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VRの紺碧の海、紅のガレオン~女艦長スカーレットの冒険記~(改訂版)  作者: s_stein & sutasan


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覇者の宝具の地図を見つけた

 私は腰に下げている月光のフランベルジュを聖剣エクスカリバーに取り替えてみた。もの凄く長い鞘に置き換わって引きずって歩くのかしらと思っていると、不思議なことに(つか)の部分は変わったが鞘の長さは変わらない。試しに剣を抜いてみると、全体が半分以下の長さと幅になっていたが、斜め上に振り上げると光に包まれて元の長さと幅に戻った。鞘に収めようとするとまた光に包まれて縮むので、すぽっと収まる。なるほどね。もう一度抜いて収めてを繰り返し、その面白さにフフンと笑ってしまう。


 だが、この聖剣エクスカリバーを手に入れた喜びも束の間、これからどうやって最寄りの港町へ帰ろうかと考えると、船員が八人しかいないという現実に直面し青くなる。


 この後、長老の「では、帰るぞ」の言葉が合図となって、自動的に全員が甲板へワープした。長老が聖剣の地図を返してくれたので、どう変わったのか画面で確認すると、全く異なる地形と×印が2つあった。スコットランドの村でのイベントが始まらないと手に入れられないなんて、難易度が高すぎる。偶然漂着してイベントが始まったという強運は、この後の漂流でも続いて欲しい。


 長老は約束通りに水と食糧を分けてくれた。でも、満タンの半分の量だった。そこで、魚と交換にもう少し分けてくれないか交渉したが断られた。「船員を貸してくれ」と要望したが無視され、長老たちは小舟で帰っていった。


 最初に船を買って船員を雇ったとき、操帆手のミゲル、操舵手のマルコ、測量士のオスカル、見張りのアントニオ、調理人のジョアン、大工のレオナルド、砲手のドミンゴがいた。おっと、調理係のミカエルと、砲手のマルコとサントスもいた。今は八人。どんな困難な航海でも必ずそばにいてくれた彼らのうち、誰か二人はいなくなっていることになる。悲しくなって涙が流れた。


 さて、画面の地図を見ると、今いるスコットランドの北端から近い港――ただし、入港したことがある港はオスロ、アムステルダム、ロンドンだ。そのいずれもが遠くて、とてもたどり着けそうにない。ならば、まだ行ったことがないアイルランドへ向かってみるか? もしかしたら、ダブリンの港町があるかも知れない。


 私はここでセーブをしてアイルランドを目指したが、船はノロノロとしか進まず、全体の4分の3の距離を進んだところで水も食糧も尽きた後、船員がゼロになってゲームオーバー。せっかく聖剣エクスカリバーを手に入れたのに、ゲームオーバーの無限ループに陥るのか。


 それは絶対に阻止したい。まりりんたちが待っているリスボンにリアルの世界の時刻で21時に到着したいのだ。画面で今何時かを確認すると20時30分。残りの時間で解決の糸口を見つけて帰らないといけない。


「アイルランドにたどり着けないのなら、イギリスの西か東かの海岸に沿って南下して村を探すしかないわね」


 さあ、どっちへ行く? この二択に迷っていると、ふと町の名前を思い出した。


「あれ? スコットランドに大きな町があったような……。確か、エディンバラのはず。どっちだっけ?」


 なんとなく東にあるような気がする。港町でなくても村でもいい。とにかくあることを信じて前へ進もう!


 船は再びノロノロと進むが、スコットランド北端の(えぐ)れたような海岸線には沿って進まず、なるべく短い距離になるよう直線的な進路を取る。これで、少しは節約できたと思ったが、水と食糧は確実に減っていき、残りわずかになった。


 いよいよダメかと、ゲームオーバーを覚悟したとき、


「お頭! 港が見えますぜ!」


 村ではなく港!? 感動で肌が粟立ち、涙が出てきた。ついに、港町を発見したのだ。水と食糧がゼロになるのと同時に寄港した先はエディンバラだった。


 早速、酒場で船員を集めて最低限の船員数を十名超える七十名にし、水と食糧を満タンにする。交易所で羊毛を売っていたので、お土産のつもりで購入した。それから広場へ行って噴水のところで「探検」を試したが、扉は出現しなかった。


「さすがに遺跡はないみたいね。まあ、聖剣エクスカリバーがそれに匹敵する大発見だったけど」


 それから町に向かって、一軒一軒扉を開いて見つかった宝箱を開けてみる。すると、一枚の地図が見つかった。


「覇者の宝具の地図?」


 描かれているのは海と陸のようだが、その地形を見ても場所はさっぱり見当が付かない。


「これにも魔法がかかっていて、偽の地形が見えているってオチじゃないかしら? 地形を信じてまともに探すのはやめた方がいいわね」


 きっと、またどこかの村で長老から「それをどこで手に入れた!?」と驚かれて、地図にかけられた魔法が解かれた後、一緒に冒険して手に入れられるのだろう。


 命の恩人とも思える港町エディンバラに別れを告げ、一路ロンドンへ向かう。そこでまた水と食糧を目一杯補給したのは、太平洋横断、北極海一周でついた癖。満タンにしておかないと不安でしょうがないのだ。


 時計を見ると20時45分頃。まだ時間があるので、アムステルダム、ナント、ポルトで交易を楽しんでから約束の時間の5分前くらいにリスボンへ寄港した。やれやれと思ってセーブしようとすると、いきなりクイックモードが解除されて、私は甲板に着地した。


「えっ!? 何のイベントが始まるの!?」


 突然のイベント開始に面食らっていると、甲板に立派な服を着た壮年の男性が三人も現れた。()(りやく)(せん)の免状をもらいに行ったときに会った役人の服に似ているから、彼らも役人なのだろう。そんなことを考えていると、中央にいた役人が一歩前へ出た。


「スカーレット殿。ポルトガル王の命により貴殿を宮殿へ案内する」


「ポルトガル王が!? なぜに!?」


 だが、答えを聞けないうちに、私は絢爛豪華な広い部屋へワープした。学校の教室の4倍はある部屋の真ん中に私は突っ立っていて、正面には王冠を被ってきらびやかな服を纏い、豊かな口髭を蓄えた王が玉座に座っていた。眼光の鋭い王に見つめられると、怖くて目をそらさずにはいられない。両側には側近が三名ずつ立っていて、彼らの視線の圧が半端ない。


 ところが、どうしたことか、彼らは無言を貫いている。このイベントは何かのきっかけが必要らしい。でも、なんと言葉をかけていいかわからない。まずは、突っ立ったままなのは失礼だろうから、右足を立てた形で(ひざまず)き、頭を下げた。すると――、


(おもて)を上げよ」


 腹に響く太い声が聞こえてきたので顔を上げる。これがきっかけだったようで一安心。


「覇者の宝具の地図を持っておるな?」


 王の問いかけにギクッとする。まさか、それをよこせなんて言い出すのか……。


「はい。所持しております」


「そなたの本拠地であるポルトガルにとって栄誉なこと。褒美に金貨500万枚を与えよう」


 これはラッキー。また銀行へ金貨を預けて利子を稼ごう。


「さらに、覇者の宝具を見つけたら、褒美に金貨1,000万枚を与えよう」


 なんだか、太っ腹な王様だ。


「では、すぐに探して参れ」


「承知つかまつりました」


 この言い方でいいんだっけ? なんだか、変な敬語だったかも知れないけれど。


 宮殿から甲板へワープした私は、急いで広場へ向かい、噴水の所へ駆けていった。すると、すでにまりりんたち八人が首を長くして待っていた。


「凄いです! レベル98なんて!」


 まりりんの言葉に、ファンクラブ以外のアバターが一斉にこちらを向く。その中に、もしかして疑惑の目も混じっているかと思うとイヤな気分になる。これだけレベルが上がるとチートツールを思い浮かべるのも仕方ないのは、自分もそうだったからわかるけど。


 彼女たちと弾む会話は楽しかったが、聖剣エクスカリバー獲得の話は伏せた。もし口にすると、必ず「見せて見せて」となって、彼女たち以外のプレーヤーに披露することになる。これ見よがしに最高ランクの武器を見せびらかすなんて、私の性格では無理だ。



 さて、覇者の宝具。それはどこにあるのだろう?


 まだ行ったことがない場所はたくさんある。北アメリカ大陸の西海岸、いや、南アメリカ大陸だってバルパライソより北に行ったことがない。ナスカの地上絵を発見するとついでに見つかるのだろうか? あるいはハワイか。それとも、アイルランドのレイキャビクを出港して通り過ぎたフェロー諸島か、はてまた黒海の奥深くか。


「きっと、小さな村にたどり着いてイベントが発生するのね。となれば、世界中の海岸線を回ることに……?」


 想像しただけで目眩がしそうだ。


 私は彼女たちと別れて、いったんセーブしてから出港所へワープする。行き先はもちろん日本。覇者の宝具発見よりも先にやらないといけないミッションがある。


 それは、ユキムラさんを捜し出すこと。そして、レベル99のヨシツネとの再戦だ。


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