パーティのあと
「エマ様」
「あら、この声はロザリン様?」
見ると、ロザリンはこげ茶系のドレスに蝶々とお花の飾り。
「妖精みたいですわね」
「そうですの。私、土魔法が得意なので、土魔法の妖精にしてみましたの」
ということは、水魔法が得意なベシーは水魔法の妖精で、火の魔法が得意なアンは火の魔法妖精姿ってわけだ。うしろから、二人も顔を出した。
3人がそろうと、まるでアイドルのようだ。
「お3人ともとってもキュートで素敵ですわね」
まあ、と頬をおさえる3人娘。
「ではどちらの姫からダンスされますか?」
こっちものりのりで手を差し出した。
3人のお相手がホールの隅で恨めしそうに見ているのには閉口したが、仕方ないよね。ご本人たちの要望だし。
「さあ、お3人とも、お相手様がお待ちですよ」
「ああ、もう終わり?」
「もう一曲ダメですか?」
ロザリンもベシーもアンも名残惜しそうだが、私は3人に、
「あの、みなさん、いままでありがとうございました」
と頭を下げた。
「え? いきなりどうされましたの?」
目を丸くして慌てる3人に、私は真面目な顔を向けた。
「私、昔は皆さんに失礼なことをしたのに、お付き合いしていただいて、こんな仲良くしてくださって。きちんとお礼言わなきゃって思ってたんです」
本来ならライバル視されて嫌われていたはずの間柄だ。
「もう卒業ですし、皆さんそれぞれに違う道を進んで、こんなふうにお会いする機会も減ると思いますけど、みなさんのこと」
いかん、泣きそうになってきた。見ると、3人とも目元のマスクを押さえつけて口をへの字にしてるし。
「エマ様~!」
ぎゅっと3人から抱きつかれた。
「卒業してもお友達ですわよ!」
「私も会いに行きますから」
「私もです」
踊っている人たちの中、泣いてる4人。
「みなさん、ほら、こちらに」
声がかかり、引っ張って奥の方へと連れていかれた。
「あ、カロリーナ様」
「みなさん、泣かないで。お相手様がお待ちですわよ」
見ると、ノアにバーナード、フレディが心配げにこちらを見ている。
「ほら、行ってきてください」
私も3人の背中を押した。
それぞれにお相手の元へ走っていく。これも本来なら見れなかった光景なのかもと思うと感慨深い。
「カロリーナ様」
「エマ様、お疲れ様。私とも踊ってくださいます?」
「もちろん」
カロリーナの手を引いてダンスの輪の中へと戻る。お姫様姿のカロリーナはアイマスクをつけただけ。深い青のドレスがよく似合っている。
「カロリーナ様」
「はい」
「今日までありがとうございました」
「こちらこそ」
「私、卒業後のことはまだ決めていませんが、カロリーナ様と過ごしたこと、生徒会室に居場所を作ってくださったことは忘れませんから」
ふふふ、と微笑んだカロリーナは、
「エマ様とはまだ離れるつもりはありませんわよ」
「へ?」
それはどういう? と聞こうとしたとこでダンス曲が終わった。
「エマ様、ところで、ルーカス様は?」
「あ、そうなんですよ、ルーカスの姿を見てなくて」
ここまでは一緒に来たし、ダンスが始まるまでは一緒だったのだ。
「あのこ、ダンス好きではなさそうだし、なにせ女子になってますから」
男性陣から誘われて大変なのかも。
あわてて周りを確かめるが、姿が確認できない。
「ルーカス? あの見目麗しい姿だったよね」
ノアが面白そうに言う。
踊り終わったベシー達を捕まえて聞くと、
「そういえば、さっきですけど、怖いお面の方とあちらの廊下を歩いていかれましたわよ」
アンも、
「てっきりお友達と思ったんですけど」
バーナードやフレディも、
「ルーカス、可愛すぎてさらわれたんじゃないよな」
「まさか、さすがに男だから大丈夫だろ」
なんてことを言っているとこにランドルフがやってきた。
「ルーカス? まさかあの女子が……?」
「ランドルフ様、気にされてましたものね」
とカロリーナに言われ焦りまくりだが、いまだにルーカスの女装だとは知らなかったようで。かわいそうなぐらいにショックを受けている。
「ちょっと見てきますね」
と言う私に、ベシーやアン、ロザリンも、
「私もまいります」
とついてきた。
廊下を進むと言うことは、生徒会室ぐらいしか入れないと思うのだが。
ドアに手をかける、中から声が聞こえてきた。
「どうして」
「わかりますわ、ルーカス様なんでしょう?」
私は振り返ると、アンやロザリンたちと目を見合わした。
中にルーカスと誰かがいるのは確実だ。
耳をドアにつけていたが、小さな声でわかりにくい。
そのうえ、私を先頭に男女でドアにもたれかかるもんだからドアが嫌な音を立てた。
ぎいいいいいいいいいいっ
「うわああ」
「きゃあああ」
ドンッ
という音とともに、ドアごと部屋になだれ込んだ。




