お見合い相手からのいい返事
今回のお見合い相手は、また会いましょう、と次も約束までして帰っていった。
「嘘よねえ」
つぶやきつつもどうすべきか悩んでいた。
悪い人ではないのかな。
よくわからない。
よくわからないからまた会った方がいいのかな。
唸りつつ夕飯を食べている私をルーカスは、
「今日は長く一緒におられたみたいだけど、どうだったんです?」
「うん、また会いましょうって」
目を丸くするルーカス。
「本当ですか?」
「うん」
うーんと唸ったルーカスは「何が狙いなんだ」とぶつくさ。
まあそう思うわよねえ。私も悩んでるのだが。いきなり食堂のドアが開いた。
「エマ!」
「え? 母様? 父様も」
「あなた、よかったわ。ヘイウッド様があなたを気に入ったようよ」
「へ? ああ、はあ」
「結婚を前提にお付き合いしたいって先ほど連絡が入ってね」
「はい?!」
目を丸くしてるのは私だけでなく、ルーカスも口まであんぐりと開けている。
「本当ですか、それ」
「ああ、ルーカスも喜んでちょうだい。うまくいけば、エマは卒業と同時にここを出ていくわ」
狂喜乱舞な母と父。今にも踊りだしそうだが。なんて言われようよ。
「ですが、今日会ったばかりで」
ルーカスが代わりのように言ってくれるが、母も父も、
「あら、そんなこと、普通のことよ。気にいられることが大事なんだから」
「そうだぞ。いいか、エマ、ヘイワード様の前でへましないようにするんだぞ」
もう踊りだしそう、というより、ステップを踏んで二人は食堂から出ていこうとした。
が、父様は「あっ」というと、振り返り、
「ルーカス」
「はい」
「ヘイウッド様は魔法省にお勤めしているんだ。ルーカスとも会えるのを楽しみにしてらしたぞ」
「は、はあ」
じゃあ、とドアはバタンとしまった。
「魔法省、やっぱり魔法力が強いのね」
どうりで嫌われ薬に強いはずだ。
「魔法力が、そうですか。ヘイウッド、ヘイウッドか……」
私もルーカスも同じ人物のことを考えてぶつくさと言っていた。
デートの日はすぐにやってきた。
こっちは追試でへとへと。連れていかれたカフェで死ぬほど甘いものをおごってもらった。
意外にいい人かもしれない。
「エマ様、すぐに卒業ですね」
「はあ、まあ」
追試がうまくいけばだが。
「今度は我が家にいらっしゃいませんか」
「え? 家ですか?」
さすがに早くない? あ、でも。
「あのお」
「はい」
「お友達も一緒でもいいですか?」
ちょっとだけ目を見開いたヘイウッドは、目を細めて笑顔になると、
「もちろん、皆さんに点数をつけてもらわないと」
「あ、いえそんな」
その通りなもんで焦る。
そうなのだ、お見合い相手と結婚か!? のニュースはカロリーナからみんなの耳に届いていた。
「ご結婚決まられたんですの!?」
ロザリンに捕まった。
「あ、いえ、それは」
「本当ですのね」
ベシーがうつむいて唸っている。
「どんな、どんな奴、どんなお方ですの?」
とアンが目をぎらぎら。
カロリーナは腕組みをして眉を上げた。
「ヘイウッド・シャノン伯爵様。魔法省にお勤めです。ご年齢はエマ様の4才上。お父様とお母様は既にお亡くなりになっていますわ。おひとりでお屋敷に住まわれているようですわね。魔法省では真面目なお仕事ぶりだそうですわよ」
「はあ、そうなんですね」
とまったく情報を得ていなかった私は感心してカロリーナを見つめてた。
カロリーナこそ、新聞社に勤めるべきでは。
「年上はいいとして、お父様もお母様もいらっしゃらないんですのね。ご兄弟は?」
眉を下げたベシーにカロリーナは「おひとりみたいですわよ」
「まあ、それはお寂しいですわね」
すっかり同情モードだ。
ロザリンもアンも眉は下げつつも、
「ですけど、人柄は?」
「そうですわよ。お顔はどうですの? エマ様」
「はいっ?」
「どうでした?」
詰め寄る二人に私は上を向くとうーんと唸った。
はっきり言って、攻略対象じゃないのかっていうほどのお顔にスタイルもよかったのよね。
「いいほうだと」
まあ、あらあ、とおばさんのように顔を見合わせてる。
「私もお姿を拝見しましたが、なかなかの好男子でしたわ。ただ」
カロリーナは不満そうに口の端を曲げる。
「ただ?」
いえ、と視線を落とすカロリーナ。
「あのお、カロリーナ様?」
気になるんですけど。いい人に見えて実は青髭みたいなのじゃないよね?
「ああ、ごめんなさい。いい人過ぎるというか、なんというか」
「いい方ですのね?」
とベシーが聞き直す。
カロリーナはええ、とうなづくと「聞いた話ですけどね」と言うが、どんな情報網を持っているのやら。
「いい方なら、まあ認めなくはないですけど」
と言ったロザリンが、
「エマ様、その方と一度お会いしたいですわ」
と言い出した。
ベシーもアンも「まあ」と言うものの、
「じゃあ、私も」
と小さく手を上げる。結局、みんなで会う機会を設けるようにという命令をくだされたというわけ。
私たちが採点してあげますわ!
なんて言っていたが。




