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VRの紺碧の海、紅のガレオン~女艦長スカーレットの冒険記~(改訂版)  作者: s_stein & sutasan


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友達がいない三人のクラスメイト

 私たちの方を見ている三人とは、今まで話をしたことがない。それどころか、同級生と会話しているところをほとんど見たことがない。


 女子は、(もん)(ぜん) (とし)()さん。痩せ型で割と背が高く、お下げ髪に面長で、黒縁の眼鏡をかけている。休み時間も食事中も登下校時も、歴史の参考書、歴史の専門誌、それと歴史小説に没頭する、いわゆる歴女。話しかけるといつも不機嫌で無愛想なので、誰からも相手にされなくなった。


 一人目の男子は、(しお)(どめ) (あたる)くん。小柄で童顔なので、よく小学生と間違えられる。ゲームやアニメやフィギュアの話をしている輪の中へ「それはですねぇ」と言いながら飛び込んでいき、豊富な知識で熱く語るいわゆるオタクで、その濃ゆい話にクラスの誰もがついて行けず相手にしなくなったら、「黙ってりゃいいんでしょ!」とキレてしまい、それ以来誰とも口を利かなくなってしまった。


 二人目の男子は、(だい)(もん) (たか)()くん。身長が190センチ以上の(きよ)()だが、体型に似合わず常におどおどしていて、クラスメイトとは一切口を利かず、朝の出欠確認の時と先生から授業中に指された時にだけ声を聞くことが出来る。嫌がらせを受けたり、いじめられたり、どんなに殴られても無口なので、かえって心配だ。


 この三人が「交易」の単語に一斉に反応したような気がするが、ゲーム好きの(しお)(どめ)くんだったらVRゲームまでやっていそうだけど、後の二人は不明。(もん)(ぜん)さんは歴女だからかも知れないが。


 三人の視線を気にしていると、ココが私の袖を引っ張った。


「ねえ、何?」


「シッ!」


 私はココの言葉を遮り、彼女の耳元でささやいた。


「話の続きは、チャットで」


「ん?」


「こっち見ている人がいるから。あっ、一緒に見ないで」


 私たちは着席すると、ほぼ同時にスマホを取り出し、チャットを開始した。まず、待ちきれないココが書き込んできた。


『誰が見ていたの?』


『あの無口な三人』


『ああ。オタク二人と、巨人くんか』


 ココにとっては、歴女はオタク扱いのようだ。


『特に、オタクの彼、例のVRゲームしてそう』


『可能性あるね』


『バリバリやってたりして』


『チートかもよ』


『マジで!?』


『いや、適当に言ってる』


『ところで』


『ところで』


 二人の書き込みがだぶった。


『ココからどうぞ』


『こーみからどうぞ』


 また書き込みがだぶった。思わず、吹きだしてしまう。


 少しの間が開いて、ココが書き込んできた。


『聞きたいことって何?』


『手がかり。昨日、聞き損ねた』


『ああ、会長のね』


『教えて。ゲームに参加したんだから』


『耳掃除をして刮目せよ』


『チャットで何故耳掃除?』


『まず、一つ目の手がかり。会長は、もうフル装備の戦列艦をMAXで固めている。そんな船団を持っているプレーヤーは多くない』


『そんなに凄いの?』


『だって、それがあのゲームでのMAXだから』


『いったい、何時間プレイしているのかしら』


『超人は寝てないんじゃない?』


『まさか』


『会長はチート能力を手に入れたかもね』


『それはない!』


『二つ目は、その戦列艦オンリーの船団が今度、遙か東の海域を拠点にするらしい』


『ってことは、まだヨーロッパとかにいるの?』


『新大陸、北海、地中海、アフリカ、インドのどこかだろうね』


『ほぼ全部じゃ~』


『正解』


『どんなアバターかという情報は?』


『信頼できる情報かわからないけど、銀髪のロングヘアで軍人、黒髪のショートヘアで軍服を着た男装の麗人という情報がある』


『真逆に思えるけど』


『噂だからね。信じるか信じないかは、こーみ次第ってやつ』


『でも、軍人なのよね?』


『戦列艦で固める商人や冒険家はいないよ。目的が違うし』


『わかった。夜、またインする』


『おっ。合わせるよ。8時でいい?』


『いいよ。私はリスボンから再開する。まだポルトを一往復しただけ。塩とワインで儲けたいから、もう少し往復する』


『了解。今、バレンシアにいるから、リスボンへブドウとオレンジを売りに行くよ。ゲーム内のチャットで知らせるから』


『わかった』


 ちょうど、予鈴のチャイムが鳴った。私はポケットへスマホをしまう。そうして、教室に入ったときに私たちを見ていたあの三人の方へ順繰りに視線を向けた。すると、三人とも私の方を見ていて、なぜか目が合うと向こうから視線を切る。


 普段、クラスの誰とも話をしない三人が、揃いも揃って私を見るのは、ココの会話を遮って彼らの方を見たからだと思う。つまり、聞かれたくない話をしていたということを態度で表してしまったのだ。だから、気になって見ているのだろう。


(まさか……あのゲームをプレイしていることを気づかれた?)


 交易の話が聞かれたくない内容だと気づいたのなら、グランド・デクヴェルトの話につながるのは時間の問題だ。もう気づいていてもおかしくないだろう。


(これからも、会話でゲームに関わる内容は要注意ね。チャットだけにしよう)


 私は、そう心に決めたのだった。



   ◆◆◆

新登場の三人の名前は駅名で始まりますが、下の名前は「太陽暦」の文字から一つずつ取っています。

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