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VRの紺碧の海、紅のガレオン~女艦長スカーレットの冒険記~(改訂版)  作者: s_stein & sutasan


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相場の変動のさせ方

 その後、私たちは交易所へ行き、シャルロットは魚を仕入れた。彼女は私に「同じ物を何度も仕入れると買値が上がり、同じ港で売りさばくと売値が下がるよ」と忠告する。まだ何を買うとも言っていないのに、なんだか、私が塩を買い続けることがバレているようだ。


 彼女は「魚が安くていいよ」と言うけど、暗に同じ物を買えと勧めているのだろうか? メニュー表の写真を見ると、魚は生魚になっていて、運んでいる間に腐りそうで気が乗らない。それに、積み荷の1部屋分が金貨400枚だから、私の場合は6部屋で2,400枚。これでは、大儲けできそうにない。


 ちなみに、彼女は1隻当たり4部屋持っている船を5隻所有しているから、20部屋ある。彼女はこれを全部魚で埋めたから、金貨8,000枚。いやー、いい買いっぷりですねぇ……。


 塩の値段を見ると、前回と同じく積み荷の1部屋分が金貨1,000枚。まだ値段が下がっていないから、チャンスかも知れない。6部屋分の塩を買ったので、所持金が61,660から55,660になった。


「ねえ。これ、無限に買えるの?」


 素朴な疑問を彼女にぶつけると、大いに笑われた。


「無限ソルト? そんなわけないじゃん。だんだん買値が上がり、仕舞いには欠品になって、次の入荷までしばらく待たされるよ」


「ああ、そこはリアルとおんなじなんだ」


「それをわざとやる手口があって、高値で売れる物を安いときにバカバカ買って、あちこちでドカンドカン売って歩く奴がいるんだ。積み荷部屋の数をMAXにした船を限界まで揃えて、交易所を荒らす奴がね」


「最大でどのくらい積めるの?」


「1隻のMAXは6部屋。船団のMAXは8隻。だから48部屋」


 めまいが起きそうになった。私なんか3隻で6部屋。その8倍だから、話にならない。


「驚いた……」


「でしょ? これをプレーヤーの間では『大航海爆買いツアー』と言ったり、『トロール漁法』と言ったり、『焦土作戦』って言ったりしてるよ。後から買いに来た連中は買値が上がってて、しかもしばらく欠品で待たされるし、大量に売られた先の交易所では売値が下がってて、手持ちがあっても売りにくくなる」


 塩を買った後、シャルロットは「セウタに行くけど、一緒に来ない?」と誘ってきた。まだポルトでの儲けが忘れられない私は、丁寧に断った。その後の連絡はチャットで行うことになり、ひとまず私たちは別れた。



 私は出港所では食糧も水も補充せず、すぐに旗艦へ乗り込む。すると、ミゲルたちの温かい歓迎を受けた。なんだか、ヒーローになったようで気分がいい。


 NPCの名前が、船員1、船員2よりも、こうやって名前があると親近感が湧く。彼らはゲームに登場する特別なキャラクターではなく、酒場で集めてきた船乗りだが、ダンジョンで魔物を狩るパーティーの仲間と同等に思えてくる。


 いざ海戦となったら? もし、彼らが負傷して死んだら? そんな別れはイヤだ。きっと、涙を流してしまうかも知れない。


(何としてでも、彼らを守るようにしなきゃ!)


 私は決意を新たにする。

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