誰が喚んだか
大蛇のディーヌさんのとこから戻った僕は出迎えたじいちゃんに開口一番もんくを言いまくった。
それを平然と笑って聞いていたんだからじいちゃんはクロだったんだと確信した。
やっぱりドッキリ企画仕掛けたんだな
「ファンタジーを堪能できたろ、おまけに正式にこの世界の人族の仲間入りが出来たのだから万々歳じゃないか。銀次郎もう許してくれ」
反省するどころか自慢気にいわれてもねぇ
「もういいや、怒っても無駄だし。だけどさっき気がついたんだけど異世界人がここに来た途端に環境が合わないで死んじゃうかもしれないとか、そんな危険性は考えてなかったの」
「いいや、これっぽっちも思わなかった」
スッと真顔になって今気がついたとばかりに僕をみながら、じいちゃんはそう言った。
やっぱりだよ
「じいちゃん!」
「そんな怒るな、ここの人族と地球人は見た目が同じだったし、お前より何百年か前にも種族ごと喚ばれてきたのもいたからな。地球人がダメだなんて考えたこともなかった」
僕以外にもいるのか
「その人たちもじいちゃんが喚んだの」
じいちゃんは大木だけどそんなに古い木には見えない
「ワシにそんな力はない。精霊として生まれて20年ほどか、トレントの中でも若木のほうだぞ」
若木なのにディーヌさんにジジイ呼ばわりされてるの、なんか変な感じ
「精霊は人とは違う霊的存在のせいか知らんが、たまに前世の記憶を持ってるものもいるのだ。たいていは無邪気な子供のような精神で生まれてくるがな」
「でも年上のディーヌはジジイって」
「精霊には寿命という概念がないからな、100年で成人ほどの精神年齢になるものもいれば、千年たっても幼いままのものもいり。そいつらから見たら前世の記憶をもったワシは生まれたときからジジイだぞ」
なるほど、でもじいちゃんにババアと言われたディーヌさんはさ自分を乙女とかいって年齢を気にしているような感じだったな。そもそも精霊に男女の区別があるのか
「精霊に性別ってあるの」
「精霊に男も女もない、自称するのは前世の記憶を持って生まれてきたものたちだけだ。ディーヌも前世は貴族らしくてな、何歳まで生きたのかは恐くて聞けんよ」
そりゃそうだ、女性に年齢は禁句だもんな。まして怪獣並の大蛇だもん、くわばらくわばら
そこでアレッて思い出した
「じいちゃん自分には異世界人を喚ぶ力はないって言ってなかった。だったら誰が喚んだの」
僕よりアポーツの力が強い人でもいるのかな、魔法のあるファンタジーな世界だし
「神様だよ」
神様ですか、大きくでましたね
「この世界はとある神様が気まぐれでた創った箱庭でな、宇宙自体も若くて生物の住む星は数えるほどしかないらしい」
ほほう
「その神様がこれまた気まぐれで何億年かまえに神様を辞めてた転生の輪に飛び込んでしまったのだ」
神様のリクルートか
「あとを引き継いだ神様がせっかちでな、この星の分化が停滞しそうになる度に別の文化をもつ民を移民させてくるのだ」
「それって誘拐じゃん」
「大丈夫だ、喚ぶ前は必ず民の前に降臨するなり夢枕にたつなりして意思の確認はしているが」
「しているが」
「なにぶん神様だからな、来いと言われてイヤですと言える者はまずいないだろ」
神様相手にノーと言える地球人は欧米人くらいか、日本人はイエスマンだし
「そんなわけで、お前にしても他の者にしてもこの星で生きられんような生物を神様が喚ぶわけないということだ」
じいちゃんはその巨木を後ろに反らし、枝を使って腕を組むような真似までして威張ってる。
もう召喚に関してはなにもいうまい、神様の御業といってしまえば何でもありで終わってしまいそうだ
はぁ、とため息をはく僕を見ていたじいちゃんが、
「そうだ、せっかく魔力を身につけたんだから今日から魔法の修行も始めよう」
キタキタキタ、イエス魔法、炎に電撃、箒で空を飛ぶぞ
妄想に浮かれる僕の頭からつま先まで何度も視線を往復させたじいちゃんが衝撃的な感想をつぶやく。
「なんかぱっとしない魔力だな」
うぉい
「ババアの水をちゃんと飲んで来たのか、とても大魔導師にはみえないぞ」
なんだそうゆうことか。分かってないなじいちゃんは、人並みの力があればじゅうぶん何だよ。庶民派魔法使い銀次郎の冒険がしたいの、強すぎて目立つと厄介ごとに巻き込まれるのが常識じゃん
「並の魔法使いでいいんだよ、これがベスト」
んーと困ったようなじいちゃんが、
「それにしたって、その魔力は並みどころか下の上から下の中程度の魔法使いにしかなれんぞ、一般人より魔法が使えるたけましってとこだな」
思った以上に庶民派でした
「もう一度ディーヌ様のもとへ行かなければ」
あわてて走り出そうとする僕をじいちゃんが呼び止める。
「行っても無駄だぞ、あの水の使用は神様の許可が必要なんだ。今回は異世界人のお前をここの人族に変化させるためていう大義名分があったから特別に許可を貰えたんだ。諦めろ」
諭すように言う。
「魔法使い銀次郎の冒険は」
じいちゃんの木にすがる
「魔法が少し使える銀次郎の冒険に変更だな」
オー、マイゴッド
「今日は日常会話上級だけにしとくか」
「えー、日常会話上級というのは普段使わない形容詞や特殊な文法を用いる場面での」
魔法のファンタジー世界で魔力が並み以下って
バサリ、ドカッ
「そこ、授業は真面目に聞くように。今のお前が貴族にでも出くわしたら一言話しただけで首が飛ぶぞ」
異世界の貴族怖い、日本が恋しい
「泣くな、明日は魔法を教えてやるから」
イエス魔法、弱くたって冒険してやるぜ
「つまり明治の文豪がアイラブユーを月が綺麗だと訳したように、形容詞の使い方で特定の意思を表現するような場合が」
弱い魔法、ちっちゃいファイヤー?魔法のそよ風?必殺、砂で目眩まし
「電撃」
バリバリ
あがががが
「他の者に使えないような特殊な属性魔法に興味はないか」
「先生、授業を進めて下さい」
「現金なやつめ」
「アイラブユーは月が綺麗だ」
「それは例え話だから忘れろ」
「先生はばあちゃんにそうやってプロポーズしたんですか」
「電撃」
バリバリ
「、、、すみません、授業を続けて下さい」
「よろしい」




