↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
58/65

モテモテな弟

「またですか」

 と誰よりも呆れた顔をするかと思ったルーカスだが。

「まあ仕方ないですね」

 となぜか肯定的だ。


「デリクとは踊らないんですよね」

「さすがに男装してるしねえ」

 本来なら、見合い相手ということになっているのだから卒業パーティでは踊る相手ということになるのだが。

 どうせ偽の相手だし、デリクだってどなたか踊りたい方がいるのでは? と思うのだ。


「ねえ、ルーカスは誰と踊るの? もう申し込んでいるの?」

 卒業パーティの最後は、みんなでダンスをするのが恒例になっている。

 何か目新しい催しをすべきではという意見も出たのだが、何をしたらいいものか結局いい案は出ず、いつも通りのダンスパーティになりそうだ。


 これも通例だが、ダンスパーティでは既に婚約者や彼、彼女の相手がいる人はその人と最後に踊る。相手がいない人は誰かを卒業までに誘うか、ペアを組んでくれるように頼んだりするものらしい。

 何だか海外ドラマのダンスパーティみたいだ。


 その場で踊ってくれる相手を見つけてもいいのだが。断られるのは相当にきつそうだ。

 うちの弟はどうなのかしら。その場で頼むなんてできそうにない、こともないのかなあ。


 ちらりとルーカスを見ると、

「そうですね、頼んではないですが。ダンスなんて別にしないといけないわけでもないでしょう」

 ルーカスはああいうが、意外に一緒に踊りたいと言っている女子は多いらしい。


 そうなのだ、この子、自覚はないみたいだが「モテ男子ですのよ」ってロザリン情報だ。

 なんせ決まった相手もいないし、就職先は魔法省だし。お顔もいいし、モテないわけがないのよね。

 さすがうちの親戚。だから魔法力も強いのかもなあ、と思ったりもするが、じゃあ私は? と考えるのが嫌になって考えるのをやめた。


「ねえ、お手紙も山のように来ているんだし、どなたかと踊ってみたら?」

 こちらをみて視線を上げたルーカスは、

「その気はないです」

 と冷たい返事。


 まさか、この子。


「ねえ、まさかと思うけど」

 いきなりびしりと手をつきだしたルーカスは、

「違います!」

 と一言。


「でも」

「姉さんが思うようなことはありません」

「そおおお? でもヘイウッドとか」

「ったく、違いますから。アン嬢と言い、そういう変な勘繰りはやめてください!」

 むっとされてしまった。アンはその手の話を書き進めているらしく、ルーカスに情報を得ようとしたのかもしれない。


「ごめん。ついさあ。ねえ、せっかくなんだし、誰かと踊ったらいいじゃない。別に結婚を申し込むわけではないんだし」

「それはわかってますが」

 それが縁でってことはありだが。


 と、いきなりドアが開き、母様が顔を出した。焦った顔は何かあったに違いない。また怒られるかと身構えたが、ルーカスに向かった母様は、

「ルーカス!」

「はい、何でしょうか」

「あなた、コールダー侯爵令嬢のお誘いをお断りしたって本当なの?!」

 口をわなわなとさせている。


「はあ、どなたか知りませんし」

「待って待って コールダー侯爵令嬢!?」

 これには私の方が驚いた。

「あら、エマ、そうよ、うちにはもったいないぐらいのお相手なのよ、なのに」

「しかし、僕は魔法省での仕事に力を入れたいので、まだ結婚は」

「それはわかりますけど、まずはお付き合いだけでも


「すみません、お母様」

「ルーカス……」

 母様を見つめ返したルーカスは目をうるうるとさせ、まるで愛玩動物のようだ。

 あんな顔されたら母様も強く言えないんだ。さすがというかうらやましいぞルーカスめ。私なんていまだあたりがきついのに。


「少しだけでも考えてみてちょうだい。一応、あなたのお気持ちはお伝えしておきますけど」

 母様がすごすごと部屋を出ていくと私はルーカスに、

「コールダー侯爵令嬢って、カロリーナ様と並ぶぐらい地位のあるお家じゃないの」

 と詰め寄った。

「知ってます」

 さっきの愛玩動物はどこへやら、そんなチベットスナギツネみたいな目しなくてもな返しだ。

「だからさっきも言いましたが、僕は仕事に力を入れたいんです。魔法省に就職が決まったんですから」

「はあ、まあねえ」


 その向上心は偉いとは思うけど。あのコールダー侯爵令嬢よ。深窓の令嬢と噂され、噂では飛び切りの美人だとか、いやとろけそうなほどにかわいい人だとか。ほとんど人付き合いはないし学園にも来ていない。だからこそミステリアスなのよ。そんな人と会えるのに。


 と私の顔に出ていたのか、ルーカスは一層目を細めると、

「この話はおわりです」

 ぴしりと言った。


 だけど、ルーカスが断った話はあっという間にひろまったらしく、あちこちの令嬢から手紙やお話が今まで以上に届いた。

 さすがの侯爵令嬢では太刀打ちできないと遠慮していたんだろう。


「ったく」

「何、そんなモテ男みたいなため息ついちゃって」

 にやにやする私に、ルーカスは、テーブルからあふれんばかりの手紙をつまんで息を吐きだした。

 まあ、確かに、全部にお返事するのも大変そうだ。


「向こうから断ってくれたら楽なのにねえ、あっ、私みたいに嫌われ薬でも飲む?」

「まじでそうしようかな」

 と上を見つつつぶやいている。冗談で言ったんだけど。

「やめときなよ、ろくなことないわよ」

「知ってます」

 またもやぴしりと返される。

「はい、そうでしょうとも」


「ですが」

「ですが?」

「姉さん、僕もシャンダに特殊メイクとやらをしてもらいます」

「へ?」

 にやりとするルーカスに私は目が点なまま見つめていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。