デートがすんで日が暮れて
馬車に乗った私とベシーにカロリーナ。最後に乗ったロザリンは、座った途端「ふう~」と息を吐きだした。
「大丈夫ですか?」
ベシーが心配そうに聞いている。
「ええ、ごめんなさい。無理やり馬車に乗せてしまって」
カロリーナにも頭を下げている。
「私はいいんですのよ。エマ様は大丈夫でしたか?」
いきなり振られ、こくこくとうなづいた。
「ええ、私は全然。ですけど、フレディ様、置いたまま帰ってよかったんですか?」
てっきり帰りはロザリンとフレディの二人でラブラブで帰ることになるかなあ、なんて想像していたのだが。
「大丈夫でしょう。ルーカス様に頼んできましたから」
「え? そうなんですか?」
ってことは、今頃、男二人で馬車に揺られているのかな。
にしても、今回のこれは成功なの?
首をかしげている私を笑みを浮かべて見ていたカロリーナは、
「それにしても、エマ様、とてもかっこいいですわね」
「え? いやあ」と口を挟む間もなく、ロザリンが「ですわよね」と前のめり気味になり、ベシーも「本当に」とこちらを恥ずかしそうに見つめてくる。
「生徒会の殿方もかっこいい方が多くていいわねえ、ってみんなに言われるんですけど、そんなの目じゃないと言うか」
「そうそう。今日のフレディ様、いつもよりおめかしされてましたけど」
と恋する乙女らしからぬことを言い出すロザリン。
ふふふと笑ったカロリーナは、
「これでは王太子もうかうかしていられませんわね」
なんてことを言う。
「そ、そんな、お世辞でもうれしいですけど、怒られますよ」
ねえ、とロザリンに振るが、眉を上げたロザリンは苦笑顔で肩をすくめた。
え? なんで?
目をしばしばさせる私をカロリーナは「気にしないで」と声をかけてくれる。そして、
「ロザリン様、考えることがおありなんでしょう?」
と深いまなざしを向けた。
「さすが、カロリーナ様ですわ」
とロザリンがうなづき、ベシーが
「やっぱり……そういうことですか」
と小さく息をつく。
3人で理解が進んでいるようだけど、こっちは訳が分からずきょろきょろと3人の顔を見まわしていた。
「あ、もう家ですわ。ありがとうございました、送っていただいて」
屋敷の前でとまる馬車。カロリーナ様、ベシー様と送り届け、最後に私の屋敷前まで送ってもらった。
ロザリンに礼を言うと、
「こちらこそ。今日は本当にありがとう……あのエマ様」
「はい?」
「私、今日はよかったって思ってます。あの、エマ様のおかげです」
えーっ、ほんとに?
「そんなふうに言ってもらえたら私もうれしいです」
にこにことしてしまう自分だったが、ロザリンは申し訳なさそうに、
「でもお洋服が汚れてしまって、ごめんなさい」
「あ?」
そうだ、泥水がかかって。
とふと自分の着ている服を見下ろすと綺麗な青色は見事な茶色にかわっている。
「怒られませんか?」
申し訳なさそうに言うロザリンに大丈夫じゃないとはとても言えない。
「大丈夫ですよ~」
と手を振って馬車を見送った。
その手をそっと降ろす。
これはかなりやばいかも。
お母様に見つからないうちに服を隠すしかない。
「姉さん」
「ルーカス、もう帰ってたんだ、今日はありがとね。母様にバレないうちにこの服を」
「エマ……」
ルーカスの後ろからのっそりと現れた母様。
「ひっ……母様」
「あなたって子は……」
私の着ているルーカスの服を見て倒れそうになっている。
「ごめんなさい。母様」
私をじっと見た母様は。ちょっと首をかしげたが、やっぱり眉を吊り上げた。これは薬の影響なのか、それとも母様お気に入りの服を泥まみれにしたせいなのか。
ため息状態のルーカスとともに屋敷内に連れて行かれた。




