路上のファイター
誰も宝箱を探しに建物へ入ってこないのをいいことに、長々と質問した私と全てに答えてくれたカエサルさんは、建物から外に出て次の宝探しを続けた。もう残り5軒ほどとなった時、私たちの後ろから男性が声をかけてきた。
「よー。デートとしゃれこんでるぜ、こいつら」
またかと思ってゲンナリする。NPCによるイベント発生ではない。ちょっかいを出すプレーヤーの出現である。
振り返ると、カエサルさんの後ろから二人のイケメンが近づいてくるのが見えた。
私はギョッとする。以前、ここの通り道で私の胸ぐらをつかんだイケメンと、私を助ける演技をしたイケメンが肩を並べて歩いているではないか。二人がグルであったことが、これで確実になった。
カエサルさんは素速く私の前に立って背を向け、両手を広げて彼らに立ち塞がった。
「なんだ、てめえ」「女の前で格好付けんのか?」
二人はボクシングをする構えを見せた。
「ボクシングかい? 相手を間違えたようだね」
「けっ! 口の利き方を教えてやる!」
一人が拳を振りかぶり、カエサルさんに殴りかかる。しかし、その拳は空振りに終わり、男は腹にカエサルさんの膝蹴りを受け、下を向いたところに後頭部へ手刀を入れられた。うめいた男は、石畳の上へうつ伏せに倒れ込んで動かなくなった。
「野郎!」
もう一人も拳を振りかぶり、カエサルさんに殴りかかる。こちらは、顔面の中央にストレートパンチを受け、さらに目にも止まらぬ速さで顔面が連打された後、顎にアッパーカットを入れられて、仰向けに倒れ込んだ。
カエサルさんは二人を見下ろして「喧嘩をふっかけるなら、相手を見ることだね」と、さらりと言う。
すると、仰向けに倒れた男が頭を上げて「てめえ、リアルであの拳法、習ってんのか?」と問いかける。
「そういう君は、僕の型が見破れるなら同類かな?」
「流派が似ている」
「ならば、力の違いはわかるよね」
「……わかる」
「じゃあ、二度とここで手を出さないことだよ」
「ああ、わかった。……ところで、その赤毛の女、てめえの女か?」
カエサルさんは私の方を振り返り、ニコッと笑ってから男の方を見る。
「当たり前だろ?」
「ちっ! ついてねえぜ!」
それから、イケメンの二人は、ヨロヨロと立ち上がって逃げていった。
カエサルさんは、ドキドキする私の方へ振り返り、ちょっと困ったような顔をする。
「トラブルに巻き込んでしまって、申し訳ない」
「いいえ。助けていただいてありがとうございます」
「ここの運営は頼りないけれど、後で通報しておくから」
「それより、カエサルさんは拳法を習っていらっしゃるのですか?」
「護身用ですよ。趣味はそっちではなく、あくまで歴史です」
「ああ、だからお名前がカエサルなのですね? 趣味とおっしゃるなら、歴史は相当お詳しいですよね?」
「まあ、周りから、歴じ――じゃなくって歴史マニアなんて言われますが、友達がいなくて知識をひけらかす相手がいません」
(れきじって何だろう?)
「私にひけらかしてください」
「ひけらかすは、悪い意味に使いますから、それはちょっと……」
カエサルさんは頭を掻きながら笑った。




