出港の準備をいろいろしてみた
あっという間に出港所へ移動した。今度、メニューをタップする直前に、「とおっ!」って言ってジャンプしてみようかしら。
雰囲気は造船所と同じで、部屋の奥に窓が3つあり、今度は鍔のない帽子を被った青年が三人いた。またもや、三人は親戚かと思うほど顔が似ている。画面を消して真ん中の窓に近づくと、くりくりとした目の青年が笑顔で迎えてくれた。机の上には小さなメニュー表があり、「食糧 1」、「水 1」、「資材 2」と書かれている。
「これ、どういう意味?」
私は青年ではなく、シャルロットへ尋ねる。
「食糧の1は、一人当たり一日金貨1枚という意味。水も同じ」
「どんだけ買えばいいの?」
「一人当たり一日で食糧を金貨1枚分、水を金貨1枚分、合計金貨2枚分消費する。三十人雇うんでしょ? 自分を入れて三十一人が十日間航海する場合、食糧に金貨310枚、水にも310枚いる計算になる」
「計算の仕方はわかったけど、そもそも、今の船にどれだけ積めるの?」
「いい質問だねぇ。あの中古のキャラベル・レドンダには、積み荷の部屋以外に物資の部屋が1隻当たり2つある。1つの部屋に百人の一日分の食糧と水が入る」
「3隻あるから六百人分の一日の食糧と水ってことね。金貨600枚プラス600枚で、1,200枚かぁ。えーと、切りよく三十人で割ると二十日間ってこと?」
「ご名算。自分は絶食するんだ」
「しない」
私たちが話し合っていると、青年が「ところで、船員が四十人いるけど、いいかい?」と訊いてきた。彼がいつの間に私の船を知っていて、もう集まった船員を数えてきたというのが謎だが、ツッコミはやめた。こういう嘘っぽい出来事はゲームだからと割りきるしかないのは頭では理解しているのだが、リアリティのあるゲームの中で見せられると超人的能力に思えてくる。
「三十人でお願いします」
「じゃあ、給料として金貨300枚もらうよ。食糧と水と資材はどうする?」
「十日分で。資材は……」
私はシャルロットに助けを求めると、彼女が「10」と言うのでそのまま「10で」と答えた。
「じゃあ、金貨640枚だな。全部で940枚。毎度あり。船に積んでおくから」
積んでくれるとはサービスがいい。しかし、どうやって金貨を支払うのだろう。私は画面を表示させて支払いのメニューを探すと、すでに所持金が50,060になっていた。船の代金の9,000もいつの間にか引き落とされている。これでは、財布からお金を出して「支払った」という気持ちにならないので、どんどん買ってしまいそうだ。クレジットカード払いみたいに注意しないと。
「次は、交易所に行くよ」
「うん」
シャルロットと私は画面を再び表示させ、メニューの「交易所」をタップした。
◆◆◆
これまた、あっという間に交易所へ移動した。雰囲気はやはり造船所と同じで、部屋の奥に窓が3つあり、今度は鍔のない帽子を被った女性が三人いた。お約束通り、親戚同士という顔をしている。画面を消して真ん中の窓に近づくと、笑顔の女性が「いらっしゃいませ」と迎えてくれた。机の上には大きなメニュー表があった。商品の写真付きメニューという感じだ。
写真の下に2つの異なる数字が併記されていた。
「ねえ、この数字は何?」
またシャルロットに尋ねると、
「売値と買値」
交易となると、さすが商人のシャルロットは目を輝かせている。
「基本は、安く買って高く売る、だよ。どこの港町へ行くかによって、損得が決まる。だって、何が流行っていて高く売れるかが場所によって異なるからね」
「それはどこを見ればわかるの?」
「経験と勘さ」
「そんなこと初心者に言われても……」
「事実だから仕方ない」
「手探りで実行するの? めんどくさー」
「じゃあ、ポルトに行くか。リスボンの北で、近いしね。塩を買ってポルトで売って、ポルトでワインを買ってリスボンで売る。これを繰り返すんだね」
「なるほど」
「同じ商品を売ることをずっと繰り返すと港町では在庫過剰になって、買い取ってくれる値段が下がるから、そのタイミングで違う商品を仕入れる、あるいは別の港町へ売りに行く。そこの港町でも下がったら、違う商品を仕入れる、あるいはさらに別の港町へ売りに行く」
「どんだけ買えばいい?」
「ドンと買っちゃえ」
景気のいい言葉を吐く彼女は経験者の商人のはずなのに割といい加減だなとは思いつつ、塩を6つの積み荷の部屋に入るだけ買うことにした。1つの部屋に入る量の塩は、金貨1,000枚。6つで6,000枚。これで所持金は44,060になった。ずいぶん減ったような気もするが、ちゃんと売れて所持金が増えるだろうか……。なお、塩は船まで運んでくれるというから、こちらもサービスがいい。と言っても、女性がエッサエッサと運ぶ様子はなく、デンと座ったままだが。
「これで準備オーケー」
「ありがとう。一通り教わったから、今度はクイックモードが知りたい」
「また後でね。ってか、自分で調べて。それじゃ、もう一度出港所へ行こう。いよいよ出港するよ」
「うん」
シャルロットと私は画面を再表示し、メニューの「出港所」をタップした。
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