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卒業後は?

 卒業を目の前にして、3年生は就職、結婚等々忙しい。

 かくいうルーカスは早々に魔法省に就職が決まっているし、生徒会の面々もそれぞれに進む道を見つけている。


 私はと言えば、いいとこに就職できるほど成績がいいわけでもなく、婚約者もお付き合いしている相手がいるわけでもなく。嫌われ薬がいまだ抜けていな状態ではどうにもこうにもなのである。

 母様も父様も薬の影響はいまだ強く、ルーカスを養子にしたころから、私の相手探しに翻弄していたらしい。


 学園祭が終わる頃、居間に呼び出された私は母様から、

「明日、ゴーラム伯爵家の子息様とお会いしますからね。ドレスはメイベリンに言ってあるから綺麗にしていくんですよ」

 と言われた。

「は、はい? ゴーレム?」

「ゴーラム!」


 ああ、ゴーラムね、ゴーラム。ついつい土でできたどでかい、ダンジョンを徘徊してるようなのを想像してしまった。だけど、そのゴーレム、ゴーラム氏となぜに会わねばならないのか。


「その方とどういったご用件で?」

 こちらをちらりと見た母様、もちろん、仮面と扇越しでだが。

「結婚相手に決まっているでしょう?」

「ああ、なんだ、結婚、え?!  結婚?!」

 お笑いかのごとくノリツッコミしてしまう。


「わ、私、その方と結婚するんですか?」

 身体を乗り出す私に身体をのけぞらせた母様は、

「お相手が良い返事をくださればそういうことになりますね」

「いい返事……」


 つまりはお見合いと言うことらしい。

 結婚云々は、相手が承諾しないとまず無理。てか、今の私では誰が来ても無理なんだけどなあ。そこのところ、母様はわかってないらしい。


「あのお、母様」

「明日ですからね。場所はこちらにいらしてくださるそうよ。わかりましたね」

 言うが早いかさっさと居間を出ていった。


 で、まあ、そのゴーラム氏と会ったわけだが。

 もちろんうまくいくわけもなく。


 私と対峙して数分後、よく頑張ったと思うよ、さすがゴーレム。

 テーブルを蹴倒す勢いで立ち上がり、

「失礼!」

 と屋敷を飛び出していったとさ。


 だが、母様も父様も気が合わなかっただけと、別の相手を探してきた。

 その相手とももちろんダメで。じゃあ次の相手ともう端から用意していたのではないかってぐらいのスパンで引き合わされた。

 これもねえ、会った瞬間、脱兎のごとく逃げて行って、はるかかなたで苦しそうな声が聞こえてきた。

 恐るべし、嫌われ薬。

 人によって薬の影響力の強弱はあるみたいだは、本当に生徒会の面々には感謝しかない。


「まあそんなわけで、まとまるわけがないんです」

 私の答えに、カロリーナは真面目な顔をすると、

「エマ様、卒業されたらどうされるんですの?」

「えー、そうですねえ」

「よかったら、私の側に仕えてもらえないかしら」

「え!?」


 カテリーナは卒業と同時にランドルフと結婚する。つまり正式に王太子妃となるのだ。カテリーナなら間違いなく、立派な王太子妃、そしてゆくゆくは王妃になるだろう。

 だけど、そんなカロリーナ王太子妃の側に、なんて。


「それは、無理です」

「あら、ダメですか?」

 そんなうるうるした目で見ないでほしい。最近ランドルフといい感じのせいか、ツンデレの使い方がうまくなってる気がする。こんな美人にうるうるされたらたまったもんじゃない。


「駄目と言うか、私では無理です」

「そんなことないですわよ」

 とベシー達が口を挟むが、どう考えても無理だろう。

「皆さんならわかりますが、私、成績も最悪ですし」

 って、みんな無言なのはやめてよ。


「それに、私の嫌われる状況はよくなっていませんから」

 むううう、と口をへの字にするカロリーナ。ベシー達は、眉を下げて困ったいるようだ。

「元に戻るのに時間がかかるんです。ただ、それがいつかははっきりしないので」

「そうでしたわね」

 私は構わないんだけど、と言ってくれるカロリーナがありがたいが、そういうわけにもいかないだろう。


「あの恰好でお勤めは」

 とアンが口を挟むが。

 あの恰好とは、学園祭で癒しの魔法というブースをやったときの黒マント姿のことだ。

「さすがにカロリーナ様が怪しい活動をし始めたんじゃないかと思われちゃいますよ」

 苦笑顔の私は、

「でもあの姿でお仕事できたらって思ってるんです」


 ロザリンがポンっと手を打つ。

「今も騎士団の皆さんの傷を治されているんでしょう?」

「ええ、お役に立ってるかはわかりませんが」

 デリクの傷を治して、学園祭では騎士の人たちの傷を治しまくった。あれ以降、デリクから時々来てみてほしいと言われては黒マント姿でお邪魔していたのだ。いわゆる出張癒し魔法屋さんである。

 数やって力をつけるしかないと思っていたので、デリクの申し出は本当にありがたかった。


「デリク様にはお礼をしないといけないぐらいで。カロリーナ様、デリク様が喜ばれるものってわかりませんか?」

 ちょっと目を見開いたカロリーナは、

「考えておきますわね」

 とにっこりと笑みを浮かべた。


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