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「かしこまりましたッ! アズモンデオ様ああああああぁッ!」


 両手を大きく広げ、ドラリンは全身の毛を逆立てながら魔力をほとばらせる。

 大きく開けた口の前に魔力を集中させ、ブレスと共に一気に吐き出した。

 ドラゴニックブレイズをさらに圧縮した熱球、ドラゴニックバスターって命名しよう。

 

 ドラゴニックバスターの威力は凄まじく、あれ? こんな事まで出来るの? と、我が目を疑ってしまうほどだった。

 赤熱とした地面からは湯気があがり、はじけ飛んだ岩が辺り一帯の霜を溶かし始める。

 さらに注目すべきはその中心部、ぽっかりと空いた大穴は、私の想像を遥かに凌駕する大きさだった。


「アズモンデオ様、穴の中に向かいますか?」

「もちろん、氷の刃に気を付けてね」

「御意」


 ドラゴニックバスターによる熱が周囲の霜を綺麗に蒸発させたけど、雪原全部って訳じゃない。

 残る霜がすぐさま樹氷となり、穴を埋めながら私達を狙って攻撃を再開する。


 けど、その攻撃の一切が当たらない。


 ドラリンの飛行能力って本当にすごいね、私達めがけて飛んでくる氷の刃を上下左右、稲妻のように動きながら穴に向かって飛んでいくんだもん。たまに避けきれないのもあるけど、それは強靭な爪で砕いちゃう、凄い。

 

「意外と中は暖かいですね」

「外の寒気が中にまで浸透してないって事かな」


 そんなこんなで穴の中に到達した私達。

 大穴とも呼べるほどに深い、十メートルぐらいはあるかな。


 私達が侵入すると同時に、天井の穴は氷によって埋め尽くされた。

 ビル三階ぐらいはすっぽりと入る深さの穴は、光そのものを完全に遮っている。


 穴を塞いだのは氷なのに光を透過させないのか。

 そもそも、氷に似せた違う何かなのかも。


「恥ずかしいから、こっち見ないでね。…………炎尾」

 

 うぅ、寒い、お尻丸出しにしないと使えないのって、やっぱり不便かも。

 ぽうっと炎尾の火を木材に移して、照明代わりにしながら周囲を確認する。


 ふむ、岩肌が削られてる。爪痕を見るに、相当に太い爪だね。

 地面の中を掘り進みながら移動し、この場所に居付いた感じかな?


「アズモンデオ様」

「うん、分かってる。地上とは違って、魔力探知がビンビン反応してるからね」


 大地全体に広がっていた霜が、本体であるこの子の魔力を隠していたんだろうね。 

 暗闇の中に蠢く巨体、魔界にいた時にこんな個体見たことないよ。


 真っ白な毛並みをした魔物が、私達の方を見ながら前傾姿勢で鼻をヒクヒクとさせている。

 大きい身体だ、前傾姿勢であるにも関わらず、私の視線はやや上を向いてしまう。

 特徴としては、前足にある六本の黒くて長い爪かな。

 地面に当たりカチンカチン音を立て、穴掘りが上手ですよってアピールしてるみたいじゃないか。

 伸びた鼻は先っぽがまるでドリル、太くて筋肉質な後ろ足はそれのサポートかな? 

 天女の衣の様に氷の粒を体にまとわせ、それを自由自在に動かしている。

 なるほど、アレに魔力を蓄えさせて、地域を凍らせる程の魔法を発動させているって訳ね。  


土竜(モグラ)、でしょうか」

「多分ね、でも、この世界のじゃないね」


 こんなのがいたら、人族の文明があそこまで発展する訳がない。

 地下鉄や下水システム、その他諸々全部破壊されておしまいだ。


「とりあえず、種族は土竜って判明したから、モグタンって命名しよう」


 大体の考察が終了した辺りで、警戒態勢だったモグタンが強靭な後ろ足を蹴って、猛烈な速度で突進をかましてくる。

 鼻先のドリルが回転してるし、完全に私達を殺す気じゃん。


 でも、こっちにはドラリンがいるからね。

 腰に手を当て、ビシッと指差しして対象を定める。 


「ドラリン! ドラゴニックブレイズだ!」

「……え? あの、アズモンデオ様」

「なに、どしたの? 早くやっちゃってよ」

「私、魔力切れを発症しております」


 ……。


「ええええええええええええええええぇ!?」

「もう、眩暈がして、立っているのがやっとなのです」

「いやいやいや! えええええええぇ!?」


 モグタン、こっちの事なんておかまいなしに突進をかましてきた。  

 「ぐふぅ!」って言葉を残してドラリンがモグタンと一緒にどこかに消えちゃったけど。

 え、どこ行ったの!? 地面を掘るズゴゴゴゴって音だけが聞こえてくるんですけど!?


 ……あ、これ、多分マズイ奴だ!


 地面の中に巣食う魔物は結構な種類がいたけど、その大体が捕食する時に穴を利用する。

 対象の足元を掘りぬき穴にしてしまい、落下してきた生き物を捕食するんだ。

 つまり私達は穴に降りてきたんじゃない、モグタンに誘われて穴に来てしまったんだ!

 

浮遊(レビテンション)!』


 咄嗟に発動させて、自分の身体を空中へと逃がす。

 直後、足元の地面が割れ、モグタン自慢のドリルが顔を覗かせているじゃないの。


 あっぶなかったー、気付くのが遅かったら貫かれてたよ。

 あんなドリルじゃミンチだよ、ミンチ、アズちゃん挽肉になる所だった。


 とりあえず逃げたものの、どうすればいいんだろう? 甲殻族だった頃なら全部正面から受け止めて頭ナデナデしてただろうけど、今の身体でそんなことしたら単なる餌だ。


 早く何かしないと……と思っていたのだけど。

 モグタン、鼻をヒクヒクさせて、その場でじーっとしてる。

 

 あれ? もしかして、この子って目が見えないの?

 そっか、だからこんな暗闇を住処にしてたんだ。


 音で感知する感じかな? あとは、魔力を込めた霜に触れた生き物を感知する感じか。

 なら、霜もない音も立ててない今の私なら、しばらくは安全なんだろうけど。


 でも、あまり猶予はないね。

 なぜなら私の魔力がそろそろ尽きちゃいそうだから。

 ドラリンも助けないとだし、何か良い手はないかな。


①モグタンをペットにするだけの魔力注入。

②ドラリンを救出していったん退却する。

③私一人でモグタン撃破。


 うん、ムリだー!

 どれもこれも今の私じゃ出来ない!


 え、人族って凄くない!? アイツ等この肉体で私のペット全部倒してきたんでしょ⁉

 同じ事やれって言われても絶対に無理だって叫んじゃうよ! 今だって叫びたいし!

 

 どどどどど、どうしよう、このままじゃ私死ぬ⁉

 また死ぬほど痛い思いするの⁉ それだけは、それだけは絶対に嫌だ!


 考えろ、何か手段はあるはず。

 人族に出来て、私に出来ないはずがない。


 何か手はないか、何か。

 …………ん、もしかして?

 

 ちょっとだけ指をクイッと動かしてみる。

 ピクッと反応するアレ。


 はは、なんだ、そういうことなんだ。

 なら、いけるかも。

 ①②③、全部やってみちゃおうかなー!

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