特殊メイクの力?
ともかく、またもや特殊メイクのシャンダのもとに行った私。
「この前のは上手くいったのかい?」
「えーとですね、上手くいったというかいかなかったというか」
「はあ?」
私は知ってることを全て話した。
ロザリンからはお礼を言われたものの、フレディはダンスパーティーを断られた。
「ははーん、そういうことか」
と言ったシャンダに私は、
「何で? どういうことですか?」
私が変装してロザリンとデートした時、フレディは心配でついてきていた。つまりすごく好きってことなのに。いったい、何がいけなかったんだろう。
シャンダは「あ〜、そうねえ」と人差し指を顎に当てた。
「ロザリンって子はフレディの人間性に疑問を持ち始めたってことじゃない?」
「人間性?」
「嫌な面を見ちゃったつてことよ」
そうなのか……?
「せっかく上手くいくかと思ったのに」
うつむく私に、離れてはいるもののシャンダは親指を立て、いいねのポーズをした。
「凹むことないわよ。おかげで変なやつといっしょにならずにすんだわけてしょう? 付き合う前に分かるなんてラッキーじゃない」
「はあ、そんなもんてすか」
よくわからないが、ロザリンが納得してるならそれでいいのかな。
「で? 今日は?」
シャンダはカウンターの端にいる私にお茶の入ったコップをすいっと流して渡してくれた。
「ありがとうございます。あの今日はですね、また今度男装しないといけないみたいなんです」
また男装メイクをしてほしいことと、前回の男装で嫌い薬の効果が多少和らいでいたことを話した。
今はすっぴんで、薬の効果は全開中。二人の距離はカウンターの端と端だ。
それでもハーブのお茶で多少おさまってはいるらしいシャンダは、
「へー」と感心しきりだ。
「ちょっとまってよ、あのときのメイクは普通のメイクだとそのままなんで肌の色を濃いめにしたのよ、それに眉も太くしたし唇は……」
と、とうとうと語る。
「あれにはたしかにハーブもだけど、粘土に近いものも入ってるのよ」
そんなものが入っていたのか。ファンデーションの原料って顔料なのかな、なら不思議じゃないか。
お茶を飲みつつ考えていたが、シャンダもひとりごとのように、
「それのどれかが効果があるのかしら、研究の余地はあるわね」
と、ぶつぶつと言っている。
「情報ありがとう」
と立ち上がったシャンダはこちらに笑顔を向けた。
さあ帰れといわんばかりだが、私は魔法のことで聞きたいことがあったのだ。
だけど。
「私が? 魔法は使えないよ」
「でも」
「知ってるだろう? 私のできるのは昔から伝わる薬の調合。メイクやら変装やら、あんたが言ってた特殊メイクだね」
「そうてすか」
シャンダの姿かたちはまさに魔女っぽいんだけどなあ。怪しい薬を売っているところといい、おばあさんになったり妖艶な美女になったり。まあそれはメイクの力だったが。
「なんだい、魔法なら学校で習うんだろう?」
がっくりしている私にシャンダは頬杖をしつつ視線を向ける。
「それにあんた、一応貴族みたいだし、魔法力はあるんだろ?」
「まあ、ないことはないんてすけど」
たいしたことのない魔力しかないことを説明した。
「ふーん、でもほら、癒し魔法は持ってるやつは少ないんなら、そこを伸ばせばいいじゃないか」
「それが、癒し魔法についての勉強は歴史ぐらいで具体的なことはなにもないし」
学校で習うのは、歴史のみ。自分で何とかしようと図書館でも探してみたが。
大体、本がないのだ。
「そうなんだねえ。持ってる人間が少ないとなるともう絶滅していく運命なのかもねえ」
うーん、と口を突き出したシャンダは肩をすくめた。
「えー」
「まあまあ、色々試してみればいいじゃないか。それで魔力が上がるかもしれないし」
すたっと椅子からおりたシャンダは、
「私も聞いたり調べたりしてみるよ」
と言ってくれた。
「ありがとうこざいます!」
「わかった! もうそれ以上は近づかなくていいから!」
手を伸ばすシャンダに私は「ありかとう〜〜」とバタバタ手を振って返した。
そうか。
癒し魔法を続けていけば魔力が伸びるかもだし。
帰りの馬車の中、シャンダの言葉に希望の光を見出した私。
癒し魔法の主力は傷を治す、病気を治す。
今のところできるのは小さな傷を治すぐらい。
病気はレベルが高そうだし、まずは傷を治す能力を上げていく。
それには傷を治していかないと。
傷を作っている人といえば。




