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人間不信のマオウ様、世界を救う  作者: 書峰颯
With love and happiness
34/53

 まもなく閉館する談話室で、私は自分の正体を魔族の子へと明かした。


 少しだけ恥ずかしいかも。

 前の世界の私を知る魔族って、今までいなかったもんね。


 目深にかぶったパーカーから青い髪が見え隠れしてる、瞳も青いし、何の種族だろ?

 オーガ族だとしても角がないし、バッドノイズ族は昼間活動しないはずだし。 

 でも、私の為にアルクと戦うなんて、ちょっと嬉しいかも。

 上目遣いでじーっと見ていると、男はふんぞりかえって腕を組み、口をへの字に曲げた。

 

「そんなちんちくりんな人族の女が、アズモンデオ様の訳がないだろうが」

「ち、ちんちくりん?」

「これでも魔王軍の末席にいたんだ、開戦前の演説の時にアズモンデオ様のお姿を拝見した事はある。(オス)らしい甲殻族特有の硬い殻に守られた全身に、漆黒の闇の様な瞳、発言する全てが胸に突き刺さったあのお方を貴様とでは、比べるまでもない」


 えー、君いたっけ? ごめん、全く記憶にないや。

 リズを見るも「さぁ?」って顔してるし。


「あの、そもそも私、当時から(メス)なんですが」

「まだ言い張るつもりか? 大体貴様は魔族かどうかも怪しいだろうが」

「角あるよほら、この角、そもそもアンタは何族なのさ?」

「角? お前、俺と同じオーガ族なのか?」


 あ、オーガ族なんだ。

 え? でも特徴である角がないよ?


「俺の角は後ろに生えているんだ。見ろ」


 被っていたフードを取ると、端正な顔立ちの美男子がまぁ飛び出してきたじゃないの。 

 別に惚れたりなんかしないけどね、私はどちらかと言うと蟹顔の方が好きだし。

 たれ目で角ばった感じの輪郭に、青い髪に青い瞳、まぁまぁな感じかな。


 後ろに回って見てみると、確かに角があるね。

 後頭部の左右に下を向いた感じの可愛いのが二本。

 それを見たリズがケラケラと笑い始めた。


「ぷっ、なにこの可愛いの」

「な、おい貴様、俺の角を侮辱したなッ!」

「ええー? だって、こんな可愛いんじゃオーガ族言われても信じられないし」

「貴様……なら見せてやろうか、この建物を更地にすることぐらい俺にだってッッ!!」

「はいストーップ、別にそんな事しなくてもいいし。リズも笑わないの、失礼だよ?」


 魔力束縛をあまり多用させないで欲しいな。

 というかリズだって出来るんだから、リズもしてくれればいいのに。


「私? 私が使っちゃうと純粋に命削ることになるからね」

「あ、そっか。というか、さっきから全然話し進んでないから。君、名前は?」

「ふっ! ざ、けっ! っるな!」


 動けないのに全身に力を入れちゃって。

 物凄い形相で睨みつけてくるね。

 確かこういう時って、こうしてあげればオーガ族は落ち着くんだよね。


「はいはーい、よしよし」

「な、お前」

「いい子いい子ねー、落ち着いて話しようねー」


 動けないオーガ族さんを抱き締めて、頭イイ子イイ子してあげる。

 甲殻族だった時にも怒り狂うオーガ族がいたけど、こうしてあげると静かになったんだよね。

 人族みたいな身体になっちゃったけど、多分この子にも通用するでしょ? 

 すぐに額の血管は消えたし、血走った眼は澄んだ青に戻ってるし……なんか頬は赤いけど。


「お前っ、……そういう事かよ」

「どういう事か知らないけど、名前は?」

「俺の名前はガダ、お前は?」

「だから私はアズモンデオだって。こっちはリズって呼んでるけど、実際にはこの子もアズモンデオだからね? あ、でも人族の前じゃ私をアズって呼んでね。じゃないと殺されちゃうから」


 ガダ君か、オーガ族の名前とか初めて聞いたかも。

 いっつも種族名で呼んでたからな、反省しないと。


「なんだか、よく分からないな。本物かどうかは知らんが、貴様の名がアズモンデオなら、そう呼ばさせて頂くとしよう。ではアズ、交尾はいつしようか?」


 ……………………ん? 今コイツなんて言った?


「俺は今すぐにでも出来るが、アズの方はまだ発情していない感じか?」

「は、発情? 今すぐにって……ちょ、ちょと待って」


 え、なんで、私の手を握り締めるのですか。

 あえ? 魔力束縛かけてなかったっけ? 

 ひぃ、なにその下半身、どうなったらそんなに突っ張れるの。


「しない、交尾なんてしない」

「なぜだ? オーガ族は雌雄のどちらかが発情次第、交尾するのが基本だろう?」

「しないし、そんなの知らないし」

「そうか、アズは初物か。大丈夫だ、俺は初物の相手もしたことあるからな」


 なにが大丈夫なのか知らんけど。

 は? オーガ族って確かに勝手に増えていくけど、そんなんなの?

 マジで動物じゃん、野獣じゃん、え、そんなのに転生したの私?


「ちょっとリズ、笑ってないで助けてよ」

「あっは、あははははは! ひー! むり、だって私、アンデッド族だから! あはははは!」


 リズめ、椅子に座ったまま腹抱えて、足をバタバタさせながら爆笑してるけど。

 こ……こっちはそれどころじゃないんだけど!?

 さっきから魔力束縛も発動させてるのに、なんか普通に動いてるし!?


「ああ、無駄だぞ? オーガ族が発情すると魔法無効になるからな」

「だから! そんなの知らないし! 初めてばっかの情報やめて!」

「さ、そこのトイレでいいか。実はさっきの抱擁でもう、俺の性欲が凄くてな」

「無理だから! 腕掴むな離せ! おいちょっとマジ⁉ 嘘でしょ⁉」


 さすがはオーガ族、力ハンパねー! え、このままじゃ犯されるんですけど!?

 た、確かオーガ族の交尾って、三日三晩続くってあったよね?

 え、この肉体で三日三晩!? 前の甲殻族の時だってしたこと無かったのに!?


「まぁそう抵抗するな。お互い気持ち良くなろうぜ」

「いーやーだー! 離せバカ! 私の話聞けよ本当にもう!」

 

 必死の抵抗むなしく、身体ごと持ち上げられて、荷物搬送の様にトイレへ。

 このままじゃ殺される、こうなったらしょうがない、このバカを殺すしか。

  

「あのー! ここに長月アズさんという方はいらっしゃいませんかー!?」


 突如談話室に響き渡る人族の女の声。

 長月アズは、見学会に参加するために使った私の偽名だ。

 しかも呼んでるのはさっきの政務官の女じゃないか。


「おい、あれは私を呼んでいるんだ。行かなかったら大変な事になるぞ」

「なに? そうなのか……しょうがない、アズも残念だろうが、一旦保留にするか」

 

 残念じゃないですぅー! もう二度とお前に近寄らないですぅー!

 はぁ良かった、しかしバカ力だね、腕とか跡が残っちゃったじゃん。  

 

「あの、私が長月アズですけど」

「ああ、良かった! 見学会の方々と一緒じゃなかったから、どこに行ったのかと思っちゃいました。あの、アルク大臣が話の続きが出来ればとの事なのですが、長月様のお時間は大丈夫でしょうか? 問題ないようなら、このままお部屋までご案内させて頂きますが」


 へ? アルク大臣が私と? な、なな、何の話でしょうか?

 話を聞いてたであろう近くに来たリズを見ると、彼女はこくり頷く。 


「行った方が良いだろうね」

「そ、そそ、そう?」

「それとも、このまま残ってあのバカの相手する?」


 それって選択肢にすらならないから……しょうがない、怖いけど、行くか。

 私が戻るまでにリズがあのバカを説得してますように。



「はぁ、さっぱりした。じゃあ、君もシャワー浴びてきてなよ」


 目の前にはバスローブに身を包んだアルク大臣の姿が。

 私はちょこんと無駄に大きいベッドに腰掛ける。

 ……ん? どうしてこうなった?

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