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鬼が出るか、蛇が出るか(2)

 鬼が出るか、蛇が出るか。

 トムは酷く苦々しい顔をすると、リシューの港近くの倉庫で見た光景を教えてくれる。


 黒く血がこびりついた床や壁。

 どこか()えた匂いがして、辺りにはそこかしこと拷問器具が置かれていて、血なまぐさいことに慣れている海賊の若い奴らも、部屋の中に立ち入るのを躊躇する事態。


 そして、「そんな部屋の片隅でやせ細った子供たちや女性たちが数人、部屋の隅の暗がりにかたまって、怯えきった目でこちらを見てきた時の衝撃と言ったらなかった」と話した。


「・・・・・・あいつは悪魔だ。」


 早い段階で買い手がついて売られた者たちは「マシ」で、部屋に残されていた売れ残りの子供や女性たちは、全身、痣だらけで、背中には鞭を振るわれたのだろう、ケロイド状になった痕があちこちにあったという。

 目は虚ろで、口も利かず、まるで蝋人形のような感情がゴッソリと抜け落ちた表情。


 その話を耳にしただけで、ヴィットーリオはぶるりと身震いをした。


「なんだ、ビビったのか?」


 ジョーンズ少尉に耳打ちされる。


「・・・・・・び、ビビってない。ただ、人道に(もと)る奴だってことは分かった。子供や女性、老人は奥まったところに案内するよ。」


 と、呼んでいた馬車が到着したようで「ギルド長」と階下から声が掛かる。ヴィットーリオはジョーンズ少尉に「馬車が来たみたいだ」と話した。


「おお、助かるわあ。」

「ひとまず、表と裏と二台の馬車が来ている。二つともしばらく併走させた後、片方は目的地へ、もう片方は空馬車として囮にするのでいいか?」


 すると、エラは眉尻を下げて「他の人を巻き込むのは気が進まないのだけれど」と話す。ジョーンズ少尉は「ご安心なさいませ」と口の端を上げた。


「ギルド長が呼んだ馬車は、レジナルドの海兵隊員が御者に扮して持ってきます。」

「海兵隊員?」

「ええ、海での戦いは船を沈めるだけでなく、敵船に移乗したり、敵地に上陸したりして白兵戦をする場合もありますから、それ専用の特殊部隊がいるんです。」


 そうした者たちは、海軍ながら、ナイフや槍、銃、馬術の教練を受けている精鋭部隊なのだという。


「彼らは陸軍と同じようにゲリラ戦の訓練もしていますし、訳あってこのリシューに待機しております。広場にて有事が起これば、彼らが動きますよ。」


 自警団の避難誘導と並行して行えば、トムの言うような最悪の事態は防げるだろう。それにはエラだけでなく、ヴィットーリオも心からホッとした。


「じゃあ、ひとまず避難誘導をがっちりすればいいんだな?」

「ああ、そうだ。」

「判断は?」

「朝と夕。丘の上の本部と、港近くにいる母艦の旗を確認して欲しい。いくつか並んで旗があがるが、一番上の旗をみろ。」


 公国旗が上がれば勝利。

 青旗が上がれば待機。


「他にもあるのか?」

「ああ、黄色旗は救難。赤旗は交戦中。白旗は投降。」

「両方、白旗が上がった場合はどうしたらいい?」

「そいつは考えたくないな・・・・・・。」

「分かった、その時はひたすら息を殺して潜んでおく。」


 ジョーンズ少尉は「パニックを起こされないように、冷静に対処するように声掛けをして欲しい」と話した。


「今回の戦いは『勝つ』ことじゃない。」


 勝利条件は大公家内に残された人たちの解放と、ギルバートの戴冠の正当性を証明することだと話す。


「具体的にはどうするんだ?」


 と、エラが「そこはお祖父様の名前を最大限に使おうと思っているわ」と答えた。


「お祖父様の名前?」

「ええ、グニシアも、ノーランドも。動員されている兵士の多くは、借り入れ期の終わった農村部の人が多いはずだから、早く帰りたいはずよ。」

「農村部?」

「ええ、新たに兵を用意する暇なんてなかったでしょうしね。彼らは迷信深いし、神様を出されると弱いでしょうから。でも、その一方で早く国に戻って、来春に向けての仕込みをしなくてはならないとも思っているはずだわ。」


 収穫した種籾を選別して、発芽の良さそうな物を寄り分けたり、冬の間でも育つ蕪やクローバーの手入れをするなら、この時期から三月にかけて動いたりしなくてはならない。


「敵も短期決戦を考えているとは思うわ。一気に力で押さえつけてしもうと思っているはずよ。」

「では、難しいのではありませんか? 迷信深いんですよね?」

「ええ、とってもね。」


 だから、短期間で押さえ込むために、そっと噂話を流す。

 孫娘の身を脅かせば、エドガー=スペンサーが動き出すぞ、と――。


「はい? エドガー=スペンサーが動き出す? エドガー=スペンサーって、あの常勝将軍のスペンサー将軍ですか?」

「ええ、そのエドガー=スペンサーだと思うわ。私も、お祖父様がそこまで有名人とは知らなかったんだけど。エラルドでもお祖父様の名前は有効なんでしょう?」

「有効っていうか、本当にスペンサー将軍の孫娘?」

「ええ、正真正銘、エドガー=スペンサーは私の祖父よ。」


 えーっと、つまり、あれか?

 彼女の身が脅かされれば、スペンサー将軍が来るってことで?


「・・・・・・ちょっと待って。え? トムさん。もしかして、トムさんの本名はトム=エヴァンズ?」

「ああ。」

「え? 本物? う、うわぁッ?! 本当に本物のトム=エヴァンズなのかッ?!」


 ヴィットーリオは慌ててトムに握手を求めると、ブンブンと腕を上下させて「あなたの大ファンなんですぅぅぅ!!」と目を輝かせる。


「一騎当千、一個大隊を潰した『赤鬼のトム』に会えるだなんて。あ、ってことは。」


 ぐりんと音がする勢いで振り向くと、「あなたは、

斬撃の・・・・・・」と言い出すから、ホーキンスは被せるようにして首を横に振り「それ、フランの兄貴の方だから」と言いながら距離をとった。


「兄貴の方?」

「ああ、俺はホーキンス。ジョン=ホーキンスだ。」

「あ、荒くれ者の・・・・・・。」


 と、あからさまにヴィットーリオの声のトーンが落ちるから、トムは「ブハッ」と吹き出して笑った。ホーキンスは引き攣った表情で「なんだよ、兄貴の方じゃなくて悪かったな」と悪態を吐く。


「思った通りお祖父様の名前は思った以上の威力ね。」


 エラはふふっと楽しそうに笑う。ヴィットーリオはエラをじっと見つめた。

 グニシアの国王陛下とおなじ、ストロベリーブロンドの髪と、エメラルド色の瞳が印象的なうら若い女性。


「本当、親の七光りならぬ、祖父の七光りだな。」


 サムの反応にツンと澄まし顔になったものの、直ぐに悪戯めいた笑みを浮かべて、「何とでもおっしゃい。使えるものは使うわよ?」と楽しそうに話す。


「存じております。本当、お嬢は思いもよらないことを考えつきますよねぇ。もう少しお淑やかにしないと、貴族令嬢に見えないですよ?」

「良いの。そこはもう諦めてるから。」


 コロコロと表情を変える彼女は、単にギルバートの知り合いではないだろう。


(おかしいと思ったんだ。『素性は聞くな』、『自分の代理人だと思って接しろ』だなんて。)


 本当の「ギルドマスター」であるはずのギルバートが、腹心のジョーンズ少尉を護衛に付けたことに、違和感を感じていたのに。


(スペンサー将軍の孫娘を、ギルが情婦のように扱うわけもない。)


 しかも、祖父のスペンサー将軍も『赤鬼のトム』や『荒くれ者のホーキンス』を傍に配する程のご令嬢だ。


(あー、つまり、なんだ。)


 ジョーンズ少尉をちらりと見て確認すれば、ニヤニヤと笑っている。これはもう間違えようがないということだろう。自ずと答えは一つに集約されていく。


「ギルド長。あなたの力も貸してほしいの。」


 ニコリとするエラに、ヴィットーリオはさああっと青褪める。


 彼女は単なる女商人じゃない。

 彼女は、この国の新しい大公妃だ。


「ギルド長?」


 ヴィットーリオは、パクパクと陸に打ち上げられた魚のように口を開け閉めし、恐る恐る一歩足を後ろに引く。それから、恭しくお辞儀をした。


「こ、公国の美しき白百合、大公妃殿下の御心のままに。」


 ヴィットーリオは今年一番の冷や汗をかいた。


 ◇


「いやあ、傑作だったなぁ。ヴィットーリオの奴。」


 準備が整い、馬車が動き出す。ジョーンズ少尉はマーサーズの裏木戸で見送ってくれるギルド長に手を振りながら肩を揺らして笑っていた。


「JJったら、私の事、ギルド長に説明してなかったの?」

「あそこまでヒントを与えてるのに、なかなか気が付かないあいつが悪いんですよ。調べるだけの力もあるのに、あれは職務怠慢って奴です。」


 ジョーンズ少尉は「まあ、平和ボケをしていると言えば、公国軍もそうなんですけどね」と苦笑する。


「さっさと丘の上まで行って、協力取り付けちゃいましょうね。」


 そう、さも簡単に協力を取り付けられそうな話をしているジョーンズ少尉の楽観ぶりに、「そう簡単に首を縦に振ってくれるものかしら」と心配になる。

 しかし、そう話してもジョーンズ少尉はにたにたとして「今からお偉方の反応が楽しみです」と笑っただけだった。


「お偉方も若奥様のことを侮っているでしょうから、若奥様の背後にグニシアで一番の軍事力を誇るグロースター辺境伯や、百戦錬磨の智将と名高いスペンサー将軍が控えているだなんて夢にも思わないでしょう。知ったら、きっと目を白黒させるでしょう。」


 レジナルドでギルバートが「君のお祖父様のことを混じえて、一言、挨拶して貰える?」と言われた時に「何でそんなことを?」という思いを飲み込んでしまったし、挨拶した際のざわつきに「何でこんなにもざわついているの?」という思いが入り交じったものの、その答えは後日、ジョーンズ少尉がベルラガンに向かう途中で教えてくれた。


『スペンサー将軍の名は、公国内でも有名ですよ? この国は将軍閣下のおかげで独立を保てたようなものですから。ルイ三世、マーガレット妃、それから、スペンサー将軍。この三人の名は三歳の子供でも知っています。』

『え、三歳の子供まで?!』

『ええ。そうですよ。』


 先王の時代。グニシアは酷く世が荒れていて、まだ王太后派の家門の者が今のエルガー公爵領家や王都近くを牛耳っていた。

 その混乱に乗じて、ノーランドは戦線を南に下げて、北の方では絶え間ない戦闘が繰り返されていたと聞き及んでいる。


『そう、その頃です。我ら、エラルドもノーランドに幾度となく攻められましてね。海戦を繰り返していたんですよ。』

『それとお祖父様がどう繋がるの?』


 その問いに、従兄ぶったジョーンズ少尉は口の端を上げ、『エラはまだまだだなぁ』と笑いながら、エラルドで伝わる祖父の活躍を教えてくれた。


『海戦が続いている中、ある時、エラルド公国の海軍はノーランドに大敗を喫してしまった。大型の軍船が沈められ、多数の者が冷たい海に放り出されてしまったんだ。』


 本国からの船は来ず、何とか逃げ出した者達を残されている船に引き上げようにも、次々と砲弾が降り注ぎ、助けることが出来ない。

 そんな誰もが全滅を覚悟した時だったそうだ。


 二隻の大型帆船が姿を見せたのは――。


『そこからはあっという間だった。二隻来た船のうち、ドレイク船長の操るゴールデンハインド号がノーランドの艦隊を斥け、スペンサー将軍の乗っていたトライアンフ号に多くの者達が救出してもらったって話しさ。』


 もちろん助からなかった命もある。

 それでも、人命救助をしてくれたエドガーについては美談として伝わっており、エラルド公国の誰もが知る話だと笑ってみせた。


(とはいえ、知っているのは、その程度。)


 ジョーンズ少尉の口ぶりでは、他にもまだ功績がありそうだったが、様々なことが重なってギルバートに訊ねる機会も逸してしまっている。


「お祖父様は、領地経営の仕方は親身に教えてくださったけれど、戦争時代の話はあまりなさらなかったわ。だから、その辺りの話を聞かれても、私じゃ上手く答えられるか分からないのが難点ね。」


 それを聞くとトムが「その辺りはずっと付き従っておりましたからね。私の方で補いますよ」と口の端を上げた。


「トムが親父さんの名代やればいいんじゃねえーか? 俺、いらねーじゃん。」

「お前、いい年こいて、拗ねるなよ?」

「だって、トム。なんだって船に乗ってなかったお前の方がチヤホヤされて、実際にトライアンフ号を操って、人命救助した俺の方が冷たくあしらわれるんだよ?」

「その後、暴れすぎたんだろ? 商船ばっかり狙っていれば、エラルドは高級服飾品のギルドが犇めく街だ、悪い噂が流れるのは当たり前じゃねえか。」

「ああ? 俺は義賊だって言ってんだろ? スパニアの奴らしか襲わねーよ。」

「バーカ、義賊が荒くれ者って言われるかよ?」

「あ゛? 誰がバカだぁ?」


 ホーキンスが勢いよく立ち上がり、ガンッと天井に頭をぶつける。それには、それまで見て見ぬふりしていたサムが、「ぐふっ」とくぐもった声を上げ、口元を手で覆い、身体を丸めるようにして笑った。


「おい、小僧。てめぇ、何を笑ってやがる。」

「いや、今のは不可抗力でしょ? 完全にショートコントだったじゃないですかぁ!」


 今度はサムに八つ当たりしようとするホーキンスに、さすがのジョーンズ少尉も「狭い馬車の中ですし、馬が驚きますから、お静かに」と宥め役に回る。一方、トムは「こいつら、本当、成長しないんですよぇ」と呆れ口調でホーキンスとサムを交互に見た。


「トム、てめぇ。おい、小僧、お前もいつまで笑ってやがる。」

「お、お嬢も笑ってるじゃないですか。ね、ねッ?」


 形勢の悪いサムは、何とかホーキンスの怒りから逃げようと、エリザベスの背中に隠れようとする。

 そして、ホーキンスも自分の大人気なさに我に返ったのか、「ったく、どいつもこいつも!」と鼻を鳴らして席に腰を下ろした。


 道は先程から坂道に入ったようで、ゆっくりと登っていく。

 ジョーンズ少尉は「ところで妃殿下、お偉方を味方につけたあとはどうなさるんです?」と訊ねた。


「そうね、まずはギルを助けようかと思う。」

「では、大公家に?」

「そうしたいところだけれど、二手に分かれて、片方は広場で陽動させるかしてくれないと、完全包囲されているから、そのまま突入は難しいわ。」

「戦力が少ないのに二手に分けるんです?」


 意外そうに訊ねてくるジョーンズ少尉に、トムが「ダメですよ、お嬢様。あなたを囮にする案は受け入れられません」と話す。

 しかし、エリザベスは「でも、それが一番、少人数でしょう? 被害を小さく出来るわ」と話した。


「トムだって分かっているんでしょう? ギルが最悪、投降する覚悟をしているって。」


 それにはジョーンズ少尉が眉を上げて、驚いた表情になる。


「四方八方から囲まれている上に、守らなくてはならない人が多すぎるもの。籠城戦に持ち込むにしても、武器も多くない。どこか打ち破らなくては勝機はないでしょう?」


 それには少しでも大公家の邸まわりから、敵の目を逸らす必要がある。


「私が広場でグレイ侯爵達と対峙すれば、市民に手を出される可能性も減るし、何よりグニシア側が主張する『囚われの王女』の話が嘘っぱちだって、誰の目にも伝えられるわ。」


 しかし、トムは首を横に振る。


「それでもなりません。広場は死角も多いですし、回り込まれて逆に包囲される可能性があります。」

「じゃあ、広場以外でも構わないわよ。大公家周りから少しでも注意を逸らせればいいの。隠し通路から精鋭部隊に入ってもらって、リンスター公爵家の門を内と外から挟撃できる時間を稼げれば。」


 一方、ジョーンズ少尉はエリザベスの案を聞くと「うーん」と思案顔になった。


「そうですねえ。広場は危ないかもしれませんねえ。でも、発案の内容自体は悪くないと思いますよ。」

「ちょ、お嬢の無茶振りに乗る気ですか?」


 サムが目を見開いて、驚きの声を上げる。ジョーンズ少尉は「ええ、どうやって先方の気を引くかは再考しなくてはなりませんが、大公家の奪還方法については『あり』だと思いますからね」と話した。


「今、状況打開するには、妃殿下のおっしゃる通り、まずは何とかして大公家の包囲を打ち破って、ギルバート殿下の安全を確保し、自由に動けるようにすることが一番でしょう。」


 大公家に閉じ込められているパーティーの暴徒化。

 包囲するノーランド、グニシア、正教会の武装兵との睨み合い。

 そして、何より彼自身、怪我をしており、大きな立ち回りは出来ない状態にある。


「それに殿下のことです。あまりぐずぐずしていると、妃殿下の仰るように力技を使うかも知れませんね。」


 ジョーンズ少尉の分析に、トムが「力技?」と訊ねる。

 ジョーンズ少尉は頷くと、「妃殿下をこの国の公世子妃に据えると伺った時から、大公家との対立は想定内でしたし、最悪、軍事クーデターを起こす腹積もりで、色々と武器の準備をされていたんですよ」と話した。


「軍事クーデターですって?」


 エリザベスが訊ねれば、ジョーンズ少尉はこくりと頷き、「妃殿下がレイ侯爵に拐かされた際、オルメス大尉が港をすぐさま封鎖出来たのはそのためです」と話した。


「我らの本当の配置目的は、ノーランドへの牽制ももちろんありましたが、大公家と対立してしまい、その御身に危険が及びそうなら、『レイ侯爵家の邸や大公家の邸を包囲するように』と命令が出ておりました。」


 しかし、そうなる前にレイ侯爵が馬脚を表し、近衛騎士団が動いたため、レジナルドの海兵隊はそのまま潜伏。披露宴が無事に終わっていれば、本日、海に引き上げる予定だったらしい。


「ですが、昨夜、予期せず大公家から火の手が上がり、殿下から救難の知らせが参りました。しかも、存外、敵に深いところまで入られてしまっており、みすみす大公家を包囲されてしまったというわけです。」


 届いたギルバートからの指示は「既に包囲されている。陸に残っているのであれば、海には引き上げず、そのまま市街地戦にそなえて継続潜伏せよ。朝夕に掲揚台に掲げる旗で指示する」とのこと。


「で、今朝、上がった旗が黄色旗から始まり、『救難。脱出者あり、保護希望』だったというわけです。」


 ギルバートは悪役を買って出ることも考えている。


 エリザベスはそう知ると口を閉ざした。

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