アンを探して
きらびやかなパーティ会場。
といっても学園の中の大きなホールなのだが。
生徒会としては、今回のパーティの企画運営を任されている。
前日まで、その準備で結構大変だったが、何だか学園祭のようで楽しかった。
そういえば、ここでは学園祭もあるらしい。
「学園祭でもダンスあるのかしらね」
「もう勘弁してほしいですけどね」
こちらを伺いみるように見てきてルーカスは、
「化けるもんですねえ」
と妙な感心をしている。
パーティ前にシャンダのとこに行って男子に変身してきた。
服はカテリーナからのプレゼントで、今度はサイズもぴったり、ブーツもぴったり。スリーサイズ言ったことにないんだけど。
洋服屋さんで並べられた服の中から選ばれたこの服。
みんな、ああでもない、こうでもないと、まるで会議のように意見の言い合い。私はメイドの姿なのも忘れてソファでぼんやりとみんなの様子を見ていた。
何だか不思議。
前は、この世界に転生してしまった時は、女子から冷たい目で見られていた。
ヒロインってモテるけど、確かに男子とばかりいちゃついていては嫌な顔されるよね。
嫌われ薬なんて大変なものを飲んじゃったけど、そのおかげで今がある。
でも薬の影響は抜けてない。
今はわかってくれる仲間がいるからいいけど、学園を卒業したらひとりで戦わないと。
そのためにも癒し魔法を上達させないと。
学園祭、そうか、そこで。
と頭の中で色々と考えつつ綺麗な会場を見ていると、ルーカスが腕をつついた。
「姉さん、アン様を迎えに行かないと」
「そうか、そうだったわね。ちょっと行ってくるわ」
「僕も行きますよ」
ルーカスを伴って生徒会室へ向かう。
そこで落ち合うことになっているのだ。
「アン様?」
生徒会室のドアをノックして開けると、
「あれ?」
ふたりして生徒会室を見回すけど、そこには誰もいない。
「アン様、まだなのかしら」
「みたいですね」
だが生徒会室のドアは開いたまま。風でキィ〜と嫌な音を立てている。
「なんか変じゃない?」
「そんな感じがします」
急いでどこかへ行ったような。
生徒会室のドアはきちんと閉めるのは当たり前だがいつもは鍵がかかっている。
役員は皆鍵を持っていて誰もいない時は鍵をかけること、というのがお約束なのだ。
中には学園の資料なんかも置いてあるので開けっ放しにはしない。
「探しに行く?」
「そうですね」
すぐに廊下からホールに向かう。
何があったかわからないけどホールにいてくれたらいいんだけど。
ホールを見回すがパーティにやってくる生徒たちでいっぱいになりつつある。
受付もあり、そこには後輩の女の子の姿が。
ルーカスに頼んでアンが来ていないか聞いてもらった。
ちらちらとこちらをこちらを見てるような気がするけど。見知らぬ生徒だからおかしく思ってるのかしら。怪しいものではないですよ〜とニッコリとした笑みを浮かべたが、途端に2人の受付嬢は真っ赤な顔でキャッと小さく声を上げた。
「?」
「ほら行きますよ」
首をかしげる私はルーカスに無理やり引っ張って連れて行かれた。
「姉さん、もう少し自覚を持ってください」
厳しい顔で言われるけど、
「何が? 怪しまれてるのかと思って愛想よくしただけじゃない」
「愛想……そうですか」
厳しい顔が呆れた顔に変わっていくが、意味がわからない。
だけど、今はそれだけじゃないのよ。
「アン様、こっちじゃないとすると教室の方?」
「今は閉まってると思いますが」
会場となっているホールは大きな建物だが、他に食堂や図書室等々が集まっている。
教室のある棟は廊下を挟んだ反対側にあり、その廊下に沿って生徒会室や先生方の部屋がある。
パーティがある今日はもちろん授業はなく、お休みの日。授業のある棟は鍵がかかっているはずだ。
「とすると、中庭?」
「そうですね、とりあえず行ってみましょう」
生徒会室の前を通り過ぎ、渡り廊下に向かう。そこから中庭にでれるのだ。
中庭にはベンチやガゼボがあちこちにあり、その間にバラ園や色とりどりの花に低木が道を作る。大きな温室も見事なものだ。
その温室の近くから人の声がする。
「いいだろう? お相手がいないのなら自分が相手をしようと言ってるんだ」
「いえ、いや、その」
アン?!
慌てて向かっていく私たちの横を誰かが走りぬけていく。
え? あの背中は。
「ノア?!」
ノアがアンのほうへと突っ走っていく。




