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VRの紺碧の海、紅のガレオン~女艦長スカーレットの冒険記~(改訂版)  作者: s_stein & sutasan


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プレーヤー不在の海戦

 私の艦隊がマラッカに近づいたので、地図から港付近の状況を確認すると、2つの船団が港のすぐ近くにいるのが見えた。これが哨戒中の船団なのか、入港あるいは出港の途中なのか見極めるために、相手と距離を置いて艦隊を停止させ、船の動きを見る。すると、どちらも停まっているように見える。


「きっと、これがポルトガル船を狙って哨戒している人たちね」


 2つの船団の詳細情報を見ると、レベル71のヘンドリックス率いる5隻のガレオン船と、レベル74のハーゲン率いる4隻のガレオン船と2隻の戦列艦で、どちらもオランダ船籍。


 私は到着を知らせるため、まりりんさんへチャットをつなぐも、つながらない。モードが違うようだ。そこで、いったんクイックモードを解除して甲板に立ち、遠くに船影を見つつチャットをつないだ。


『お待たせしました、今、マラッカの沖合にいます』


『スカーレットさん、ありがとうございます!』


『まりりんさんは、広場で待機ですか?』


『はい。ゆかりんと噴水の所にいます』


『敵をやっつけますから、待っていてくださいね。日数がかかるかも知れませんけど』


『大丈夫です。待ちます。終わったら広場に来てください。お礼をしたいので』


 あれ? これから戦う私はクイックモードで進めるけど、修理とかで何日もかかったら、まりりんさんたちはクイックモードじゃないのに本当にずっと待ってくれるのだろうか? 焦りも手伝ってわからなくなる。


『戦いと修理に何日もかかりますよ』


『それはこのゲームでの日数ですよね?』


『はい』


『スカーレットさんが戦いと修理にクイックモードで5分かかるのでしたら、私たちが待っているのは5分ですよ』


 あー、そうだった! まりりんさんの言う通りです。もし戦いが5分で終了したとして、造船所で「修理に7日かかるよ」と言われても、クイックモードなら私の場合1日が8秒だから56秒で、トータルおよそ6分。まりりんさんたちは、その6分を待つだけだ。


『じゃあ、しばらく待っててくださいね』


『頑張ってください!』


 やれやれ。「そんなことも知らないんですか?」って言われなくて良かった……。


 さて、チャットを終了し、気を取り直して気合いを入れる。


「仲間の通せん坊をするあなたたちは、お仕置きよ!」


 まずは、クイックモードに戻ってレベル71のヘンドリックスに近づくと、5隻のガレオン船が一斉にこちらへ近づいてきた。幸いにして、ハーゲンの方は傍観している様子なので、このまま自動で海戦を実行。さすがにレベル78とはいっても無傷というわけにはいかず、何隻かは損傷を受けたが、こちらは沈むことなく敵艦隊5隻を撃破。


「やったー! ……えっ、何あれ?」


 終わったと思ったら、マラッカから1隻のガレオン船が出港してきて、こちらに向かって砲撃してくるのだ。画面から情報を確認するとヘンドリックスの船であった。


「そっか! ずっと補給を継続するために寄港していた1隻が戦いに参加してきたんだ!」


 哨戒中に減少する水と食糧を補充するには、1隻を寄港させておく必要がある。沖合で艦隊が全滅したので、仲間の仇討ちに現れたのだ。これは、難なく撃破。


 でも、レベルは上がらず、戦利品として胡椒、シナモン、ナツメグと金貨100万枚をゲットしただけ。


「えっ!? 戦利品だけなの!? レベルアップしないのは、レベル差が開きすぎているからかしら? それともやっつけた船の数が少ないから?」


 ちょっと残念に思っていると、ハーゲンがゆっくり動き出したので、直ぐさま北に舵を取り、近くのペナンに入港する。造船所で修理を依頼すると5日間かかると言われたので、クイックモードを継続して40秒で終了。


「まさか、ヘンドリックスがセーブデータをロードしていないわよね?」


 不安を抱えながら南へ進路を取り、マラッカへ向かうと、ハーゲンの艦隊が同じ場所に陣取っていたが、ヘンドリックスの船影がなくてホッとする。


「きっと、哨戒モードにしてゲームを落ちたのね。ログインしたら全滅していてビックリするだろうなぁ」


 クスクスと笑いながらハーゲンの方へ近づくと、6隻が一斉に近づいてきた。ここで私は、試しに相手へ一騎打ちを申し込む。


 ところが「プレーヤーは不在です」とポップアップメッセージが表示された。これは相手が哨戒中にしてからログアウトした証拠だ。


 自動で戦うか、手動で戦うか。でも、こちらは8隻、相手は6隻だから自動で大丈夫だろう。


「一気に片を付けるわよ!」


 互いに接近して戦闘が始まると、私たちの砲撃の前に、相手の4隻のガレオン船が次々と沈没。残りは2隻の戦列艦だが、これが手強い! 砲弾はアイテムのおかげで百発百中相手に当たっているはずなのに、なかなか沈まないのだ。手に汗を握る攻防の後、こちらのガレオン船が1隻沈んでから、おもむろに相手の2隻が海中へ没した。


 その後、マラッカに補給用として残っていた1隻のガレオン船が現れたが、こちらは容易く沈めることが出来た。戦利品はキニーネ、マンゴスチン、木材、金貨200万枚。さすがに空いている積み荷の部屋がないので、高く売れそうな品以外は廃棄した。


 やっと、レベルが78から79にアップ。目標の80まであと一歩だ。


 チャットで勝利を伝えてから再びペナンで修理をした後、マラッカへ行き、広場でまりりんさんとゆかりんさんに会った。立派な商人の衣装を着たお姫様のような顔の二人が、満面に笑みを浮かべて何度もお辞儀をする。


「「スカーレットさん! 本当にありがとうございました!」」


「もうこれで安心です。この辺りは敵対国のオランダ船が多いので、離れた方がいいかもしれませんね」


「そうですね。アラビア海の方に行っています」


 二人に手を振って別れてから、チャットでまゆりんさんにもう少ししてから行くことを伝え、いったん杭州へ戻る。ここでドックから1隻を補強し、セーブした後、8隻でスラバヤへ急行した。

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