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VRの紺碧の海、紅のガレオン~女艦長スカーレットの冒険記~(改訂版)  作者: s_stein & sutasan


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二刀流の海賊

 一騎打ちが受諾されたらしく、クイックモードは自動的に解除され、私は空から無人の甲板へ着地した。周囲を見渡すと、いつものように誰もいないが、物陰からでもいいので見守っていて欲しい。その方が心強いから。


 私が祝福の外套を装備していると、空からコンゴウが降り立った。背丈は頭一つ以上高く、黒い和服の膨らみが筋骨隆々の(きよ)()を想起させる。ボサボサの頭は何も被っていないが、彼の衣装は教科書で見た僧兵の衣装に似ていて、怪力無双の武蔵坊弁慶が似合うかも知れない。


「従兄弟の敵討ちに来た」


 腹に響くコンゴウの声で、背筋が寒くなる。チャットのセリフを生で聞かされている感じだ。


「返り討ちにしてあげるわ!」


「面白れえ。やれるものならやってみな」


 あれ? まともな会話だ。まさか、この人、プレーヤー?


「ちょっと。あなた、なりすましなの?」


「ちょっと。あなた、なりすましなの? って何だ?」


 このおかしな返事はCPUだ。少し安心する。


「気にしないの」


「なら、勝負といこう」


 コンゴウは敗北した二人と同じセリフを吐くと、両腕をクロスし、左右の鞘から二本の太刀を抜いた。


「ちょっと待って! 二刀流って反則じゃない!?」


 ランキング2位の「月光のフランベルジュ」とはいえ、二刀流に太刀打ち出来るのだろうか。初めてのことで頭が混乱し、全身の震えが止まらない。


「うおおおおおっ!!」


 猛獣の咆哮のような雄叫びを上げて、二本の太刀を振り上げたコンゴウがドスドスと甲板を鳴らしながら駆け寄ってくる。腰が引けた私は、剣で応戦する気力を失い、右へ跳んだ。私が立っていた位置に、コンゴウの太刀が振り下ろされて空を切る。


「どうしよう……」


 コンゴウが血走った目で逃げた獲物を睨み付けると、再び太刀を振り上げて「うおおおおおっ!!」と迫ってくる。


「来ないでー!」


 私は右へ右へと跳んで逃げる。何度もコンゴウの太刀が空を切るも、諦める様子はない。


「あれ? 動きがワンパターン?」


 反時計回りに逃げ回っているが、裏をかいて私の移動先の予測位置に太刀を振り下ろすことをしないのだ。これなら永遠に逃げ回れる。


「だとしたら――」


 私は右に跳んだ後、素速くコンゴウの背後に回って、月光のフランベルジュを一太刀浴びせた。悲鳴を上げた彼のHPが100から95に減った。ということは、これを20回繰り返せばいいのだ。


 ところが、それは甘かった。コンゴウが二本の太刀を真横に構えて接近し、私から見て左から右へ薙ぎ払った。この動きを予想したので、腰を低くして回避したが、三角帽子が太刀で吹き飛ばされた。


「隙あり!」


 正面ががら空きになったコンゴウの腹をめがけて、フランベルジュを右から左へ薙ぎ払う。絶叫する彼のHPは95から75に下がった。


 後ろに下がって次のチャンスを窺うと、またコンゴウが二本の太刀を真横に構えて飛びかかる。これも、頭を低くして回避しつつ、反撃をしてHPは55になった。


 勝てるかも知れない。そう思って頭を上げた途端、私の方に隙が生まれた。今度は、相手が振り払った二本の太刀を逆方向に振ってきたのだ。


「痛い!」


 右腕に激痛が走る。祝福の外套のおかげで殴打のような衝撃だったが、私のHPが100から60に下がった。この外套がなかったら、あの勢いではもっとHPが下がっただろう。


「ヤバい! この攻撃をあと2回受けたら、ゲームオーバーになる!」


 コンゴウが、二本の太刀を頭上に振り上げてニヤッと笑い、突進してくる。この勢いに怖れを成してしまい、後ろへ下がったが、足がもつれて仰向けに倒れてしまった。


「!!」


 覆い被さったコンゴウが、今にも太刀を振り下ろそうとした瞬間、私はフランベルジュを彼の胸に突き刺した。


「ギャッ!」


 後ずさりする彼のHPは35になった。私は直ぐさま立ち上がり、もう一度胸に一突きをお見舞いする。これでHPは15に減少。


 これは勝てる。欲張った私は、もう一度フランベルジュを突き出すと、その前にコンゴウが二本の太刀を勢いよく振り下ろした。


「キャッ!」


 両肩に激痛が走る。HPは60から20にダウンした。


 彼は、振り下ろした太刀を再度振り上げる。ここで勝負を決めようとしているのだろう。あと1回攻撃されるとHPがゼロになる。私は、剣を真横にして左手を添え、頭上で構えた。そこに太刀が振り下ろされる。


 ガシッ!


 相手が渾身の力で太刀を振り下ろすので、私のフランベルジュがジリジリと頭の上に迫ってくる。まずい! このままでは力負けしてしまいそう。


 何かこの状況で出来ることはないか? 考えろ、私!


 剣が髪の毛に振れる。その瞬間、閃いた。私は右足を曲げて思いっきり彼の腹に蹴りを入れた。


「うわっ!」


 コンゴウがたまらず後ろへ()()めく。その隙に、フランベルジュで右上から左下に向かって袈裟懸けに斬った。HPがゼロになった彼は、甲板の上に仰向けに倒れてフッと消えた。


 へたり込んで肩で息をする私は、勝利のメッセージが目に入らなかった。


 戦利品は、金細工と屏風と金貨200万枚。レベルは77から78へアップした。


 ここでまた海賊に襲われては万事休すだ。体力回復のポーションみたいなアイテムはなく、1日でHPが10回復するので、今は20だからフル回復には8日間待つ必要がある。まずは仁川を目指し、修理はおそらく7日間かかるはずなので、それをクイックモードで待つ間に体力を回復することにした。


「とんでもないコンゴウ一族だったわね……」


 一騎打ちに持ち込むという機転が利かなければ、ゲームオーバーは確実だったと思われる。もっとうまいやり方はないのか、後で汐留くんに聞いてみよう。もう一度遭遇するのは()(めん)(こうむ)りたいけど……。


 HPが100になったところで、セーブ。やれやれと思って画面上で戦利品などを確認していると、突然ポップアップが現れた。


 ――ポルトガルがオランダと敵対しました。

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