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「『魔』の除去は十二月三十一日、二十二時から開始となることが決定したよ。要望の一つとして二十四時には終わらせて欲しいともあるけど、どうやらこの国は『魔』の除去をエンタメとして活用するらしい。多チャンネル同時生配信に多局同時生中継、民放も公営も個人も法人も、全部がアズを放映したいって、殺到してるらしいよ」
どこか楽し気に語るアルクを見て、なんだかなと頬杖をついた。
そんな見てて楽しいものでもないのにね。
聞けば、観客席なんかも設けて行うのだとか。
場所はT都都庁前広場、本当は高い場所が好ましいと思うんだけど、あの『魔』を呼び寄せるとなると、建物倒壊の恐れも懸念しなくてはならないからという理由で、地上で行う事になったとか。
人の安全を第一に考えるのなら、見学なんかさせないで避難させればいいのにと思うけど、異世界法務省特命大臣のアルクが運営本部長となって仕切ってるみたいだから、部下の私がとやかく言えることじゃないよね。
「そういえば、この前友達に聞いて驚いたんですけど。私の公式アカ何とかがあるとか?」
「ああ、そうだね。基本的に政府の高官には公式アカウントが設けられる事と決まっている。実際に運用する人、通称、中の人は別人だけど、極力本物と同じような口ぶりの人を採用しているから、実際にアズが発信したとしても違和感はないはずだよ? 支給されたスマートフォンでも確認できるはずだけど、見てないのかい?」
支給されたスマートフォンは確かに私のバッグの中に入っているけど。
ドラリンやガダ君が一緒に使うのなら、使ってもいいかなって思うんだけどね。
一人だけ先にっていうのは、どうにも気が引ける。
リズが言うには皆元気らしいけど、場所が場所だけに直接は会えていない。
ドラリンはまんま魔族だし、ガダ君来たらドドが喜々として戦っちゃう。
コッフちゃんとフーちゃんは冬眠かな? 魔物でも冬眠するかは不明だけど。
「そう、ですね。機械ってあまり慣れてなくて」
「初々しくていいね、人気が出るのも分かる気がするよ」
「だからって、手を出したりしないで下さいね? またカナディに殺されますよ?」
「それは頭の天辺で理解してる。自慢じゃないが、魔物や魔族に殺された回数よりも、カナディに殺された回数の方が多いくらいだからね」
「それ、本当に自慢じゃないですから」
「だと思う、でも、事実だからしょうがない」
はっはっはと、乾いた笑いを口にしながら、アルクは執務室を後にする。
多分この後もあの館に戻り、カナディの相手をしないといけないんだろうね。
でもまぁ、ご愁傷様としか言えないかな。
浮気とか最低な行為だし、むしろカナディ頑張れって、その点に関しては思う。
「それにしても、十二月三十一日か」
この世界にきて、年の瀬という概念を初めて知った。
一年が三百六十五日あって、十二月三十一日の夜、つまりは一月一日を迎えるその日だけは、世界中でお祝いするのだとか。
「ドラリンたちと新年のお祝いとか、したかったな」
あの城はもう無くなっちゃったみたいだけど、私の心の中には今でもあり続けるんだ。
温かな日差しに、沢山の笑顔と楽しいであふれていた、私の憩いの場。
今では大魔導士ドドにより解体され、人族の土地へと変わってしまったあの場所。
この国では、土地は基本的に国が管理し、購入して初めて個人の土地になるのだとか。
私が今の仕事で稼いだお金があれば、買い戻せるかもとは聞かされているけど。
「…………やめた、本番に備えて、魔力を少しでも蓄えないとね」
最初で最後の晴れ舞台なんだ。
きっとドラリン達も見てくれている。
リズの期待にも応えないとだし。
もう、失敗する訳にはいかない。
沢山の失敗を重ねてしまった私だけど、この仕事だけは、絶対に成功させないと。
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『さぁ、ついに空に浮かぶ黒い雲、通称『魔』を除去する日がやってきました。今や世界中が注目している異世界法務省が魔物局局長、魔王アズモンデオ。見た目は白髪の美少女、だけど彼女の頭には角がある。今宵は一体どんな方法で『魔』を除去するのでしょうか!? 何千何万、いや、何億という人達が彼女に注目しています。提供は――――』
T都都庁前に設けられた特設会場、ライトアップされたその場所を取り囲むように何台ものテレビカメラや機材が並べられ、既に放送を開始したアナウンサーたちの軽妙なトークがあちらこちらから聞こえてきている。
近くにはアイドル達が歌い踊っていたりと、年末年始を祝う傍らでそれ目当ての観客もおり、現場は賑やかの一言だ。屋台で販売している光のブレスレットを手にする若者や、飲み食いしながら階段に座り込む人たち、皆が皆、魔王アズモンデオが行う世紀のパノラマショーに数多の期待をのせて、見守り続ける。
『まもなく、魔王アズモンデオ様のご登場になります。皆さま、盛大な拍手でお迎え下さい!』
一体、誰が何のために祝うのか。
この『魔』が除去された後、この世界がどうなるのか。
誰も未来なんて分からないままに、歌い踊り喜び続ける。
それはアズが散々口にしていた「よく分からないモノをよく分からないままに使う」この言葉をまさに体現しているかのようであった。
そんな事は露とも知らず、会場のボルテージは一気に最高潮へと達する。
もはや国を挙げてのアイドルだ、白髪に黒い二本の角、冬だというのにへそを出した薄着の美少女、大胆にも露出したお腹はとても細く引き締まり、ミニスカートから覗く太ももは雪よりも白く、綺羅星よりも眩しい光沢を見せる足を包むブーツは相反する漆黒。
誰が見ても可愛らしい青い宝石の様な瞳は、誰の視線をも釘付けにしてしまう。
煌びやかな衣装に身を包んだアズが登壇すると、周辺から一斉に掛け声があがったのだ。
「うおおおおおおおおおおおおぉ! アズちゃあああああぁん!」
「魔王様ー! がんばってー!」
「超可愛いー! きゃー! アズ様ー!」
「わあああああああああぁ! アズーーー! 好きだーーーー!」
熱狂、まさにその一言がアズを包み込むと、彼女は辺りを見回してこう呟いた。
「うわ、こわ」と。




