、一体のゴーレムの脚部を粉砕する!

 仲間たちも、ハンマーで関節を叩き割り、つるはしで装甲の隙間を抉り、ドワーフならではの頑強さと、大地のような不屈の闘志で、巨大な敵の進撃を食い止めていた。


「森の怒りを、その身に刻みなさい!」


 遺跡内の柱や崩れた壁を足場に、緑の疾風が舞う! エルフの射手たちだ!

 彼らは、人間離れした俊敏さで敵の攻撃を掻い潜りながら、正確無比な矢を次々と放っていく。狙うは、ゴーレムの胸部に埋め込まれた動力源のコア、そしてマナ兵器の制御レンズ!

 ヒュン、と風を切る音と共に放たれた矢は、寸分違わず目標に突き刺さり、ゴーレムの動きを鈍らせ、マナ兵器の光線を逸らす!


「アンナさん、右翼のドワーフへ回復薬を! アル君、ゴーレムの装甲材質は古代オリハルコン合金…酸性の錬金薬液が有効なはずです!」


 後方で、シルフィが戦況全体を見渡し、的確な指示を飛ばしている。

 その声は凛として、もはやかつての気弱な令嬢の面影はない。ローゼンベルク家の知識と、彼女自身の聡明さが、この混戦の中で確かな光となっている。


「承知いたしました!」アンナさんが、懐から取り出した薬瓶を投げ渡す!

「はい! やってみます!」アル君も、震える手で調合したばかりの、強酸性の錬金薬液が入ったフラスコを、ドワーフたちの援護を受けながらゴーレムへと投げつける! ジュワッ!と音を立てて装甲が溶解し、弱点が露出する!


「よし、俺も!」

 俺は、戦況を少しでも有利にするために、腰の革袋からありったけのスーパーボールを取り出し、無我夢中でゴーレムの足元に投げつけた!

 数十個のゴムボールが、遺跡の凹凸した床で予測不能な軌道を描きながら跳ね回り、巨大なゴーレムたちの足を掬っていく!


「おおっと!?」

「ぐらっ!」

 巨体がバランスを崩し、ドワーフたちがその隙を突いて反撃する!

「蜜夫殿の奇妙な球、意外と役に立つぞ!」ボリンが、ゴーレムの腕を叩き折りながら叫んだ!


 さらに俺は、アル君に合図して、巨大なゴーレムの足元に『まぜまぜ変身菓子』の粉末を大量に散布させた! そこへ、近くにあった、古代の水路から溢れ出した水たまりへと、荷馬車から回収しておいた消火用(?)の水袋を全力で叩きつける! 大量の水が、粉末に降りかかる!

 次の瞬間、粉末は紫とピンクの煙を上げながら、爆発的に膨張を開始! もこもことした、しかし異常なほど粘り気の強い泡状の塊が、ゴーレムたちの足を完全に飲み込み、固めてしまったのだ!

「やった! 足止め成功です!」アル君が歓声を上げる!


 仲間たちの予想外の奮闘と、俺の(駄菓子を使った)奇策。

 一時は、このまま押し返せるかと思われた。


 だが、敵の本体…古代の力をその身に取り込んだローゼンベルク侯爵と、冷静にマナ兵器を操るグスタフ卿が、ついに本格的に動き出したのだ。


「小賢しい真似を…所詮は寄せ集めの烏合の衆よ!」

 ローゼンベルク侯爵が、その両手に禍々しい闇色のエネルギーを集束させ始めた。その力は、以前とは比べ物にならないほど増大している。秘法の力を、さらに引き出したのか!?


「シルフィエット! 我が娘よ! なぜ父に逆らう! その力は、我らローゼンベルク家が正統に受け継ぎ、世界を導くために使うべきものなのだ!」

「間違っています、父上!」シルフィが叫び返す。「その力は、人を幸せにはしません! 過去の悲劇を繰り返すだけですわ!」

「黙れ!」


 侯爵が手を振りかざすと、凝縮された闇のエネルギー波が、衝撃波となって俺たちを襲う!

 ドワーフたちが必死で構えた盾が、まるで紙細工のように弾き飛ばされ、数人が壁に叩きつけられて呻き声を上げる!


「ぐあっ!」

「おのれぇ!」


「無駄な抵抗は、犠牲者を増やすだけですよ」

 グスタフ卿が、冷静に杖を振るう。すると、周囲に浮遊していたマナ兵器が一斉に起動し、エルフたちの動きを予測したかのように、回避不能な光の檻を生成! 数人のエルフが捕らえられ、身動きが取れなくなってしまった!

「くっ…! 包囲された!?」


 状況は一気に悪化する。

 ドワーフの防衛線は破られ、エルフの援護射撃も止まった。

 アル君の錬金術も、強力なマナの前では効果が薄い。

 後方支援に回っていたゲルトさんたち市場の仲間も、敵兵士の侵攻に晒され始めている。

「蜜夫兄ちゃん!」クララちゃんの悲鳴が聞こえる!


「くそっ…! どうすれば…!」

 俺は、自分の無力さに歯噛みするしかなかった。

 スキルは? あの言霊の力とやらは、どうしたんだ!? こんな時こそ、奇跡を起こせよ!

 でも、仲間たちが傷つく光景を目の当たりにし、恐怖と焦りで頭が真っ白になり、まともな言葉すら出てこない!


「蜜夫!」


 その時、俺の肩を強く掴む手があった。シルフィだ。

 彼女も肩で息をし、額には汗が滲んでいる。だが、そのサファイアのような瞳には、絶望ではなく、強い、強い光が宿っていた。


「あなたの力…【言霊】の力を信じて! あの石板に書かれていた言葉を思い出して! その力は、単なる言葉ではない…あなたの【強い意志】と【心からの言葉】によって、世界のことわりすら書き換える可能性がある、と!」


 言霊の力…駄洒落じゃない、俺の本当の意志と言葉…?

 そうだ、俺はずっと、この力を恐れ、ふざけた駄洒落という形で、その本質から目を背けてきたのかもしれない。

 でも、今は違う!

 目の前で仲間たちが必死に戦っている! シルフィが、俺を信じてくれている!

 この世界に、駄菓子で笑顔を届けたいという、俺の願いは本物だ!


 俺は、震える足を叱咤し、闇のオーラを纏う侯爵と、冷徹なグスタフ卿を、真っ直ぐに見据えた!

 そして、腹の底から、心の底から、全ての想いを込めて叫んだ!


「お前たちの歪んだ野望で、みんなを不幸にするなぁぁぁっ! 俺たちは、絶対に【未来】を諦めない!!!!」


 その瞬間、俺の体から、これまでに感じたことのない、温かく、力強く、そしてどこまでも清らかな光の奔流が溢れ出した!

 脳内に直接響くような、荘厳な声が告げる!


『…想イ、受諾…魂ノ叫ビ、確認…言霊、完全励起…世界への限定的干渉ヲ、最大限ニ許可…効果:希望ノ光! 全域展開!』


 俺から放たれた光は、もはや制御不能なエネルギーの奔流となり、戦場全体を黄金色の輝きで満たした!

 その光は、傷ついた仲間たちの体に降り注ぎ、痛みを和らげ、消耗した気力を回復させていく!

 恐怖に曇っていた瞳に、再び闘志と希望の光が灯る!

 そして、その聖なる光は、侯爵やグスタフ卿が纏う邪悪な紫のマナのオーラを、まるで朝靄を払う太陽のように、容赦なく浄化し、打ち消していく!


「なっ…!? この聖なる光は、一体…!? わ、我の力が…!」侯爵が、自身の力が減衰していくのを感じて狼狽うろたえる。

「馬鹿な…! データにないエネルギー反応…! これが…異邦人の持つ、言霊の力だとでもいうのか…!?」グスタフ卿も、その冷静な表情を驚愕に歪めている。


 いける! この力なら、この仲間たちとなら、勝てる!

 俺は、さらに意識を集中させ、光の中心で、仲間たちを鼓舞する言葉を叫び続ける!

「みんな、もう少しだ! 力を合わせれば、俺たちは絶対に負けない!」

 黄金の光はさらに輝きを増し、仲間たちの心と体を奮い立たせ、敵の動きを確実に鈍らせ、押し返していく!


「小癪な真似をぉぉぉ! これで終わりにしてくれるわ!」

 逆上したローゼンベルク侯爵が、残された闇の力を全て振り絞り、巨大な黒いエネルギー弾を生成し、俺に向かって放ってきた!

 その質量と禍々しさは、先程とは比べ物にならない! まずい、あれは直撃したら、ただでは済まない!


「させませんわ!」

 シルフィが、再び俺の前に飛び出した! ローゼンベルク家に伝わる、最強の防御魔法陣を展開する!

 黄金の光を受けて輝きを増した魔法陣が、黒いエネルギー弾と激突する!


 ドゴォォォォン!!!


 凄まじい爆発音と衝撃波が遺跡を揺るがす!

 魔法陣は耐えている! だが、シルフィの顔は苦痛に歪み、その体は小刻みに震えている! いつまでもつか分からない!


「くそっ! こうなったら、俺もやるしかねぇ! 全力だ!」

 俺は、駄菓子最終奥義…いや、仲間たちとの絆が生み出す、最後の切り札を繰り出す覚悟を決めた! …が、その前に! やっぱり言わずにはいられない! この土壇場、この極限状況! 俺の口から、もはや条件反射のように、駄洒落が飛び出す!


「あんたのその闇の力なんて、俺たちの絆の前では、【効果こうかがない】って言ってるだろうが!」


「この【豪華ごうか絢爛なかい】で、受け止めてやる!」

 なんで貝!? しかも豪華絢爛!? もう自分で自分が分からない!


 脳内判定『判定:決意表明! …からの、なぜ貝!? しかも豪華!? 評価不能! スキル、強制エラー! アイテム召喚(超不安定・限定解除)を強行実行!』


 エラー!? 強制エラー!? しかも限定解除ってなんだ!?


 次の瞬間、俺とシルフィの前に、先程よりもさらに巨大で、さらに金ピカで、世界中の宝石をありったけ散りばめたような、もはや悪趣味なレベルで【超・豪華絢爛な巨大二枚貝オブジェ】(高さは5メートルを超えている!?)が、ズッッッッッッッッッッッッシーン!!! という地響きと共に、召喚されたのだ!

 その巨大すぎる黄金の貝は、侯爵の渾身の闇エネルギー弾を、その分厚い(そして悪趣味な)貝殻で、余裕綽々といった感じでガッチリと受け止め、完全に無力化してしまった!


「「「………………はぁぁぁぁ!?」」」

 俺もシルフィも、仲間たちも、そして侯爵とグスタフ卿も、全員が、突如として出現した、ありえないほど巨大で悪趣味な黄金の貝オブジェを前に、完全に言葉を失い、思考が停止した!


(…豪華な貝って言ったら、本当に超絶豪華な貝が出てきやがった! デカすぎるし、悪趣味すぎる! でも、役に立った! スキルエラー、GJ! …いや、待てよ、超不安定・限定解除ってことは…まさか、消えないのか!? いや、でも…)

 俺の思考が混乱する中、黄金の貝は…消えなかった! ででーんと、そこに鎮座している! …後でどうしよう、これ…。


 だが、今はそれどころじゃない! 敵は無防備だ! このチャンスを逃す手はない!

「今だ! 喰らえ! これが俺たちの! 駄菓子と絆の! 最終奥義だぁぁぁーーーっ!!」

 俺は、革袋の奥底から、仲間たちとの連携を前提とした、とっておきの最終兵器群を取り出した!


「まずはこれだ! 超・激辛赤鬼スナック・ファイナーール・レインボーフラッシューーー!」(アル君の錬金術で七色の閃光と持続性強化済み!)

 虹色の閃光と共に炸裂した激辛粉末が、侯爵の全身を包み込む!

「ぐぼばばばばばっ!? か、辛い! 舌が! 喉が! 目がぁぁぁ! 皮膚まで痛いぃぃ! しかもまだ眩しいぃぃ!」侯爵が、七色の閃光の中で、地面を転げ回りながら悶絶!


「次は貴様だ! ギガすっぱい電撃玉・マーーーックス・サンダーボルツ・ホーミングカスタム!」(エルフの風魔法で追尾性能付与!)

 超酸っぱい玉が、稲妻を纏いながら、逃げようとするグスタフ卿の口の中に、寸分の狂いもなく吸い込まれる!

「んぐごぉぉぉぉっ!? す、酸っぱぁぁぁぁい! 痺れるぅぅぅ! に、逃げても無駄だとぉぉぉ! 全身の力がぁぁぁ!」グスタフ卿も、酸っぱさと感電としつこさのトリプルパンチで完全に白目を剥き、気絶!


「そして、とどめだ! 泡玉飲料・ガイザーーー・ドワーフ&エルフ&アルケミー・ハイパーコンビネーション・ブラスターーーー!!!」(ドワーフの超高圧蒸気機関+エルフの風魔法による精密照準+アル君の錬金術による泡威力増幅!)

 大量の泡玉飲料瓶に、これまた大量の清涼固形菓子を連続投入! ドワーフ、エルフ、アル君の技術が融合した超兵器(?)から放たれた、凄まじい勢いの炭酸の超々々激流が、気絶した侯爵とグスタフ卿をまとめて壁まで吹き飛ばし、古代遺跡の壁に派手な人型の穴を開けながら、完全に戦闘不能にした!


 ………勝った……。


 俺たちは、仲間たちと、駄菓子と、そして訳の分からない奇跡の力で、ついに、この世界の闇を打ち破ったのだ!

 広場には、一瞬の静寂の後、割れんばかりの歓声が響き渡る。仲間たちが駆け寄り、抱き合い、涙を流して、この奇跡的な勝利を分かち合っている。


 俺も、シルフィと顔を見合わせ、安堵の息をついた。彼女の瞳にも、涙が浮かんでいる。

「…やったな、シルフィ」

「ええ…やりましたわね、蜜夫」

 俺たちは、どちらからともなく、自然と強く手を取り合っていた。


 …と、思った瞬間。勝利の安堵感と、シルフィと手が触れたドキドキ感からか、俺はまたしても、本当にまたしても、口走ってしまったのだ。


「いやー、しかし、一件落着いっけんらくちゃくだな! これで、もう【はださらす】ような危険な目に遭うことも…って、うわっ!」


 脳内判定『評価:安堵! 油断! そして最後の最後で、致命的な【セルフフラグ建築】! これはもう…確定! 最低評価! 対象は【発言者自身】!』

 しまったーーーーーっ! 学習能力ゼロか俺は! しかも対象は俺自身!?


 ビリビリビリーーーッ! バサッ! シュパァァァン!


 次の瞬間、俺の上着とズボン、そして下に着ていたシャツまでもが、これまでで最も派手に、最も無慈悲に、木っ端微塵に破け散ったのだ! 気づけば俺は、ほぼ生まれたままの姿に近い、非常に、非常~~~に残念な姿で、勝利の歓声の中心に立っていた!

(な、なんで俺だけ!? あ、そうか! 俺が言ったんだ! 【俺が】肌を晒すような危険な目に…って! だから、その言葉通り、俺の服だけが破れたのか! スキル、そういうとこだけ律儀すぎるだろ!)


「「「…………」」」

 勝利の歓喜に沸いていた仲間たちの視線が、一斉に俺に突き刺さる! 温かい視線じゃない、同情とも呆れともつかない、なんとも言えない、生温かい視線が! そして、目の前のシルフィの顔は、みるみるうちに真っ赤に染まっていく!


「み、蜜夫ぉぉぉぉぉ! あなたという人は、最後の最後までーーーーっ!! この、破廉恥! 大馬鹿者ぉぉぉぉぉ!!!!!」


 シルフィの、羞恥と怒りに満ちた、しかしどこか諦めを含んだような、渾身の絶叫が、ようやく平和を取り戻したはずの古代遺跡に、いつまでも、いつまでも、高らかに響き渡ったのであった…。

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