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VRの紺碧の海、紅のガレオン~女艦長スカーレットの冒険記~(改訂版)  作者: s_stein & sutasan


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海戦のリベンジ

『クイックモードでやりました!?』


『両方で試しました!』


『クイックモードはCPUお任せで運に左右されますから、経験値が高くてアイテムを装備しないと勝てません!』


『魔弾のマガジンと大言壮語のメガホンならあります! メガホンは誰に装着すればいいのですか!?』


『自分です!』


 なんだ、そういうことか。


『他に必要なアイテムがあるのでしょうか!?』


『千里眼の眼鏡を見張りに、精霊のロープを操帆手に、悪魔のコンパスを測量士に、韋駄天の靴を操舵手に、魔法の工具箱を大工に、満漢全席の品目表を調理係に、祝福の外套を自分に装備します』


 なんですとー!


『これが揃えば、自分よりレベルの低い相手はCPUだろうとプレーヤーだろうと、クイックモードで100%勝てます!』


 こりゃ無理だわ……。千里眼の眼鏡以下は、まだ入手していない。早くも諦めムードの私。


『それらのアイテムは、未入手です!』


『そりゃ、そうですよ! 海戦を経験してから宝箱に現れますから!』


 やはり、町の宝箱は、一度開けて終わりじゃないのね。何かの条件をクリアするとまたアイテムを取れるようになるとは、奥が深いゲームだわ。


『クイックモード以外は、どうすればいいですか!?』


『画面を表示して船員に指示します! 指で船を動かし、風上に移動してください! それと、T字戦法が基本となります!』


 この後、詳しくはマニュアルを見て欲しいと言われたが、簡単に説明してくれた話をまとめると、次のようになる。


 まず、風上に移動するとは、風下から風上に向かって大砲を撃つと敵船に当たりにくくなっているから、それを避けるためだそうだ。とにかく相手より先に風上の位置を確保すべきとのこと。


 T字戦法とは、敵の船が進む向きに対して自船を90度回転させ、両者がTの文字の形になるように陣取って砲撃すること。敵は船首砲1門しか使えず、自分は船腹の大砲数門を同時に使えるから、圧倒的に火力の差が付く。


 なので、風上に位置してT字戦法を使えば、かなり有利となる。


『頑張ってください!』


『頑張ります!』


 熱く語るスティーブさんとのチャットは、体力を消耗するわ……。



 それから、広場の噴水の(ふち)に座り込んだまま、マニュアルを熟読した。特に、クイックモード以外で船を動かす方法を調べて頭に入れた。


 画面では、自分の旗艦がなるべく中心になるように表示されるので、行きたい進路を直線とかカーブとかで指をなぞる。すると、その進路に従って旗艦が動く。旗艦以外も指でなぞれるが、8隻もコントロールが面倒ならば船ごとに「委任」が出来る。ただし、旗艦の「委任」は出来ない。


 海戦をずっと避けてきたツケが回ってきたが、これからはそれを挽回するため、海戦で経験値を積んでレベルアップをする必要がある。新たな目標が出来た私は、広場を後にした。



 リスボンをクイックモードで出港して南下すると、性懲りもなく西からジョージの船団が現れて私たちの背後に回ろうとする。風は北から吹いているから、風下の私たちが不利だ。しかも、向こうがT字戦法を採ろうとしているのがありありとわかる。


『よう、姉ちゃん。おとなしく積み荷を置いていきな』


『今度こそ負けないわよ』


『やろうってのか? 上等だぜ』


 最初と最後の言葉が毎回同じなので吹き出しそうになるが、私はクイックモードを解除して甲板の一番高いところに降り立つ。船員は早くも戦闘準備に入っているが、海賊の最後の言葉で海戦の始まりであることがわかるのだろうか。私は画面を表示し、ジョージの船団の後ろを右横に見ながら北上するように指で8隻を時計回りにUターンさせた。(おも)(かじ)いっぱいでグルッと回る形だ。これには虚を突かれたらしく、ジョージの3隻は少し東に進んでから大回りして、北上する私たちの後ろを追いかけてきた。


 これで風上を取った。私たちは、敵船が大回りした分、相手との距離があるため、T字戦法の準備をする時間が十分あるが、早々に準備をすると敵が船の方向を変える危険性がある。そこで、追っ手が速力を上げて距離を詰めてきた頃を見計らって、8隻を二手に分けて進路を一気に西と東へ変えた。これで、Tの文字になった。正確に言うと、Tの交点には船がいない形だが。


「全船、砲撃開始!」


 この口頭の指示で、8隻のガレオン船のダブルカノン砲が一斉に火を噴いた。「全船、~」は、指で画面から各船に指示を出すよりも断然早くて便利な指示である。マニュアル通りだけどね。


 これで、あっという間に先頭にいた敵船が火だるまになって沈んだ。残りの2隻は、めちゃめちゃに砲撃しながら左右に逃げ惑う。こちらの8隻は、「砲撃止め」を言わない限り撃ち続けるから、2隻に容赦なく砲弾を浴びせる。魔弾のマガジンがあるから、相手に面白いように当たるが、敵が南へ逃げて距離が隔たると当たらなくなってきた。


「全船、砲撃止め!」


 私は、画面から4隻ずつ南進を指示し、敵船2隻を追跡する。破損して速力が落ちている敵船とは、簡単に距離を縮められた。相手は船腹をこちらに向けて砲撃するが、こちらも風上にいる利点を活かし、向きを変えて船腹を相手に向け、一斉に砲撃する。耐久度の下がっている敵船は、この一撃で次々と沈んだ。


 私たちの船もいくらかは損害を被ったが、大工のレオナルドが短時間で応急処置をしてくれて、航行が可能となった。しかも、8隻ともだから、どうやってやったのかは謎であるが。なお、ちゃんとした修理は港町の造船所に行かないと出来ないようになっている。もちろん、日数がかかるので、待たされることになる。


 さて、戦利品だが、本当なら海に漂っているだろうが、自動的に相手の水と食糧と資材が補充された。さらに、積み荷も入るだけ補充された。見てみると、銀塊と陶磁器だ。これは、ヨーロッパのどこでも高く売れるので儲けものである。なお、大砲が同じなら弾薬も補充されるはずだが、違ったらしく補充されず、残念。


 初勝利の感慨に浸る私は、レベルを確認すると51から52に上がっていたので跳び上がって喜ぶ。リスボンに寄港してセーブを終えると、スティーブさんにチャットで報告した。彼は、自分の事のように喜んでくれた。


『おめでとうございます!』


『ありがとうございます! 海賊討伐でレベル上げもいいかもしれませんね!』


『頑張ってください! でも、無理をしないように!』


 大丈夫です。調子に乗りませんから。


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