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ダンスパーティへのお誘い

 生徒会室でいつものように資料整理をしているとアン様がおずおずとした様子で部屋に入ってきた。何か資料を探しているのか、だけどこちらをチラチラと見ているような。


「アン様?」

「は、はい」

「何かお探しですか? 私が邪魔なら出ていきますけど」

「いえ。そんな。いいんです、いらしてくだ……うっ」

 と言ったアンは部屋からバタバタと出ていった。やっぱり薬の影響は強そうだ。眉が吊り上がる人、気分が悪くなる人、人それぞれ症状は違うが。

 こういうのも、癒し魔法で治ったりしないのかな。


 私、ヒロインは、癒し魔法を持っているという設定だった。ただ、魔法の存在はお話の中ではあまり重要視されてなかったのよね。

 悪役令嬢がどうやって危機を回避するか、それに魔法も絡まないわけではないけど、ヒロインの持つ癒し魔法はただ、持ってるってだけ。ちょっと珍しいってだけで。

 ライバル役だしね〜と思いつつも、今私が頼れるのはこの魔法のみ。

 真面目に授業をうけてるのも、すべては生きていくため。

 だって、魔法力が強ければ、たとえ嫌われキャラでも仕事もあるし食べていけれるはず。

 ただ、今のところ。私の魔力は微々たるものだということがわかっただけ。


 ルーカスやカロリーナ様は強い魔法の使い手だ。カロリーナ様はゆくゆくは王妃になるが、ルーカスは魔法省に就職も夢ではない。

 現世の国家公務員みたいなもんだ。

 私の力では地方公務員すらなれないだろう。

 ああ、せめて癒し魔法の使い手とかなれたらなあ。

 あーあ、と背伸びしているとまたもやトアがあき、今度はノアが顔をのぞかせた。


「ノア様、何か御用ですか?」

「あ、そこでストップ」

 手差し出しこっち来るなのポーズ。

 まあいいけどね。

「今日は男装してないんだ」

 あ、あれか。

「はあ、まあ」


 ふーんと言ったノアは、遠巻きに私を見ると、

「フレディが負けたらしいからどんなんか気になったんだけど」

 へ?、負けた?!

「負けたってなんです?」

「あー、聞いてない?」

 上を向いたノアは顎に手をやると、

「つか、プロポーズしたわけても告白したわけでもないしなあ」

 とつぶやいている。


「え? え?」

 こちらを向いたノアは口角を上げると、

「今度ダンスパーティーがあるじゃない」

「ああ、ありますね」

 今の私にはマジで関係ないから気にしてもいなかったが。学園では親交を深めるためや、将来にむけての関係を築くために、色々なイベントが開催される。ダンスパーティーもその一つだ。


「それが?」

 にやにやしたノアは、

「フレディが誘いを断られたんだよ」

「嘘でしょ?!」

 私はわたわたと資料室から出た。そこにはロザリンとベシー、アンが机について何やら作業をしていた。


「ロザリン様」

「あらエマ様」と近寄ってこようとするのをノアみたいに押し留めた。 

「今、大丈夫てすか?」

「ええ、何でしょう」

「えーと、ダンスパーティーなんてすけど、フレディ様とは」

 瞬間、眉間にシワを寄せたロザリンは、

「誘われましたがお断りしました」

 はっきりと言われてしまう。


「えー、それはまた」

「仕方ありませんわ。フレディの責任ですもの」

「それは、どういう」

 はっきり言い切ったロザリンは、ニコリと笑みを浮かべた。

「エマ様は気になさらなくて大丈夫ですわ。それよりダンスパーティーは行かれます?」

「いえ私は」

 薬を飲んで以来、夜会にもお茶会にも参加していない、というより、お誘いされなくなってるんだから参加するはずはないのよね。


 それは知っているだろうが、ロザリンは

「参加されない?!」

 と顔色を変える。

「行かないんですか?!」

 とベシーは椅子を蹴倒す勢いで立ち上がった。


 思わず後退した私は、

「付き合ってくれる方もいませんし」

「じゃあ、ご一緒に」

 ベシーが前のめり気味に言う側でロザリンは腕を組むと、

「あら、ペシーにはご一緒する方がいらっしゃいますでしょう」

 そこにアンが「あの〜」と手を挙げる。

「私もご一緒させていただいても」


「アン様、珍しいですわね。せひ一緒に参りましょう」

「別に男性と一緒じゃないといけないなんて決まりはありませんのよ」

 とベシーとロザリンの返事に、

「そうてすよ」

 入ってきたカロリーナがにこりと笑った。


「でも、私を嫌うパワーが」

 とおずおずと言うと、ロザリンが不思議そうな表情を浮かべる。

「あの呪いですわよね」

「はい」

 ベシーから聞きました、と続けたロザリンはなぜか頬を赤らめると、

「不思議なんですけど先日の、あの、男装してくださったときなんですけど、あまり嫌悪感は起こらなかったんです」

「え?!そうなんですか?」

 それは初耳だ。

 あのときはいつもと違ったのはメイクとウィッグとルーカスの服ぐらいだ。

 メイクの何かが良かったのかしら。

 それとも泥だらけになってお母さまからこってり怒られたあの服?


「それに」

 とロザリンは更に続けた。

「呪いが原因だって聞いて。なんというのかしら、心構えができたというか、エマ様のせいではないんだって理解ができたから、ただ嫌になるってことはなくなりましたの」

 なんてありがたい言葉。

「ロザリン様、ありがとう。頑張る気力がわいてきました」

「うふふ、喜んでもらえてうれしいです。お礼は先日の姿がまた見たいのでよろしくお願いします」


 先日?

 なぜか期待したまなざしで見られているような。


「それって男装のことですか?!」

「あの、私もお願いします」

 とベシーが恥ずかしげに言い。アンまでが「はい!私も」と手を挙げ、みんなの視線を集めてる。

 クスクスと笑ったカロリーナは、

「じゃあお洋服はこちらで準備しますわ」

 とまで言ってくれたが。これってまたやれ。ってことよね。


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