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人間不信のマオウ様、世界を救う  作者: 書峰颯
Diseases that lead to death
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 調べれば調べるほど、この世界のお盆についての信ぴょう性が薄まってきた。

 これ、単なる迷信なんじゃないの? なによキュウリの馬に乗ってやってくるって。

 反魂学を舐めないで欲しいわね、死者蘇生はそんなに簡単じゃないのよ。


「ドラリンのバーカ!」

「な、急にどうなされましたか、アズモンデオ様」

「お盆とか全然死者蘇生じゃないじゃん! めちゃくちゃ恥かいたわよ!」


 怖かったし、今思えば恥ずかしいし。

 でも、分かったこともいくつかある。


 この世界、特にこの日本って国は、死者の肉体を全て火葬してしまうらしい。

 その温度は八百度から千二百度……その数字がどれぐらいかは分からないけど、本に書いてあった絵を見る限りでは、小骨が炭になるぐらいには燃やされるのだとか。


 私の使える死者蘇生……魔力反魂は、魂を元の肉体に戻すことしか出来ない。

 火葬により肉のほぼ全てを失ってしまっては、魔力反魂を使っても意味を成さないだろう。

 戻るべき肉体がないままに引き戻されたその魂は、無限に現世を彷徨うこととなる。


 神聖魔法を使った回復も、死者の肉体には作用しない事が多い。

 あくまで回復速度を加速度的にしているのであって、無から有を生んでいる訳ではない。

 既に活動を停止した肉体に回復速度を促した所で、どうにかなるものでもないんだ。


 最後に、残った骨だけでのスケルトン化という方法もあるけど、それもこの国じゃ不可だ。

 炭になってしまった骨を復元することが出来ず、中途半端なモノが生まれて終わり。


『私がアンデッド化して嬉しいかですか? もちろん、嬉しいに決まってます。人柱として埋められてしまった私を掘り起こして、アズモンデオ様のペットにしてくれた。これは、他から見たらダメな事かもしれませんが、死の恐怖から逃げられた私からすると、喜びでしかありません。感謝しております、アズモンデオ様。私アンは、貴女に最後まで忠誠を誓います』 


 私に転生呪術をしてくれたアンちゃん。

 あの子はどうなったのかな。

 アンデッド化といえど、無敵ではないんだ。


 神聖魔法のターンアンデッドで躯に戻されることもあるし、そもそもアンデッドの活動源は魔力、魔界なら空気中の魔素が豊富だから尽きることはないけど、この世界にアンちゃんまで来てたとすると、彼女はもう。


「アンちゃんに会いたいな……」


 でも、それが出来ないのは、私でも理解してる。

 ペット一人一人に自我があるように、アンデッドを作った所でアンちゃんが蘇る訳じゃない。 

 でも、アンデッド化したあの子がいたから、今の私がいるんだ。

 一人でもアンデッド族を増やしてあげる、それがアンちゃんに対する報いなのだとしたら。


「ドラリン」

「はっ」

「私、もう一回人族の街に出かけてくる」

「かしこまりました、でしたら私も御供いたしましょうか?」

「大丈夫、ドラリンいたら、話しややこしくなりそうだし」


 全身真緑の人族なんていないしね、ましてやドラリンの背中には翼があるんだから。

 街を歩いているだけで一発アウト、昔のキィ君みたいに問答無用で攻撃されちゃうよ。

 

――速報です、京都に出現した鬼が五重塔を破壊、嵐山方面へと逃走した模様です。

――昨今発生している魔物による被害は、これで二十を超えます。

――異世界からの来訪者、彼らの目的は一体なんなのでしょうか。

――発見次第即通報を、相手は人を単なる獲物としか認識しない化け物なんです。


 街って凄いね、移動してるだけで数多の情報が耳に入ってくる。

 でも、そのどれもが私にとっては眉根を寄せてしまうものばかり。

 全部を助けてあげる事はできない、でも、今もどこかで助けを求めている。

 この子たちが悲鳴を上げれば上げるほど、私たちの立場は危うくなる一方だ。

 どうにかしないと……でも、どうすればいいいんだろう。



「お、やってきたか白髪女子高生」  


 うわ、本当にいるんだこの男。

 なんで私の呼び名が白髪女子高生なのだろう? そもそも私、女子高生じゃないけど。

 前に図書館の受付にいる沙織さんが言ってたから気になって調べたけど、全然違うし。


「それで? 御盆と死者蘇生について、何か分かった?」

「いっいえ、別に」

「まぁ、そうだろうな。でも前にも言った通り、勉強する姿勢が大事だから。他にも何か調べものしたいのなら、本を借りてくるけど、どうする?」


 真喜納って人族の男、また医学について勉強してるみたい。

 目に凄いクマまで作って、必死になって千祢里って人族の女を救いたいんだね。

 でも、それだけ愛していて、愛されているということだ。

 死とはそれまでの全てを失ってしまうもの。

 耐え難い恐怖は、本人だけじゃなく、周りをも巻き込む。


「き、きき、今日は、千祢っ里、さんに、会いたっと、思い、ました」

「千祢里に?」


 不機嫌な顔をした真喜納を前にし、両手にきゅっと力を込めて、無言のまま頷く。 

 

「そうだな……あんな風に泣いてたら心配だよな。俺もちょうど千祢里の顔が見たかった所だから、一緒に行くよ」


 あの病院って建物までの道のりは頭の中に入っているけど、一人だと問題ありそうだし。

 この真喜納って男と一緒の方が、あの千祢里って子も私を受け入れやすいと思う。

 広げていた本をパタンと閉じて、真喜納は立ち上がるのだけど。


「……っとと」


 立ち上がった拍子に倒れそうになるのを、咄嗟に支える。

 

「すまん、助かった」

「ダイジョブ、ですか」

「大丈夫大丈夫……はは、実はさ、最近寝るのが怖くてな。起きたら千祢里がもういないんじゃないかって思うと、眠れなくてな」 

 

 いなくなる恐怖は、魔族も人族も変わらないんだ。

 その恐怖から逃げられる術があると知った時、この男はどんな顔をするのだろう?

 例えその人物が、人族ではない魔族になったとしても、受け入れられるものなのだろうか?


 もしかしたら、大変なことになるのかもしれない。

 でも、動くべきだと私は思う。

 そうすることで、新しい道が開けるのだとしたら。

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