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――空に浮かぶ『魔』を制御する方法、それは私が極大魔法を使用する際のエネルギーとして代用するという事です。神聖魔法使いのカナディ・リリィ、同じ魔法使いであるドド=ディゴールが『魔』を利用できないのに、私がなぜ『魔』を使えるか。それは私の肉体に答えがあるのだと、私は考えます。私の肉体は呪術転生による仮初のものになります。元々は甲殻族の肉体でしたが、その肉体は勇者アルクの一撃により粉砕され、木っ端みじんに吹き飛びました。今の私の肉体は、アンデッド族のアンちゃんが事前に用意してくれた肉体になります。恐らく、人族との闘いで敗北したオーガ族の娘の死体を、私の魂の受け皿として利用したのでしょう。結果、私はこの世界にて転生する事が出来ましたが、魂の定着という点については非常に不安定な状態となってしまいました。自身の魂でさえ安定させることが出来ずに、一部外へと流出してしまったほどです。しかし、その不安定さこそが『魔』からすると格好の餌食とも呼べる状態なのだと推測されます。事実、T県鳥獣研究所にて行ったドラグル族の蘇生魔法、転送魔法の際には、『魔』は私の呼びかけに快く応じ、そして私の中に吸い込まれ、魔力として放出されていったのです。しかし、その『魔』は私の身体にもとより存在していた魔力を根こそぎ放出させ、転送魔法が終了した後も『魔』だけが肉体に残ろうとしておりました。思えば、あれは『魔』が私の肉体を奪おうとしたのかもしれません。幸いなことに二時間程度の昏睡状態を経て、私は無事元の状態に戻ることが出来ました。これらから推測するに、『魔』の正体は人の怒りや憎しみ、悲しみといった負の感情であると断定できます。私といった媒体を利用し、彼らは自分たちの願いを叶えようとしているのだと思われます。その願いは様々であり、私の肉体を欲するのか、それとも世界を滅ぼしたいのか。その目的は定かではありませんが、一点確実に言えることがございます。それは、この世界に魔物を転送しているという事実から考えられる通り、『魔』は、この世界の人族にとっての脅威であることは間違いありません。私がこれら『魔』の全てを極大魔法で放出し、これ以上この世界に魔物、魔族が発生する事が抑えられれば、勇者アルクの異世界法務省特命大臣としての役目も、無事全うする事が出来るものと、私は考えます――
ものすごく長ったらしい文章だったけど、こんなもの私が言えるはずもなく。
勇者アルクが事前に用意していたらしい書類に書いてあった内容が、これだったという訳で。
「なにそれ、結局面談に行ったのにアズは何も喋れなかったわけ?」
「だって……國起総理大臣って超怖いんだもん」
面談から更に二週間後。
異世界法務省の特別談話室にて、遊びに来てくれたリズと二人で話し込む。
周囲には誰もいないし、久しぶりのリズに会えて、私も嬉しいの一言だ。
既に十一月になり、リズの服装は可愛らしい緑色のセーターに、厚手のスカート。
ブーツも口がもこもこしたもので、本当に人族の街に溶け込んでる感じが凄い。
「それでも、異世界法務省魔物局局長って事になってるんでしょ? 大したものよね」
「今回の件が終わったら、即で辞任させられそうだけどね」
「それでも、だよ。おかげでドラリンやフーちゃんたちも、大魔導士ドドに襲われないで済んでるみたいだしね。あの日一緒に見学会に参加して本当に良かったよね」
そうかなぁ? 私は結構酷い目にあった気がするけど?
リズは笑みを浮かべながら缶コーヒーを口に運んでるし、別に突っ込まないけど。
「それで?」
「ん?」
「極大魔法って、何を使うつもりなの?」
「私が使える魔法なんて、リズは全部知ってるでしょ」
「だから聞いてるの。一番魔力消費が多いのっていうと魔力転送だけどさ、そんなに転送させる物ってあったりする? T県の時だってドラリンを転送させても全然減ってなかったんだよ?」
さすがはリズだ、元々私だっただけの事はある。
彼女の言葉通り、ドラリンの魔力転送を行っても、『魔』は全く減っていなかった。
いや、一時的に減少はしたかもしれない、けど直ぐに元に戻ってしまったんだ。
そして、このT都の空にある『魔』は、その時の何倍もドス黒く、広範囲に広がっている。
「あるじゃない、転送させないといけないものが」
「え? そんなのある?」
「あるよ……じゃあ、答えは『魔』を使う当日って事にしておこうかな」
同じ私のはずなのに答えられないんだね。
それはつまり、私から離れたリズという魂が、アズじゃなくなったという事だ。
千祢里の中からいつかは出ていかないといけない。
でも、その時にはリズの肉体を用意してからの方が絶対にいい。
私を蘇生した時のように、呪術を使える存在を転送させないとね。
「なによ、協力できるかもしれないんだから、秘密になんかしないの」
「えへへー、ダメだよ、サプライズはとっておきだからね」
「意味分かんないし……でも、その日が来るのなら、楽しみにしてようかな」
「うん、楽しみにしておいて」
「分かった。そういえば、貴女の人気凄いんだよ? 知ってた?」
「ええー? なにそれ?」
「ほら、SNSで名前とか公表されたでしょ? その日の内にファンクラブとか出来たんだからね? ほら、ファンアートとかいっぱいだし。アズの公式アカウントとかフォロワー数一千万人とか超えてるんだから。あ、写真とか撮ってあげたらバズるかな? ねぇ、私一回バズってみたいんだけど、アズと写真撮ってもいい? それにね、――――――」
私は、貴方達を守りたい。
だから後悔とかは、全然ないんだからね。
私の為に命を落としてくれた、魔物のみんなの為にも。
私は、責任を取らなきゃいけないんだ。




