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続くお見合い対策

 それから。


 ヘイウッドの罪は、シャノン伯から訴えられることはなく、私やルーカスも訴える気はなかったが、カロリーナは無罪では本人にもよくないと、社会奉仕的な刑罰を与えた。

 魔法力があるので、その力を使って土砂工事や、川の工事、森の整備等々をさせたようだ。そのあとは、シャノン伯爵と奥様にお目付け役としてついてもらうようにお達しが出た。

 これにはヘイウッドも、俺は子供かよ、と文句を言っていたみたいだが、嬉しそうでもあったとカロリーナから連絡を受けた。



「よかったですわね。これでルーカス様も安心でしょう?」

 生徒会室でベシーがにこにこしている。

「ええ、その節はお世話になりました。みなさん、怖い思をさせちゃってごめんなさい」

 あれから何度となく謝ってしまう。


「もういいですよ、そんなに謝らないでも」

「私たちが勝手についていったんですから」

 ロザリンもアンもなぜかニコニコ笑顔。

 ちょっと待って、妙に笑顔なのが気になるんですけど。

「あのお、何かありました?」

「え」「へ」「は」

 と3人の声がそろわないのかそろっているのか。


「なんでも、ねえ」

「ええ、そうだ、ルーカス様とはご兄弟ではなくいとこ同士だったんですってね」

 ロザリンがぽんっと手を打つ。

「そうなんです。きちんと説明してなくて」

 ヘイウッドと対峙するときに色々言っちゃって、ルーカスは何者? と思われているだろうな、と思ってはいたが。


「どなたかに聞かれたんですか?」

「カロリーナ様ですわ」

 ああ、そうか。

 今ではヘイウッドのお目付け役となったシャノン伯爵を探し出してくれたのもカロリーナ。原作でも隠密みたいに動いてくれる人がいるように描かれていたが、まじでそうなのかも。

 ルーカスのこともだいたいは掴んでいたのだろう。


「ルーカスは叔父の息子なんですが、我が家の養子としてこのまま過ごしてくれるようになりましたの」

「つまり弟様に間違いないってことですのね」

 はい、と大きくうなづく私に、ベシーは、

「エマ様はそれで納得されているんですわよね?」

「え? はい」

 どういう意味? あっ、そうか。

「大丈夫です、私が跡継ぎじゃないから嫌とか言いませんし、そんなことで文句はないですし」

 3人はちらりと視線を合わせてるけど、何で?


「エマ様」

 仕切り直しのようにロザリンは咳ばらいをする。

「はい」

「エマ様、まだお見合いが続いているんですの?」

「はあ、そうです」


 そうなのだ、ヘイウッドの一件で見合い話はしばらく立ち消えかと思われたが、嫌われ薬のせいなのか、うちの親の性格がしつこいのか、またもやお見合い相手を見つけてきている。


「何度やっても一緒なんですけどね」

 薬の効果を発揮しては、お見合い合い相手は逃げかえるということを繰り返している。

「そのことなんですけど、エマ様」

 なぜかごくりと喉を鳴らすアン嬢。

「はい」


「遅くなりましたわね、エマ様いらっしゃいますか」

 いきなり入ってきたのはカロリーナ嬢だ。卒業間近で、王太子妃の発表を控えているカロリーナはここのところ忙しいのだろう、あまり姿を見ていなかった。

「カロリーナ様」

「あら、皆さん、もしかしてもうお話になりまして?」

「いえ、今、話そうかどうしようかと」

「じゃあ、ちょうどよかったのね」


 にこりとしつつ部屋の中央に進むカロリーナは、今まで以上に綺麗なのよね。ランドルフとの想いが通じ合ってからというもの、幸せオーラが半端ない。


「エマ様」

 3人と話すときも資料室から覗いたまま話していた私は、ドアを手に「はい」と答えた。

「お見合いですけど、デリクとなさいませ」

「は?」

 いま、デリクって言った?


「あのそれは」

「お見合いが続いているのでしょう?」

「はあ、その話をしてたとこなんです。薬の影響でみんな、飛んで帰りますけど」

 苦笑いの私に、カロリーナは近づいてくると、

「このまま見合いを続けても、外聞が悪くなるばかりですわよ」

「外聞、ですか?」


「ええ、先ほど、エマ様のお父様やお母さまにもお伝えしてきたのですが。サザランド家の醜聞になってしまってはゆくゆく困りますでしょうし、ここは偽物の相手をたててしばらく過ごされた方がいいです、と」

 何を言っているのか、思わず目が点になる。

「その相手にデリクをたてたのです。いかがかしら」

 いかがも何も。つまり、偽のお見合い相手と付き合いうふりをしろってこと?


「あのお、でも、偽物の相手と付き合っているという話が流れて、そのあとは」

「卒業して就職でばたつきますでしょう? その間にお話はうやむやになったとか、デリクが遠方に行くのでそのままとか、エマ様のしたいお仕事次第で考えていけばいいんです」

 そんな、ありがたいといえばありがたいけど。いいのかな。


「でもそれって、デリク様には何の利益もないと言うか」

 カロリーナはにゅっと手を突き出すと、

「大丈夫! デリクにはお相手もいませんし。本人の了解も得ています」

 まじか。デリク、天使かもしれん。


「いいのなら、お見合いはしなくていいってことですよね」

「そうなりますわね」

 お見合いは断られればいいか、って思ってこなしてきたが、何人もとのお見合いにはかなり辟易していたのだ。しなくてすむならそれに越したことはない。

「じゃあ、ありがたく。あのデリク様にお礼をしないと」


 眉を上げたカロリーナは、

「今度の花祭りにでもデートしてやってくださいな」

「へ? デート、ですか!?」

 途端にベシーもアンもロザリンもほほを染めて嬉しそうだ。

 なるほど、デート。

 人様のそういう話って萌えるもんなあ。だから3人でにこにこしてたのね。

 でもデリクは私相手でいいんだろうか。花祭りではせいぜいおごってお礼をしないとだわ。

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