お見合い相手のお宅訪問
ヘイウッド・シャノン邸に行く機会はすぐに訪れた。
「ここですのね」
まるで敵地に赴くようなロザリンとアン。
ベシーはお屋敷を見上げると、
「こんな広いところにおひとりではお寂しいですわねえ」
といまだ同情している様子だ。
「カロリーナ様はお忙しくて来られませんでしたけど、しっかり見てくるようにといわれておりますからね 。皆さん、情に流されず、きちんと見極めましてよ」
そんなことを言っていたロザリンだったのだが。
「さあ、こちらです」
と自らドアを開け、にこやかに私たちを招き入れたヘイウッド。
招き入れてくれた居間はソファが暖炉を囲むように配置してあり、部屋を囲むように半円アーチ形の窓が並ぶ。窓辺や暖炉の上には小さな花が入った花瓶、小動物の置物がうるさくならないように飾ってある。壁紙は落ち着いた色で小さなお花が同系色で描かれている。
きっとお母さんはかわいらしいものがお好きだったんだろうなあ、と想像させる、かわいらしくも落ち着いた暖かい部屋だ。
だけど、何だか妙な感じがするのは何故なんだろう。首を傾げつつ部屋を見回していると、
「素敵なお部屋ですわね」
「本当に」
ベシー達が感心しきりだ。
「エマ様、お茶を持ってきますので、しばらくお待ちを」
「ヘイウッド様がされるんですか?」
眉をさげたヘイウッドは、
「いつもいてくれるばあやが具合が悪くてね」
「メイドさんは?」
「うちは私ひとりだからばあやと執事、あとは家のことを色々としてくれるじいやと馬の世話をしてくれるものぐらいで」
お恥ずかしいと、頭をかくヘイウッドにロザリンだけでなくみんなやられてしまったみたいだ。
「お手伝いしますわ」
とベシー。
「お台所はどこですの?」
「教えていただけたら、ヘイウッド様は座ってらしてください」
ロザリンもアンもヘイウッドに教えられた台所に向かう。
「自分も」
と言うヘイウッドと私をソファに座らせた3人は、
「お二人はお話でもしててくださいな」
そそくさと廊下を行ってしまった。
ヘイウッドが「お言葉に甘えて座りましょうか」とソファにうながす。
「なんだか、すみません」
「いや、こちらこそ、お友達に申し訳ない」
居心地のいいソファは何だか眠りを催すようだ。
「エマ様」
「はい」
テーブルを挟んで座ったヘイウッドが身体を乗り出すと、
「エマ様、今日もマント姿ですか」
「ええ、さすがに気分を悪くされては大変ですから」
私の姿は貴族令嬢と言うより、黒マントの魔女のような姿。学園祭での姿のままだ。
ヘイウッドとデートで、カフェに行くことになり、その時もマント姿だった。何かあってはいけないし、苦肉の策だったのだが。
私の飲んだ薬の影響も理解してくれて、カフェといっても外にテーブルが置いてある、テラス席にしてくれた。
今も、
「マント姿は今日は仕方ないですが、二人の時は取って愛らしい姿を見せていただけたらうれしいです」
なんて囁かれた。
まじですか。
顔が赤くなるようなセリフ、だけどそれがまた似合うお顔してるのよね。
それにしても、これこそが最大の謎なのだ。
なぜ私なのか、ということ。
こんなに良さそうな人で、魔法省に勤めてて、こんな大きなお屋敷に住んでいる。
めちゃ好条件、好物件、好青年。
他の女が、いや、貴族の父親たちが放って置くとは思えない。
よりによって、嫌われ薬のせいとはいえ、見合いで逃げられまくっえちる女と見合いをし、薬のこともわかってもなお、結婚をしようとするなんて。
「どうしました?」
思わず、ガン見していたようで、ヘイウッドが笑みを浮かべこちらを見ていた。
「今日は、大人数でおしかけてすみません」
「ああ、そんなことですか、うちはいつも静かすぎるぐらいなので、嬉しいですよ」
そう答えたヘイウッドは、
「そういえば、弟さんのルーカス様は今日は来れなかったんですか」
ルーカスもぜひにと言われていたのだ。
「ルーカスは魔法省に制服を受け取りにいかないといけなくて、でも迎えに来てくれると言ってましたわ」
「ほう、そうですか」
にこりとしたヘイウッドは、
「弟さんとは魔法省でお会いできるでしょうが、その前にご挨拶がしたくてね」
はあ、と答えたものの、妙に嬉しそうだなあ、と感じてた。兄弟がいないらしいから弟ができることが嬉しいのかな。待って、それは私がこの人と結婚するってことよね? 貴族同士の結婚ってもう決まったようなもんなの?
今更ながら焦りだした。
まじめにというか、そこまで真剣にとらえてなかった。
どうしよう。




