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VRの紺碧の海、紅のガレオン~女艦長スカーレットの冒険記~(改訂版)  作者: s_stein & sutasan


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また仲間の応募がありました

 夜の8時にゲームの世界へダイブすることが日課になってしまった。日課と言えば、ここしばらく母親の帰りが遅くて、毎日コンビニの唐揚げ弁当。毎日揚げ物を出す母親にむくれる私がこれでは、人の振り見て我が振り直せだ。でも、母親と同じく、私も直せない。


 出航前に何の気なしに仲間募集の画面を開くと、応募が2件も来ていてビックリした。急にどうしたのだろう? 今の私はレベル10でガレオンを操船出来る最低レベルだから、これくらいなら仲間にでもなってみようかと思うのだろうか?


 応募してきた一人は、スティーブ・アイゼン。青髪メンズロングのイケメンの軍人。レベル45。所持金400万強! 私より全然上なのに、どういう風の吹き回しだろうか。コメントは以下の通り。


「一緒に世界を回りましょう! ベータからやっていて、軍人のレベルアップのノウハウあります! 今、ガレオンの船団を組んで、海賊討伐に頑張っています!」


 なんか、ビックリマークを多用していて、熱く語るタイプみたい。確かにレベルアップしているし、強そうだし、頼れそうかしら?


 もう一人は、ガイウス・ユリウス・カエサル。歴史の教科書に出てきたあのシーザーと同じ名前よね? 黒髪リーゼントでこちらもイケメンの軍人。レベル50。所持金およそ500万! なんでまた、こんな私の募集に手を上げるなんて酔狂なことを。


「歴史は得意なのでお任せください。海戦の必勝法は詳しいので、お役に立てればと思います」


 こちらも、(つわ)(もの)って感じがするし、戦いになったときに助けてくれそう。


 イケメンに弱い私は、二人ともOKを返した。もちろん、多少は迷いがありましたよ。でも、コメントを読む限り、誰彼無しに声をかける人ではなさそうだったし。


 真っ先にチャットを接続してきたのはスティーブ・アイゼンさん。


『こんにちは! スカーレットさん! よろしくお願いします! わからないことがあれば、何でも聞いてください!』


 チャットでもなんだか熱い。リアルでもこんな人なのだろうか。


『こちらこそよろしくお願いします! スティーブさんとお呼びすればよろしいですか!?』


『全然オーケーです!』


『わかりました!』


『これからカリブの海賊を討伐しに行きます!』


『どちらですか!?』


『ハバナです!』


『頑張ってください!』


 うわぁ……、私まで伝染している。このテンション、どこまで続くのだろう。



 彼との交信が終わってしばらくして、ガイウス・ユリウス・カエサルさんが接続してきた。


『スカーレットさん。はじめまして。よろしくお願いいたします』


『こちらこそ、よろしくお願いします。ガイウスさんとお呼びすればよろしいですか?』


『カエサルでお願いいたします』


 なんか、落ち着いた雰囲気の人だ。早速、カエサルさんが質問をしてきた。


『今お持ちの船は何ですか?』


『キャラックです』


『それは、ポルトガルではナウ、スペインではナオって言います』


『そうですか。知りませんでした』


 この後、マストの違いとか、排水量とか、歴史的変遷とか、うんちくを傾けるカエサルさんは、相当歴史にお詳しそうです。


『すみません。熱く語ってしまいました』


『いえいえ。面白かったですよ』


 正直言わせていただくと、疲れましたが……。


『カエサルさん。一つ聞いていいですか?』


『どうぞ』


『なぜ、私みたいなレベルのプレーヤーの地方艦隊に応募されたのですか?』


『質問を質問で返して恐縮ですが、なぜ募集されたのですか?』


 この意図がわからず、質問の質問にまた質問で返していいのか悩む。すると、しばらく待っていたカエサルさんが書き込んできた。


『曖昧な質問で申し訳ありませんでした。レベル10なのに、とは申しておりません。レベル抜きで、なぜ募集を決意されたのか、です』


 私は正直に答える。


『仲間が欲しかったからです』


『それは私も同じです。ですから、応募しました』


『そうですね。それ以上の理屈は不要ですね』


『同感です』


 なんだか、いろいろな個性を持った仲間が増えて、ゲームが面白くなってきそうだ。チャットが一対一なのが残念に思ったのはこの時だった。

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