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VRの紺碧の海、紅のガレオン~女艦長スカーレットの冒険記~(改訂版)  作者: s_stein & sutasan


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仲間の悩みを聞かされた

 仲間になった三人ともゲームをやりこんでいるプレーヤーのようだ。わからないことをチャットで聞けば、すぐに答えてくれる。ただし、チャットが一対一なので、1回の同報で質問を三人に投げられず、この人なら答えてくれそうだなと考えて相手を選ばなければいけないという不便さがあるが、その点さえ気をつければ問題はない。


 彼らから、FAQ見ろよとか、チュートやれよとか、突き放されることは一度もなく、親切丁寧に教えてくれるので嬉しい。私のレベルに合わせた個人授業? 家庭教師? まあ、かゆいところに手が届く個別指導であることには間違いない。


 甘えて悪いなぁと思うときもあるけど、三人から「どんどん聞いて」と言われると、つい何でも頼ってしまう。おんぶに抱っこ状態だ。前にも質問したことがあるかもしれない内容でも喜んで教えてくれるから、よほど教えるのが好きなのだろう。


 あっという間にキャンペーンの無料期間である14日間が過ぎ、私は課金組の仲間入りをした。三人とも「オプションはまだ加入しなくていい」とアドバイスしてくれたので、月額1,000円のみで進めることにした。



 私は、今までリスボンを中心として近隣の港としか交易をしないという狭い活動範囲だったが、三人の影響でグンと世界が広がった。


 サルヴァトーレさんのアドバイスで、地中海の北側の港に一つ一つ足跡を印した。主な港はバレンシア、バルセロナ、マルセイユ、ジェノヴァ、ナポリ、パレルモ、シラクーザ、ベネチア、アテネ、テッサロニキ、キレニア、コンスタンチノープルなど。地中海の南側と東側、つまり、北アフリカと中東の港はもっとレベルが上がってから足を伸ばすつもりだ。なにせ、強い海賊がいて、遭遇すると私の船では勝ち目がなく、ゲームオーバーになるからだ。


 カエサルさんのアドバイスで、北海の港を全て回ってみた。もちろんフランス以北だが、こちらは数が多いので省略。なお、海賊と遭遇しなかったから楽だった。


 スティーブさんのアドバイスで、新大陸として、まず南アメリカを回ってみた。今の船の能力を考えると、この方が大西洋を渡る航海の距離が短くて失敗しないからだそうだ。西アフリカのヴェルデから南アメリカのナタールへ行き、さらに南下してリオデジャネイロまで足を伸ばす。


 チャレンジとして、中央アメリカを目指すことにした。ナタールからフォルタレーザ、カイエンヌ、パラマリボまで行ったが、ここで海賊に遭遇し、慌ててナタールまで逃げ帰った。スティーブさんの話では、私のレベルではとにかく「逃げること!」だった。早くガレオンを手に入れて、堂々と海賊と渡り歩きたい。



 これだけ港を回ったおかげで、レベルは25まで上がった。えっへん。凄いでしょう?


 遠くへ行くほど、珍しい交易品が増えることがわかった。ご褒美みたいなものだろうか。この交易品を本拠地のリスボンに持ち帰ると、驚くほど高額に買い取ってくれた。


 ところが、サルヴァトーレさんのアドバイスは、本拠地で売ることではなく、港町の間の距離が離れれば離れるほど良いとのこと。つまり、遠方の珍しい交易品を出来るだけ買い込んで、そこから遥か離れた港町で売ると儲けが多くなるのである。距離が遠ければ遠いほどよいらしい。正直に実践したおかげでみるみる所持金が増え、100万を超えた。これが実際の金貨なら、どんな黄金の山になるのだろう。


 早速、サルヴァトーレさんにお礼を言うため、チャットを接続した。彼は私が金貨100万枚の大台に乗ったことに対して、自分のことのようにとても喜んでくれた。


『もうそろそろ、ガレオンを買っても良いですよね?』


『ええ。旗艦はガレオンにしましょう。最終的には8隻をガレオンにしますが、200万必要ですから、まずは300万くらい貯めることを目標にしましょう』


『1隻ずつ買い換えながらでもいいですよね?』


『もちろんです』


『どこでもガレオンは買えますよね?』


『中古ならYESです。新品の場合は、港によっては買えません』


『そうなんですか?』


『港の規模の違いです。発展度と言いますか』


『その辺りを詳しく教えて欲しいのですが』


『チャットでは難しいので、どこかの広場で待ち合わせしてお話しますか?』


 このお誘いに、私は困惑した。


 前にリスボンで遭遇したグルのイケメンの二の舞を警戒しているのではない。今、指が止まっているのは、この待ち合わせがデートに思えてしまい、男性と会ってどう話していいのかがわからないからだ。


 相手の顔を見て話さないといけないと思うが、アバターとはいえ、それがとても恥ずかしい。さらに、チャットでは互いの会話に時間がかかっても、入力のディレイがあるからさほど気にもならないが、面と向かったらこの時間は沈黙になる。気まずい空気が流れそうだ。


『対面じゃないと駄目ですか?』


『いえ、大丈夫ですが、説明に時間がかかります。よろしいですか?』


 いいえと言わせて、結果的に誘っているのだろうか? それなら断ろう。


『ええ、まあ、いいです』


『実は、私も教えて欲しいことがありまして。対面の方が助かるのですが』


 おやおや、要するに会って欲しいということらしい。さすがに今は会う自信がないのでお断りすることにした。


『チャットで相談できない内容ですか?』


『いえ、出来ますが、時間がかかります。本当によろしいのですか?』


『いいですよ。では、先に、サルヴァトーレさんの教えて欲しいことをどうぞ』


 すると、彼は文章を何度も書き直したのか、しばらく沈黙してから書き込んできた。


『実は、悩み事がありまして。聞いていただきたいのですが、よろしいでしょうか?』


『どうぞ』


 彼が考え考え書き込んできた悩みは、こうだ。



 ――彼は社会人っぽい雰囲気を出しているが、実は学生で、好きな女性が出来たのだが、気が弱いので声をかけられない。同級生にからかわれているので、そんな男なんか相手にしないのではないかと思っている。でも、なんとか告白したい。女性の立場から見て、こういう男はどうしたらいいか。



 どうもこうもない。告白すればいいじゃん、と思う。


 でも、それをストレートに書くと、言葉は得てして相手を傷つける。チャットの場合、ニュアンスがわからないので、面と向かうよりもグサッとくることがある。


『サルヴァトーレさんから見て、そのお相手の女性はどう見えるのですか?』


『最新のVRゲームをやっているみたいで、話は合うかなと思っています』


『じゃあ、ゲームの話題を振ればいいのでは? 趣味が同じだと、話が弾むこともありますよ』


『それが、声をかけにくくて』


『かけにくいということは、お相手の女性はそういう雰囲気の人なのですね?』


『いえ、そうではなく、私が引っ込み思案な性格でして』


『でも、ゲームの世界のサルヴァトーレさんは、普通にお話されているではないですか?』


『バーチャルだと大丈夫なのですが』


 こういうのが一番困る。


『きついこと言うようでごめんなさい。サルヴァトーレさんって、傷つくのが怖いのでは? 失敗したくないのでは?』


 彼が沈黙した。


『私が仲間を募集したとき、断られるかも知れないのに応募されましたよね?』


『ええ、そうです。アバターですし』


『そこですよ。アバターだから断られても気にならない。アバター脱いだ途端、気になる。でも、サルヴァトーレさんはサルヴァトーレさんです。バーチャルで見せる優しいお姿をリアルで女性に見せればいいのではないですか?』


 また、彼が沈黙した。


『ごめんなさい。言い過ぎました』


『いえ、お気になさらずに。私は入学の時に、しくじってしまったようです。周りに女性が多いので、からかわれて自信をなくして。でもそれは、よく考えれば周りのせいではなく、自分の弱気のせいだったのです。そこの考えを改めないといけませんね』


『思いを伝えてください。それが一番の方法です』


『そして、断られることを恐れないことですね。頑張ります』


 彼は、自分なりに考えて、前に進みだしたようだ。



 ここで私は、チャットのログを読み返した。


 すると、いくつか気になるキーワードが目に付いた。それから連想されることをつないでいくと、彼が、私の身近にいる人と類似点があることに気づいてしまった。


(なんか、これ、うちのクラスの大門くんみたい……。まさか……)



   ◆◆◆

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