お祭りは兄弟で?
「うわっ! あんたまさか、騎士を連れてきたのかい!」
こっちを見たシャンダがだだだだっとカウンターの奥へと逃げる。
「あああ、そういうんじゃなくて、今日はデートです!
力込めて言ってしまい、デリクが赤くなっている。シャンダが途端に「へ〜〜〜」と言いつつにやにやしだすもんだからこっちまで頬が熱くなる。手をばたつかせた私は、
「これはデートという名の人助けなんです。このデリク様は私のために人肌脱いでくださってて、だから私、変装を頼みにきたんてす!」
と叫ぶように言った。
「変装!?」
シャンダとデリクの声が重なる。
私はデリクにお茶を飲んでてもらいその間にシャンダに特殊メイクをしてもらった。
「超特急でやったよ」
シャンダがはあはあ言いつつデリクの側に行く。
「あとは頼むよ」
「はい?」
デリクが奥から出てきたシャンダと私を交互に見ている。
「どうですか? 気持ち悪さが少しはましでは?」
私の声にデリクは目を丸くすると、
「えーと、エマ様? ですよね」
「はい」
にこりとしたデリクは、
「ダンスパーティで男装されてましたよね。あの時とはまた違うけどやっぱりイケメンだなあ」
なんて言ってくれる。
「ですかねえ〜」と言いつつも「仰る通り、今日は貴族じゃないですが」と苦笑した
シャンダのところにある服を借りたので、貴族ではなく庶民の男の子ふうだ。
「ですが。それだと嫌悪感は減るのですか?」
首をかしげるデリクに、メイクや衣装、手袋等々、使っているハーブや鉱石か何かがいい効果を出しているらしいと説明した。横からシャンダが「誠意研究中よ」と一言。
デリクは素直に納得したようで、
「それでは、屋台を制覇しに行きましょうか」
とにこりとして椅子から立ち上がった。
「はい」
ふたりしてお祭りに戻ると、屋台をあちこち覗いては美味しそうなものを食べていく。
こんなデートなら悪くない。
デリクもいつも通り、緊張もなくなったのか、柔和な顔してるし。
私たちはまるで兄弟のようにお祭りを楽しんだ。
「エマ様、今日は楽しかったです。今度は自分が奢りますから、おししいケーキの店でも行きましょう」
「ええ、ぜひ」
家の前まで送ってもらい、これでデートは完ぺきと、うきくきと家に入っていった。が。
「姉さん?」
「ああ、ルーカス、ただいま」
「その恰好、ちょっと早く部屋にはいって着替えてください」
背中を押され、部屋に押し込まれた。
「何、そんなに慌てなくても」
せっかく楽しんできたのに。あ、そうか。
「ルーカス、お土産を忘れたと思ってるでしょう? 大丈夫よ、ほら」
と、りんご飴を差し出した。
「りんご」
「そうよ、お祭りといえばこれでしょう?」
ニコニコする私に、ルーカスは「どうも」と言いつつりんご飴を受け取ったが。
「ねえさん、その姿、もしかしなくてもシャンダのとこで」
「そうよ、そうそう、これね」
私の姿は少年のままだ。
「あそこでメイクやら手袋やら借りてね。衣装も借りたのよ。ハーブの草木染の生地の服だったから、効果があるみたいなの」
これ、返しに行かなきゃ、と服の裾を引っ張って見せた。
「はあ、なるほど」
と唸ったルーカスは、
「それじゃあデートにならないですよね」
「へ?」
「どう見ても男兄弟ですよ」
「あ」
そうだった!
私はお見合い相手とのデートをしてるはず、だったのよね。
「メイクだけなら何も男にならなくてもよかったのでは?」
と言ったルーカスは「まあいいですが」とつぶやいている。
完全あきれられてる? ってことはデリクにも? そのうえ、カロリーナに怒られる? ってこと?
「まあ」
とだけ言ったカロリーナはくすくすと笑いだした。
ベシー達3人はすっかりあきれ顔だが。
「こうなったらダンスは私たちとおどってくださいまし」
「そうですわ、遠慮しようと思ってたんですけど」
「ねえ、いいですわよね。卒業記念に」
まだ肩を震わせて笑っているカロリーナに3人が詰め寄っていく。
「ふふふ、わかりました。エマ様がよろしければそれでも」
とこちらを見てくる。
「それって、男装ってことですの?」
大きくうなづく3人に、私は「わかりました」と答えていた。
普通の姿で参加して嫌悪感をまき散らすのも問題だし、女子としてのメイクでどのくらい効果があるかはやってないからわからない。よくよく考えなくてもやってみてもらえばよかったのだが。
みんなが男装を希望するならそれにこたえるのもこれが最後だろうし、って気持ちもあった。




