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VRの紺碧の海、紅のガレオン~女艦長スカーレットの冒険記~(改訂版)  作者: s_stein & sutasan


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このVRゲームに流れる時間の疑問

 カエサルさんがいろいろと詳しいので、日頃プレイしていて疑問に思うことについて聞いてみることにした。それは、ゲームの世界の時間に関する疑問だ。


 今は、ポルトとリスボンまで、リアルな船なら1日かかる距離を私がクイックモードを使えば20秒以下で移動できる。これって、時計の早回しだ。例えば、各プレーヤーが好き勝手に時計を進めていて、それらのプレーヤーが一堂に会すると、矛盾は生じないのだろうか?


「話は変わりますが、カエサルさんがリスボンでクイックモードを解除して待っていた時、私はクイックモードでポルトに停泊していました。チャットがつながらないから、カエサルさんはクイックモードにしてチャットをつないだのですよね?」


「そうです」


「その後、どうやって待っていたのですか?」


「クイックモードを解除して造船所で待っていました。そうしないと、波止場に立って船を見られないからです」


「その待っている間に、私はクイックモードでポルトからリスボンへ1日かかる航路を20秒以下で移動しました。カエサルさん、どのくらい待ちました?」


 すると、カエサルさんがニコッと笑った。


「いいところに気づきましたね。さて、1日か20秒以下か、どっちだと思います?」


 常識的に後者だ。


「20秒以下――ですよね?」


「もちろんです」


「でも、それって、現実ではあり得ないですよね?」


「現実とは、1日かかることを言っていますか? もし、スカーレットさんがクイックモードを解除してポルトからリスボンへ渡れば、1日かかる、つまり現実になりますよ。もしもそうなったら、私はそこまで待てませんからゲームから落ちます」


「確かにそうですね。あれ? わからなくなってきました……」


「それは、クイックモードの魔術です」


「魔術?」


「時計の早回しというあり得ない現象を見せられているのですよ。実際にこのVRゲームで流れている時間は現実世界の私たちの時間です」


「えっ? 現実世界の時間ですか? でも、夜8時にこのゲームにインしても、広場は昼間ですよ」


「広場はいつも昼です。もっと言うと、プレーヤーが陸地で歩き回る場所は、全部昼間です。どのプレーヤーが何時にこのゲームへダイブしても、昼間なのです」


 確かに、夜を迎えるのは、いつも海上のみだ。思い出すと、夜の町を歩いたことがない。


「夜中に港町に着いても広場に行くと昼間だったので、一泊したのかしらと思っていたのですが、違うのですね?」


「時間の矛盾を頭の中で都合良く解決しているだけです」


 確かに、不思議な事象を見ると、「きっと、こうに違いない」と無理矢理解釈してしまう。


「とにかく、プレーヤーが腕時計をしたまま現実世界からこのゲームの世界にダイブしたとして、互いに腕時計を見せ合うと常に時刻は一緒で、現実世界の時間を指し示しているのです。クイックモードを使おうと使うまいと」


「だから、私がポルトからクイックモードでヒュンと帰ってきた時間と、クイックモードではないカエサルさんが待っていた時間が一緒なのですね?」


「そうです」


「ところで、なぜ、海の上だけ夜が来るのですか?」


「1日以上かかる航路なのに、太陽がずっと出ているとヘンですよね? それをヘンに見せないための単なる演出です」


「クイックモードを解除して、1日かけてのんびり船旅をする場合は夜は来ますか?」


「海上ですから来ます」


「なるほど。そういうことなのですね」


 だんだん、このゲームの時間についてわかってきた。航路でS日かかるところをT秒かかった場合、経過日数のSは関係なく、経過時間のTがこのゲームの経過時間なのだ。Sで考えてしまうと、ゲームの進め方の違いで全員の時計が一致しなくなって、ある人は1月1日、ある人は5月5日ってことが起きてしまい、互いに話が通じなくなってしまう。


 思えば、訪れる町の広場では四季を感じたことがない。広場では、進め方が異なるプレーヤーが同時に滞在することが出来るから、彼らに月日を意識させない演出のようだ。


 でも、まだ気になることはある。


「夜中に港町に着いて、クイックモードを解除し、造船所に入って波止場に立つと?」


「昼間です。解除した途端、昼間になるからです」


「そのまま出港したら?」


「昼間の出港になります」


「では、寄港時にクイックモードを解除せずに、造船所に入って波止場に立つと?」


「クイックモードのままですから、波止場に立てず、昼間にならないから、そのまま夜に出港します」


 ついでに、海上での別の疑問をぶつけてみよう。


「クイックモードで移動中に海賊に襲われたら?」


「クイックモードのまま、海賊と海戦になります。この場合、自分では制御できません。CPUにお任せになります」


「海賊に襲われる前にクイックモードを解除したら?」


「船員に指示を出しながらの海戦になります。だから、それが面倒な人は解除しません」


「面倒だからと言って、途中からクイックモードに移行できますか?」


「出来ません。決着が付くまでそのままの状態が続きます」


「海賊がプレーヤーだったら、どうなりますか?」


「まず、お互いが異なるモードの場合、お互いが見えません。なので、海戦をするには、モードが一致している条件が必要です。クイックモード同士ならCPUにお任せの海戦、そうでなければ指示しながらの海戦になります」


「ならば、海戦が始まりそうになったら、モードを変えて逃げるのが得策ですね?」


「相手もモードを変えて接近してきますから、油断は出来ませんよ」


 なるほど。それにしても、カエサルさんは相当詳しい。頼りになる存在だ。

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