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人間不信のマオウ様、世界を救う  作者: 書峰颯
With love and happiness
31/53

「お前たちがこの世界融合の原因だろうがー!」

「早く魔物を駆逐しろよ無能勇者ー!」

「この様な世界に誰がしたか! それはこの異世界法務省の特命担当大臣である、上尾アルクにある! 我らは断固として戦う! 彼には責任と、それを行うだけの力があるのだ! 一日でも早く世界融合解除の為に、全力で我々も戦い続けるぞー!」

「「「「「おー!」」」」」


 千祢里の服の裾をつまんで、群衆を遠めに眺める。

 なにあれ? てっきり異世界の勇者なんだから、丁重に扱われてると思ってたのに。

 

「民主主義だから、責任の一端は勇者アルクにあるって、皆も気づいてるのよ」

「へぇ……そんなものなんだね。ロードメリアだったら、王様の一喝で終わりだけど」

「君主制じゃないからね、総理大臣だからって、なんでも出来る訳じゃないのよ」


 T都までやってきた私達を出迎えたもの、それは勇者アルクへの糾弾の数々だった。

 この国のあちこちで魔物による被害が発生し、それは留まることを知らないらしい。

 船がクラーケンに捕まった、飛行機がワイバーンに破壊された、学校に幽霊が出た。

 被害は大小様々な様子だけど、どれもこれもが異世界からの魔物によるもの。

 

「こんな状態じゃ、多分勇者アルクは表に出てこないでしょうね」

「……そ、そうなんだ、じゃ、じゃあ、どうする? 帰る?」

「帰ったらリズさんに怒られるでしょ? 何か会う方法がないか探してみるしかないよ」


 帰りたい、だってもしここで魔王アズモンデオってバレたら、アイツ等全員私を殺しにかかってくるもん。勇者アルクのせいで私の名前は全世界に知れ渡っちゃったし、調べたら考察してる動画とかサイトとかもあって、そこで私はラスボスって呼ばれてるみたいだけど。


 ラスボスどころか雑魚敵なのに。

 沢山の人族の大声を聴いていると、段々と、足の震えが止まらなくなってきちゃった。


「こ、こっここっ、怖い、です」

「じゃあ、いったん人が少ない所に行こうか。漫画喫茶とかでいいかな」

「は、は、はい、おね、おね、お願い、します」


 周囲の人たちが「その子大丈夫?」って声を掛けてくるけど、千祢里がやんわりとお断りをいれてくれた。千祢里がいてくれて本当に良かった、ドラリンがお盆について調べてくれなかったら出会う事すら出来なかったんだよね。ドラリン、感謝。



「ドリンク、何飲む?」

「え、えっと、何でも、いいです」

「もう、ここは静かなんだから、普段通りで大丈夫だよ」

「……です」


 確かに、ここは全然人がいない。

 気配は凄いするけど、静かにしてる感じだ。


「二十六番だから、ここだね」

「ここ……あ、パソコンある」

「そ、自由に使っていいんだよ。後はご飯とかもここで済ませちゃおうか」

「う、うん、そうする」


 凄いな、漫画喫茶。

 人族が二人入れるスペースにマットが敷いてあって、そこで横になる事も出来る。

 千祢里は大きいから出来ないみたいだけど、私は足を延ばして横になる事が出来るよ。

 本も図書館並みにあるし、パソコンも自由、ご飯もあって飲み物飲み放題。

 こんな施設があるんだとしたら、もっと早く使いたかったな。


「あ、でもここ、お金かかるから」

「……やっぱり、そうなんだ」

「ちなみにアズさん、お金とかって」

「ないよ、一円もない。全部ドラリンが山で材料採ってきて、それを食べてるから」

「そっか、じゃあ今度一緒にバイトでもしてみる? 昔働いてた場所でなら紹介出来るよ?」


 お断りします。別にお金なくても生きていけますんで。

 漫画喫茶は確かに魅力的だけどね。

 それにしても本当に静かだ、ゆったり出来て眠くなりそう。


「あ、アズさん、これ見て、これ」

「ふぁ……ぁ、ん、どれどれ……えっと、異世界法務省、見学会?」

「これ申し込んでみる? ほら、上尾アルク特命担当大臣との面談会とかもあるみたいだよ?」


 敵を知らないと勝てない、だもんね。

 この人族が私達の話を少しでも聞いてくれるかどうか。

 でも、魔導士に聖女、ましてや勇者がいるのに、私達が行って大丈夫かな。


「……リズはなんて言ってる?」

「んと、参加すべきだって言ってる」 

「見学会の時は、リズは出てきてくれるの?」

「出れたら出る、だって」


 それ絶対に出てこない奴じゃん。結局私と千祢里の二人だけかよ。

 でも、皆を守るためには、動くしかないし。


 見たらこの見学会、普段はこんなに頻繁に開催してないみたいだ。

 新設されたからって特別に回数を増やして実施してるとか?

 

 さっきの糾弾の人族も参加してるんだろうし、私たちが紛れ込んでても大丈夫な感じかなぁ。

 だとしたら、遠巻きに見て、それで帰ってくればいいか。

 うん、私にしては頑張った方よね、うん。


「よし、じゃあ参加の方向で、たのます」

「ふふっ、緊張してるアズさんも可愛い。あ、今日の午後四時からで大丈夫みたい。じゃあそれまでゆっくりと休もっか。アズさん、何か食べます? アイスなら無制限で食べ放題みたいですけど、お腹壊しちゃったらダメですよ?」



 そして午後四時、異世界法務省の赤レンガで出来た建物の前に私達は向かう事に。

 さっき見かけた人達もいるし、他にも『魔族に人権を!』なんて掲げてる人族もいる。

  

「良かった、これなら私達が魔族ってバレなそうですね」

「うん、でも、他の可能性が出てきちゃたよ」


 集まった人族の数、約三十人。

 いるね、この中に。


「気を付けてね千祢里、この中に魔族が隠れてるよ」

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