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VRの紺碧の海、紅のガレオン~女艦長スカーレットの冒険記~(改訂版)  作者: s_stein & sutasan


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不正に関する噂

 2回の海戦で疲れたので、今日はゲームを抜ける。やはり、自分で考えて実践して、結果が出せると充実感が残る。


「だから面白いのね」


 ベッドの上で紅のヘッドギアを外した私は、目を閉じて心地よい眠りについた。



 それから毎晩、ゲームにダイブしては海賊討伐に専念し、時には交易で儲けたりのパターンが出来上がった。前に討伐した海賊とレベルが同じ海賊をやっつけても、レベルアップしないことに気づいたので、常に前よりも高いレベルの海賊を狙うようになった。このおかげで、ついにレベル60に達した。


 さらに、千里眼の眼鏡、精霊のロープ、悪魔のコンパス、韋駄天の靴、魔法の工具箱、満漢全席の品目表、祝福の外套を各地の宝箱から見つけ出し、それらを関係者に装備させることにより、自分のレベル以下の海賊には100%勝てるようになった。クイックモードのまま勝利できるし、レベルが上がるし、こんなに便利なことはない。ただし、船体が破損しても、航行できるほどの応急処置は行われるが、自動的に修復はしない。修復は造船所で行うことになる。


 後は、東南アジアの海域で行く手を阻む海賊を掃討するのだが、レベル65でボルネオ島へ向かったところ、レベル68の海賊が現れた。これにはビビってしまい、踵を返す。


「ユキムラさんに会いたいなぁ……。ラファエルさん、返事くれないかなぁ……」


 せめて、どこにいるかのヒントでも欲しいのだが。今は、東南アジアの海域より北にいると踏んでいる。それとも、太平洋を横断してハワイとか新大陸の西海岸にいるのか。はてまた、北極海にいるのか。



 他に海賊がいないか、インド洋の辺りをうろうろしていて、たまたまボンベイに入った。ボンベイは現代ではムンバイと呼んでいる港町である。ここの広場から出て町の通りを歩いて宝箱を探していると、二人の商人風の男性がやってきた。私の方をチラッとは見たが、関心がないらしく、会話に夢中の様子だった。


「おい。最近、このゲームのパラメータをいじるツールが裏で取り引きされているって噂、知っているか?」


 驚いた私は、聞いていない風を装って、聞き耳を立てた。


「知らない。どういうツール?」


「いきなり、レベルも所持金もMAXに出来るらしい。しかも全アイテムを所有できる」


「マジで!? 開始早々にチートになれるってこと?」


「ところが、ばれるとまずいのでいきなりMAXにせず、適当に高いレベルにして気づかれないようにしているとか」


「なんだそれ。やる気だだ下がりなツールを作るなよ」


「それもそうだが、セキュリティ破られるなよ、だな」


「何? サーバーに侵入するのか?」


「それ以外、どうやってパラメータを書き換える?」


「だな。でも、それが本当なら、運営に通報した方がいいんじゃないか?」


「噂だからなぁ」


「その噂は、実は嘘で、偽情報を流してほくそ笑む奴かもよ」


「あり得る」


「第一、VRMMOのサーバーに侵入してパラメータいじれるのなら、他人のアイテムを(かす)()ることだって出来る。憎い相手をレベル1に出来る。そんなことをしたら、今頃騒ぎが起きているはずだぜ」


 聞き捨てならない噂話だ。


 プレイして気づいたが、特に海戦の操作性はもどかしいところがあり、さっさとレベルが上がって欲しいという気持ちはわからないでもない。だからといって不正を働いていいものなのか。


 いいはずがない。


 ただ、あくまで噂なので、私は地方艦隊の仲間には広めないことにした。この手の噂は、尾ひれが付いて拡散していくし、そうなることを目的に噂を広めた人の片棒を担ぐことになりかねない。


「チートツールかぁ……。そうまでして、強くなりたいのかなぁ? 無敵になったら、やることがなくなるし、誰も相手にされなくなるのに」


 独り言をつぶやきながら、画面を広げてアイテム一覧を見る。まだいくつかが空欄だ。


「これを一つ一つ埋めていくのが楽しいし、レベルが1ずつ上がっていくのが嬉しいのに、なんで急ぐのかしら? 理解不能ね」


 私は画面を閉じて、再び宝探しを始めた。

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