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VRの紺碧の海、紅のガレオン~女艦長スカーレットの冒険記~(改訂版)  作者: s_stein & sutasan


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先輩がもう一人いる?

 母親がトーストを黒焦げにしたため、私が自分で焼いて、漫画とかでありがちな「トーストくわえ(ばし)り」を実践することになった。学校へ予鈴ギリギリに登校すると、教室でココがニヤニヤして待っていた。私が着席するのも待ちきれないのか、立ち上がってススッと近づいてきて「どうだった?」と聞いてきた。


「何が?」


 そう言いながら、私は自分の席にたどり着き、お尻で椅子を動かして着席する。


「売り買いで儲かった?」


 私は、目で『その話はしないで』と隣に立つココへ訴える。それから、例の三人の席へ目を向けると、三人とも私たちの方を向いていて、すぐに目をそらした。


「例のウリカリサイトの話? 出品してないわよ」


 これで何を言いたいのか察したらしいココは、ははーんという顔をして「後で」と言う。もちろん、チャットのことだ。



 休み時間にチャットで、ポルトとリスボンを往復して所持金が8万以上になったことを伝えると、ココに賞賛された。あまりに簡単に儲かったので、賞賛されても嬉しくない。それからゲームの話で盛り上げようと話題を振ってみたが、ココの反応がいまいちだ。そこで沈黙してみると、ココが待ちきれない様子で書き込んできた。


『会長に会えた?』


 どうやら、これが一番気になっていたらしい。


『会えてない』


『おかしいなぁ。西に向かう戦列艦の大船団とセウタですれ違ったけど』


『なぜそれが会長の船ってわかるの?』


 急にココが沈黙した。しばらく待っていると、彼女の方から書き込んできた。


『直感だよ』


『知ってるの? 先輩の船の名前』


『噂ではダンデライオンとか、ミケランジェロとか』


『プレーヤー名は?』


『噂ではミカエルとか、ルシファーとか』


『ねえ。本当は知ってるんじゃない?』


 またココが沈黙した。さらに問い詰めようとしたら、彼女の方から書き込んできた。


『絶対に言わないで』


『うん』


『黙っててごめん。実はゲーム内で友達なんだ、会長と』


 私は全身が凍り付いた。


『昨日、セウタでそれらしい船団に会って、ダメ元で友達申請したらOKされて』


『なぜ先輩とわかるの? 相手から名乗ったの?』


『そう』


 嘘だ。そんなはずがない。


『なんて?』


『あの会長の名前を』


『ココはどうしたの?』


『試しに、うちの学校とか生徒会関係者じゃないと知らないことを質問したら全部正しく答えたので、こりゃ本物だと舞い上がっちゃって』


 私よりだめじゃん。


『そのプレーヤーの名前は? 船の名前は?』


『プレーヤーはユキムラ。船はムサシ』


 愕然とした私は、スマホを落としそうになった。


『どんなアバター』


『噂通り、男装の麗人』


『本当に信じたの?』


『まあ、ね』


『なりすましかもしれないわよ』


『噂通りだったし、カルトな質問は全問正解だったから、そこまで考えなかったなぁ』


『それ、絶対偽者』


『なぜそう思う?』


『えっ?』


『まるで、本物が別にいるのを知ってるような言い方だけど』


『直感よ』


 そうは投稿したものの、内心はドキドキが止まらない。ココと友達になった方が本物の先輩だったら、ラファエルさんは一体誰なのか?


『ま、そういうことにしておこう。後で偽者の会長って確定したら、友達を解除すればいいし、リアルで誘われたら断ればいいから。でも、カルト問題解答できるのは会長なんだけどなぁ』


 さあ、困った。


 (みず)()先輩の名前をかたるユキムラという人がいる。先輩の名前をかたらないが先輩らしいラファエルさんがいる。


 どちらを信じればいいのだろうか?



   ◆◆◆

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