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「ご名答、多くを語る必要はなさそうね」
「え、いや、え、ええええええぇ⁉」
姿かたちは間違いなく千祢里だ、だけど感じる魔力は私と全く同じ。
「い、一体いつから⁉」
「魔力反魂が終わってからすぐ」
「すぐぅ⁉ すぐって、皆大泣きしてた時じゃないの⁉」
「うん、だから、その時は千祢里の中に潜って静かにしてた」
さ、さすがは私ね、冷静沈着な対応だわ。
え、でも、これってどうすればいいの?
あわあわしていると、千祢里の姿をした私が足を組んで、ため息を一つ。
「てっきりね、私と千祢里の肉体が入れ替わったのかと思ってたのよ。もしくは同居状態になっちゃって、私の肉体は空っぽの状態になっちゃってるのかなって。だから後で千祢里にお願いして、私の肉体をいったん引き上げて貰おうかな~なんて考えてたら、なんか普通に動いてるじゃない? それで気付いたのよね。ああ、これ私、分離してるなって」
「精神分離って……今まで聞いたことないけど」
「そうね、私も聞いた事がない」
当然だよね、同一人物なんだから。
むしろどちらかが知ってたら驚きだ。
「可能性があるとしたら、魔力反魂の時か」
「それしかないと思う。直前の実験凡例にドラリンとキィ君の失敗があったでしょ? あれで気付かないとダメだったのよね。更に付け加えるとしたら、千祢里の肉体が魔力に対しての反発が強かったという事実。これが原因で、流し込んで本来回収されるはずの部分まで取り込まれたのかなって、そう考えられない?」
「考えられるけど……でも、それだとしたら、どうにもならなくない?」
多分、相手も私なんだ、私が何を言いたいかなんて理解しているはず。
「そうね、私が無理して自分の身体に戻ったとしたら、魔族化した千祢里の肉体から魔力が全部抜け出ちゃって、即死しちゃうでしょうね」
百点満点の回答だ、さすが私……って、何の解決にもなってないじゃない。
このままでいいはずがない、一つの身体に二つの精神なんて、あっちゃいけないんだ。
放置していたら一体いつどちらかが消滅するか、もしくは両者共に倒れるか。
「とりあえず、今の今で死んだりする事はないと思う。ギリ共存生活も出来てるしね」
「でも、なんとかしないと。私だって精神が抜けちゃってる状態なんだから、いずれ不味い事になっちゃうでしょ? ただでさえ転生呪術でよく分からない肉体になってるのに、そこに加えて精神半分とか、一体どうなるのか想像もつかないよ」
完全に失敗してる、こんなケース聞いたことも見たこともない。
頭を抱えてどうしようか必死になって考えてるけど……ダメだ、何も思い浮かばない。
「何も思い浮かばないでしょ? 私もそう。貴女よりも二週間ほど先にこの状態になって調べても、何も解決策が見いだせないの。だから、私考えた」
「……考えたって、何を」
私の手をぎゅっと掴んで、キラキラした瞳で私を見る。
「二人で解決策を見つけ出そう。一人じゃダメでも、二人なら何とかなるかもしれないから」
一瞬だけ、千祢里が私に見えた。
どっちが大変かなんて、考えるまでもないのに。
強いな、私。
「そう、だね、なんて言ったって私だし」
「そうそう、頑張れ私!」
私って、こんなにポジティブだったっけ?
二週間か、多分、最初はこんなんじゃ無かったんだろうな。
悩んで悩んで、しかも人族の目に晒されながらも恐怖に必死に耐えて。
……頑張ろう、早く私が一つに戻れるように。
「あー、でも、私がそっちの身体に戻ったら、多分記憶共有される事になるんだろうなぁ」
「そうかもしれないけど……え、ちなみに普段はどんな感じなの?」
「普段は隠れてるんだけど、強制的に表に出ちゃう時があるんだよね」
「強制的にって、それヤバイじゃん。どういう時に表に出されちゃうの?」
強制的に表に出されるという事は、千祢里の精神が一瞬で裏に行ってしまうという事だ。
精神表裏が頻繁に行われるのも、多分、宜しくないと思う。
憶測の範疇を出ないけど、ひっきりなしに入れ替わってたら混ざる可能性だってあるし。
「紋様を強く押されると、表に出ちゃうのよね」
「あ、お腹の。良かった、それならあまり表に出ないよね」
あれ? なんか、どんよりした顔になったぞ?
俯いた千祢里は、はぁーって聞こえるぐらい大袈裟な溜息をついた。
「真喜納って覚えてる?」
「覚えてるけど、人族の男だよね。結構ガタイが良くて、怖い部類の人族だったけど」
「アレがね、千祢里が変な声を出すからってんで、喜んで押すのよ」
「え?」
「しかもさっきので分かってると思うけど、あそこ押されたら千祢里も動けなくなっちゃうの。アイツ多分ヤバイよ、そんな風になってる千祢里が喜んでると思ってるんだもん。こっちとしたら最悪よ? 途中で入れ替わってるんだから、死ぬかと思ったからね?」
うわぁ……そっち行かなくて良かった。
「ちなみに、さ」
「うん」
「入れ替わった後、どうしてるの?」
だって、こんなのバレたら真喜納だって黙ってないと思うし。
それがこの二週間なかったって事は、千祢里の中の私は千祢里として振舞ったということ。
両手の人差し指をツンツンしながら返事を待っていると、千祢里が頬杖をついて口の端を持ち上げる。
「知りたい?」
「……あんまり、知りたくないかも」
「でしょ? 多分想像通りよ。でもご愁傷様、一つに戻ったら記憶共有されちゃうからね」
え、あ、そうだよね、その可能性めっちゃ高いよね。
ということは、私、元に戻ったら真喜納のドアップを思い出さないといけないってこと?
それにあの言い方……まさか。
「ね、ねぇ、まさか交尾とか、してないよね?」
「……秘密にしておいてあげる」
「え、だって、退院して二週間だよ!?」
「ヒント、真喜納は千祢里が動けなくなって、喜ぶような男です」
うわああああああああああああああああああああぁ!!!!!!!
戻りたくなあああああああああああぁいッッッ!!!!!




