学園祭後のパーティ
「なるほど、仮装パーティ」
カロリーナがふんふんとうなづいている。
ルーカスは、
「仮装であれば、お互いの身分を気にすることもないですし。学園では家の位など気にせずに付き合うものと言う不文律はありますが、やはりどこかで気にするものもいますし、逆にそれで権威をふるうものもいます」
「ええ、そうね。これは以前から悩まされていることなのよ」
その場にいるノアも嫌そうな顔でうなづいている。
アン救出のときのあの野郎のことを思いだしているのだろう。ほんと、そういう奴は一定数いるのよね。
「だからこその仮装なのです。顔も仮面をかぶってわかりにくくする」
「あのお、お相手がいる方はどうしますの?」
ベシーが手をあげて聞いている。
「そうですね、その場合はお互いに決めた目印をつけておくとか」
「お花やリボン、とかいいですわね」
とロザリン。
「お互いに決めあうのも楽しそうですしね」
と言うアンに男性陣もうなづいている。
カロリーナは「決まりですわね」とにこりとした。
細かなこともその場で決め、卒業式後のパーティは初の仮装ダンスパーティという催しをすることとなった。
卒業式は滞りなく行われ、このお話のメインともいえる婚約発表の時がやってきた。
卒業式のあと王様から王太子妃の発表があったのだ。
カロリーナとランドルフが壇上に上がり、みんなに挨拶をする。
カロリーナの顔は少し恥ずかし気で、頬が紅潮し輝いていて幸せそうで、本当にうれしくなった。
「綺麗……」
「本当に」
「よかったですわね」
ベシーやロザリン、アンもみんな泣きそうになっている。
本当なら、ここでカロリーナは婚約破棄され、私が王太子妃に選ばれ、すぐそのあと、断罪される。
その流れが変わって、カロリーナは本来の場所に笑顔で立っている。
私もなんやかや大変だったけど、こんなに友達もできてこうやって無事に卒業パーティに参加できている。
「よかった」
とため息とともにつぶやいていた。
「で、なぜに女装なの?」
「……」
無言のルーカスは黙ってシャンダを睨んでいる。
鼻歌交じりのシャンダは、
「あら、そういうお願いじゃなかったのかい?」
「私は男装だけどね。ルーカスは」
卒業式が終わってから1時間後に始まるパーティ。それを目指して、みんなそれぞれに仮装してくることになっていた。
私はシャンダのメイクか頼りなので、急いでシャンダのところに行ったのだが。
ルーカスも一緒にやってきていた。
「ルーカスは何の仮装をするの?」
「僕ですか? まあ適当に、シャンダさんのところで何か借りようかと」
と言っていたのに。
「この衣装、どうしたんです」
見るからに貴族令嬢のドレス。
「ああ、それかい。ほら、あんたが以前、女装しただろう。あれから貴族衣装も増やしたんだよ。あんたのとこの副生徒会長って人が不用品の服を譲ってくれたんだ」
「え? それって、カロリーナ?」
「そうそう、そのご令嬢だよ」
「ここに来たの?」
「ああ、あんたにしたメイクのことやら、薬のことやら聞いていった。てっきり捕まるんじゃないかと心配したが、そんなことはしないって約束してくれてね。なかなか男気溢れるタイプだね」
「男気って」
確かに、そういうタイプではあるけど。中身は恋する乙女でギャップ萌えでもあるのだが。
それにしてもここに来てたなんて、なんでまた?
「ちょうどよかったよ。そのドレスが使えてさ」
「いやいや、ルーカスは、えっと何の仮装するつもりだったの?」
振り返って聞くが、
「もういいですよ。時間もないし、姉さん、行きますよ」
「え? あ、はい。シャンダさん、ありがとう」
「ほいよ」
と手をひらひらさせるシャンダに見送られて馬車に飛び乗った。
そして、1時間後の会場に何とか間に合った私とルーカスは、会場内のみんなの姿に驚いた。
「意外にみんなやるのねえ」
「そうですね。これなら目立たなくてよさそうだ」
それこそ、家にある衣装を借りてきたのか、執事姿、メイド姿、ばあやさんに庭師、そうかと思えば動物の着ぐるみみたいな姿に妖精みたいな姿等々。もちろん、普通のドレスに舞踏会用のマスクをつけただけの女子も男子もいる。普通のドレスなのになぜか怖いお面をつけていたり、ピエロみたいな子までいる。ホラー好きでもいるのかしら。
カンカンと鐘の鳴る音がして、見ると、王子様そのもののランドルフとお姫様のカロリーナが壇上に上がる。
「これが学園生活最後のパーティだ。学園は地位も何も関係ない、みんなが平等な生徒の一人だ。さあ、みんなで最後の時を楽しもう」
ランドルフの掛け声にわーっという歓声が上がった。パーティの始まりだ。




