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「カナディ! 側にいるんでしょ⁉」
聖女の名を呼ぶと、彼女は瞬時に私の真横へと現れてくれた。
眉間にしわを寄せて、険のある表情をしちゃってるけどね。
「アンタ、この期に及んで私の名を呼ぶとは、いい度胸じゃない」
「そういうのはいい、貴女の力が必要なの!」
「私の力が必要? 今更、世界と世界がぶつかったら、もうどうにもならないじゃない。全員死ぬのよ。それともなに、今すぐアンタだけ死にたいから殺せって言ってんの? なら、速攻で風穴開けてあげるけど?」
聖女の杖の血塗られた方を、私へと向ける。
殺傷能力高そうだなぁ、でも、そんな戯言に付き合ってる暇ないから。
「抜け目ない貴女のことだから、世界中にマーキングしてるんでしょ?」
「……何がいいたの? 貴女まさか、アレを転送させようってつもり?」
それしか方法がない。
でも、いま起こっている世界融合じゃダメだ。
ロードメリアが引き戻されている今、今回は全部を転送させないと解決しない。
もし同じ場所に転送させようものなら、ありとあらゆる生命が圧死する。
ううん、圧死じゃすまない、地球という星が崩壊するに決まってる。
「私ね、この何週間かで色々と勉強したの。機械のこと、食料のこと、宇宙のこと」
リズが教えてくれたんだ、この世界の人族は、宇宙から監視してるんだって。
宇宙なんて概念すらなかったから、全部が新鮮で、無駄に色々と調べちゃったんだよ。
だから、こんな突飛な可能性にも気づけたのかもしれない。
「カナディ、あの異世界ロードメリアはもう一個の地球よ」
「……そうね、パラレルワールドの地球よね」
「質量も衛星も何もかも同じ、だから、地球と同じ公転軌道に乗せられれば私達助かるんじゃないかな!? もちろん同じ場所じゃダメ、太陽を挟んで真反対の場所、そこにロードメリアの地を転送させて、無理にでも公転自転させられれば!」
この地球と全く同じ公転軌道に、もう一つの地球を設ける。
直ぐに理解したのか、それまでの表情から一転、カナディは真剣な表情へと変わる。
「……ラグランジュポイントに、ロードメリアを乗せようっていうの? 重力が釣り合っている場所に? 確かに太陽の真裏にL3宙域と呼ばれる場所が存在するけど、あれは確か、互いの重力が干渉しない極小の星の場合のみだと覚えているけど」
ラグランジュポイント? L3宙域? ごめん、そこまで勉強してない。
何か色々と考え込んでるから黙って見てるけど、そんな時間も猶予もないよ。
数秒後、口元に手を当てながら考えごとをしていたカナディの目が、私をとらえる。
「どちらにしても、やった所で重力波で地球の公転が崩れるかもしれないよ? その場合は遅かれ早かれ死ぬだけだけど」
「でも、やらないで死ぬより、やって死んだ方がイイ。それにあの世界を引き寄せてるのは『願い』の力だから、重力調整とかそういうのは、『願い』の力を使って何とかする、してみせるから!」
責任を取って貰えばいいんだ。
異世界を求める彼ら『願い』の力。
彼らの願いを叶えるんだから、ロードメリアの世界保持の為に死ぬ気で頑張って欲しい!
「まったく、根拠のない話ね」
「でも、それしかないよ! カナディ!」
もう、ロードメリアの大地が見えちゃってる。
山も雲も大地も、街も村も城も全部が視認出来ちゃってるんだ。
突風は巻き上がり、空へと向けて放たれている。
大地が崩壊し始めたら終わり、もうどうにもならない。
「……分かった。アルク、ドド、アズに協力するよ。それだけじゃ足りないね、『願い』っていうのが見えない力になるのなら……ありとあらゆる生放送をしてるんだ、視聴者様の力も借りようじゃないか。アルク、異世界法務省特命大臣の権限を発動させて、この世界の人々に願わせればいいよ」
光と闇と突風でどこにいるか分からないけど、カナディの声に反応するアルクの声が響く。
「ああ、分かった! 地球上すべての人に、アレを何とかして欲しいって願うよう伝えればいいんだな! 任せとけ!」
「ドド! アンタ、魔力に余裕あんでしょ! 全部アズちゃんに寄こしな!」
さすがは大魔導士ドド、この環境下でも涼し気な表情で近くまで来れるんだね。
ローブをはためかせながら、私のことを見下ろしてくる。うぅ、圧が凄い。
「まさか、ここまで魔王に力を貸す日が来るとはな」
「ゴタゴタ言ってないで、とっととやる!」
「分かった分かった、そう叫ばないでくれ。不本意ではあるが……頼んだぞ、魔王アズモンデオ」
私の身体にかつてない程の魔力が注がれてくる!
うわ、すご! 大魔導士ドドって本当に全然本気じゃなかったんだ!
全身がリズの魔力とドドの魔力で満ち溢れてくる。
これなら、『願い』の力も支配下に置くことが出来るかも。
……いや、彼らの力は支配するんじゃない、活用するんだ。
異世界自体が願いなんでしょ? だったら協力してもらわないとね。
「L3宙域の座標は、私の方で誘導するから」
「……凄いねカナディ、宇宙空間もマーキングしてあるんだ」
「なに言ってんの、私を誰だと思っているの?」
これは、絶対に勝てない相手なんだろうなって、心の底から思う。
でも、今は味方だから。
全力全開をぶつけても、絶対に大丈夫だって思えるから。
リズ……私、頑張るからね。
魔物と魔族、全員が平和に、一緒に生きられる世界を作ってみせるから。
そして、リズ、貴女も一緒に。
アンちゃんにお願いして、一緒に生きよう。
だから……お願いッ! 成功して!
『魔力ッ、転送ッッ!!!!!』




