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VRの紺碧の海、紅のガレオン~女艦長スカーレットの冒険記~(改訂版)  作者: s_stein & sutasan


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ヨシツネ艦隊の強さがチート過ぎる

 なんだか今日はユキムラさんに会えそうな気がする。ゲームオーバーの無限ループから脱出しただけでなく、覇者の宝具の地図というレベル99達成に必要そうなアイテムまで手に入れたので、やることなすこと全てがうまく行きそうな気分だ。こういうときに慎重になりすぎるとチャンスを逃すかも知れないから、このまま目的に向かって進んでみよう。


 私の8隻の艦隊がアフリカ、アラブ、インドと進んでいくうちに、チャットが次々と接続されて仲間から「おめでとう!」のメッセージが送られてきた。28も地方艦隊を抱えていて、その大部分から送られてくるから凄いことになっている。お礼の返事を書いては次のチャットの接続を許可するを繰り返していたら、初めてバルバロッサからチャットをつないできた。これにはビビってしまった。


『マニラにいる。噴水のところで会えないか?』


『今、アチェ付近です。少しお待ちください』


 それから、マラッカで補給した後、マニラまで直行し、広場から噴水の所へ行くとバルバロッサが縁に腰掛けて画面を表示していた。チャットで話そうという意思表示だ。私は彼の左隣へ座って画面を表示する。右から来る巨漢の圧が半端ないが、私はその向こうにセーラー服姿の彼女を見ていた。


『レベル98、よくやった』


『ありがとうございます。ノウハウを教えていただかなければここまで来られませんでした』


『いずれ、攻略サイトで公開する話。礼など要らぬ』


 彼の体が動いたので顔を右へ向けると、目が合った。なんとも気恥ずかしい。


『お前との差は、金閣寺と聖剣だな』


 そうですねと返そうかと考えたが、思いとどまった。


『実は、聖剣の地図を手に入れたのだが、東方見聞録をくれる侍が出てこない。攻略の順番を間違えたようだ』


『そうでしたか』


『金閣寺は届かぬのか』


 かける言葉が思いつかない。


『聖剣を手に入れた方法を教えて欲しい』


 きっと、攻略サイトのネタに使うのだろう。もちろん、協力する。


『ネタバレになりますが、よろしいですか?』


『構わぬ』


 私はスコットランドで長老に出会って、2カ所で聖剣を手に入れて最終的に合体した話を詳しく書いた。


『1回目で聖剣の片割れの地図を出現させ、また探させる演出の方がまだよかったかもな』


 いやいや、それだったら私はゲームオーバーの無限ループに落ちていました。たぶん。


『その聖剣エクスカリバーを見せて欲しい』


『ここでですか?』


『今は誰もおらぬ』


 私は立ち上がり、抜刀を振りかぶる。バルバロッサは、感無量の表情を見せて思わず手を伸ばすも、すぐに引っ込めた。他人の剣を手にすることは出来ないからだ。それから、彼がまた画面から何かを書き込んでいるので、私は聖剣を鞘に収めて自分の画面を見た。


『長崎に行くが、来るか?』


 これは、暗にヨシツネと勝負することを意味しているはず。


『挟み撃ちですか?』


『それも良いだろう』


『杭州で一度セーブしてから長崎へ行きます』



 私たちは杭州へ向かい、そこの広場で――もちろんチャットで作戦会議を行った。ヨシツネは哨戒中のはずだから、まずバルバロッサが右から攻めて、次に私が左から攻めることにした。バルバロッサは8隻のフル装備の戦列艦で、私は8隻のフル装備のガレオン船。レベル96の私は瞬殺だったが、それはガレオン船だったからで、戦列艦なら相手にダメージを与えられるだろう。うまくいけば、連続攻撃で敵艦隊を粉砕できるかも知れない。


 チャット会議後、直ちに私たちは出港する。東シナ海を渡って長崎に近づくと、哨戒中のヨシツネ艦隊が見えてきた。7隻の戦列艦だ。1隻は長崎に寄港しているはず。


 今までヨシツネと海戦をしたとき、いつもプレーヤー不在だった。おそらく、今日もいないだろう。ならば、哨戒中の敵艦隊は自動で攻撃してくるから、クイックモードを継続して自動で戦闘に入る。


 まず、南を通ってグルッと反時計回りに迂回したバルバロッサがヨシツネの艦隊へ右側から接近。たちまち戦闘が始まったが、あれよあれよとバルバロッサの戦列艦が沈んでいく。全滅には10秒もかからなかった。私はすかさず左から攻めたが、こちらもあっけなく壊滅。


「レベル98でも瞬殺って、あり得ないわよ!」


 丸太にしがみついて海を漂う私は、唇を噛んだ。


 バルバロッサの提案で、ゲームオーバーになったら、すぐにロードして何度も攻めることになった。こうすれば、相手の船の耐久度が下がって、いつかは沈むだろうと。


 しかし、それは甘かった。どういうわけか、何度やっても私たちの艦隊はあっけなく全滅するだけで、敵は1隻も沈まないのだ。


 20回出撃したところで、私たちは波状攻撃を諦めた。


 杭州の噴水の縁に腰掛けて丸太のような腕で腕組みをし、貧乏揺すりをしていたバルバロッサが深いため息をついた。彼は、やおら画面を表示して何やら書き込んだ。


『どう考えてもおかしい』


『チート過ぎますよね?』


『一度、一騎打ちを試してみたが、今日は不在のようだ』


『そうだったのですか』


『今度、一騎打ちを試して欲しい。聖剣エクスカリバーの威力が知りたい』


『わかりました』


『もし最高ランクの武器を使っても瞬殺されたら、パラメータをいじっているはず。動画を撮っておくことだな』


『はい。一騎打ちの直前にカメラを回します』


『ところで、お前は全部戦列艦に置き換えないのか?』


 おそらく、レベル98のオール戦列艦で試してみたいのだろう。


『いえ、私はガレオン船に愛着がありまして』


 すると、バルバロッサが私の方へ顔を向け、苦笑する。


『頭の固い奴だ』


『すみません』


『そういうのは嫌いじゃない』


 彼――リアルは女性――に『嫌いじゃない』と言われて、私の顔が()()っていく。


『俺は聖剣を探しにいく。それを手にして、今度は一騎打ちが出来るまで挑戦だ』


『頑張ってください』


『お前もな』


 画面を閉じたバルバロッサは、無言のまま何処ともなく立ち去った。

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