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Toy ガンナー  作者: チョーゆんふぁ
第二章 別世界の入口
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死水と変若水

じいちゃんとの言語の特訓も2ヶ月目に入った頃なんとか日常会話中級編の及第点を取った。


色々と酷い罰とゆうか拷問を受けた

太い枝ではたかれるとか逆さ釣りや泉にバッシャンなんて遊びも同然、かぶれないけどとにかく痒くなる草の汁を塗りたくられるのが上級、最悪だったのは正座で痺れた足にピンポイントの電撃魔法のコンボだよ


唯一の慰めは勉強初日の夜、見たことも聞いたこともない言葉を無理やり脳に詰め込む作業と間違えるたびにされる罰に見も心もクタクタになっていた僕は向こうの世界のアパートに置き去りにしてきた、エアガンのコレクションを無性に弄りたくなった。

横になっても悶々として眠れやしない、ハンドガンにライフル、そしてリボルバーのホルスターからの抜き撃ち。

始めは手を銃に見立ててや夜空に浮かぶ月に向かってバーン、バーンと撃つ真似をしていたが、興がのってきて立ち上がり西部劇のガンマンみたく芝居気たっぷりに腰にある見えないホルスターから見えないコルトSAAをクイックドローで抜き撃つ

パン

僕の右手の中に幻ではない重量感と月光に輝くガンブルー存在感溢れる僕の銃がそこにあった。


諦めていた物がこの手に


完全に絶ちきれたと思っていたあの世界の思い出が次から次へとよみがえる

僕の能力アポーツは距離も世界も越えられる

ならば呼び寄せられる物は根こそぎだとばかりにエアガンのコレクションはもとより装備品やメンテナンス道具、あの日送別会で写メを撮った携帯にアルバム、USB接続型のソーラー充電器、釣具にアウトドアツール、誰かに処分される前に思い付くもので能力制限にかからないものは全てアポーツした。


その夜せっかくアポーツしたテントから荷物に追い出された僕は寝袋に包まれ外で寝ることになった。


幸せな気分で心地好い眠りについた。



翌朝は思いきり寝坊して泉に放り込まれたのはオマケみたいなもんだ。



それ以来暇をみつけては気晴らしに撃ちまくった、生分解性のBB弾だから森を荒らすことはないし適度にストレスも解消出来て勉強もちょっと進みが早くなった。



そんなこともありながら日常会話中級な僕はこの世界にきて初めてじいちゃん以外の人(なのか?)に会うことになった。

異世界人の僕が魔法を使えるようになるためにはどうしても会っておかなければいけないそうだ。


木の精霊トレントのじいちゃんは移動が出来ない、絶対に動けないわけじゃないけど1日に数センチが限界なんだって

地面に根を張ってるわけだから無理もない


僕が一人で会いに行くことになった

でも未知の森を進むのだから気分は子供の初めてのお使い並みに心細い、一応じいちゃんに貰った魔法のや指輪、正しくは聖樹の指輪というらしいがこの指輪はじいちゃんと繋がっていて森や林の中なら僕の居場所がわかるらしい、それと僕がアポーツしたトランシーバーでナビゲーションしてくれるから迷うことはない。

三十路のお使いで迷子になったら末代までの恥だ


慣れない森を3時間は歩きようやく目的地についた。


そういえば相手の方は僕の来訪を知っているんだろうか、アポをとってからまた出直しとか極度の人見知りで会ってもらえないとかだったらどうしよう、菓子折りの1つも持ってきてないし

ダメだったらじいちゃんの樹液らしいあの鼻水をタッパーに詰めて持ってこようトレントの樹液は貴重だとか言ってたもんな


そこにはトレントじゃないが高さ100メートルはありそうな2本の大木の間にポッカリ大きく空いた洞窟があった。象どころかダンプカーが入れそうなくらい広い入り口だ。もっとも入り口には鍾乳石が天井と地面から等間隔に生えているていて隙間の広い檻みたいだから実際入れるのはバイクぐらいだろう。

まずは外から、

「ごめんなさいくださーい、泉の近くに生えているトレントの紹介で伺いました」


中まで聞こえないのかな

仕方なく鍾乳石の間を通って洞窟入っていく、

ひゅーひゅーと生暖かい風が吹いてきたり逆に洞窟に向かって吸い込まれたりしている、もしかしたらこの先に出口かあるのかも知れない、弱い風だけど正面から押し戻されたり背中から押されたり、地面も弾力があって歩きづらいし首筋がゾクゾクする。

あ入り口から10メートルも歩かないうちから帰りたくなった。

「お邪魔しますー、どなたか居ませんか」


返事がない、ただの無人洞窟のようだ。


いや、トンネルか

出口までどれくらい長いのか知らないけど怖くて進む勇気がないよ、僕は冒険者に向いてないのかも

「誰もいませんね、お邪魔しましたまた出直して来ます」

トランシーバーにむかい、

「こちら銀次郎。じいちゃん、突然押し掛けたから留守みたいだよ、もう帰るからね」

せめて事前情報でもないと行く気になれない、幽霊トンネルの肝試しドッキリじゃないんだから

僕のトランシーバーからじいちゃんの声が聞こえた。

「ババ様いるんだろ、孫にあれを分けてくれんか」

だから留守なんだってば帰らせてよ、とトランシーバーに言い返そうと思ったとき、

「誰がババアよ、アタシは永遠の乙女よ」

洞窟全体から響く女性らしき声にギョッとした。

「取り敢えずあんたもアタシの口から出なさいよ、ジジイも孫も非常識なんだから」

よくわからないけどパクパク閉じたり開いたりし始めた洞窟の入口目指して死ぬ気でダッシュする。

ファンタジー洞窟怖い

なんとか入り口が開いてるすきに飛び出す事ができた。そのまま逃げ帰ろうとしたら後ろから、

「ちょっとお待ちよ、一言謝りもなしにいっちまうつもりかい」

その言葉に思わず足が止まり、恐る恐る振り返ると閉じた洞窟の上に巨大な一対の目があった、

「洞窟に目がある、生きている洞窟さんですか」

まさにファンタジー

「本当に失礼なヤツだね。誰が洞窟ってのさ、バカ言うんじゃないよ」

「すみませんトンネルさんでしたか、実は僕はこことは違う世界から最近来たものですからこちらの常識には疎くて、大変失礼しました」

トンネルを洞窟と間違えるのは彼女のプライドが傷つくのだろう、行き止まりと貫通には階級差があるのかもしれない

「まだまだ失礼しっぱなしよ、アタシはトンネルでも洞窟でもないわよ。何なの、アンタのいた世界にはアタシみたいな美しい蛇って生き物がいなかったの、どんな野暮な世界よ」

プンプンと怒るトンネル、もとい蛇のお姉さん。迫力ありすぎて送別会の時のマヤちゃんが可愛く思えてきた。小さな家なら丸飲み出来そうな蛇にくらべたら酔っぱらった虎ぐらい



え、蛇。蛇ってあのにょろにょろした蛇のことですか

「実はこちらの言葉もまだ完璧とはいかないんですが、蛇っていうのは長くて手足が無くてとぐろを巻いたりする生き物で合ってますか」

自信がない、大木に挟まれたこんもりとした小山に目と口があるだけにしか見えない、正面からじゃ胴体が見えないし

もしかしたらほぼ頭だけのツチノコか、ファンタジーなら未確認生物でもなく当たり前に生息していても不思議じゃない

「知ってるじゃない、その蛇で合ってるわよ」

長い蛇で合ってるのか、ツチノコ見たかったな

「すみません、でも頭しか拝見できなかったものですから」

一応頭を下げて謝る、間違えたのは不可抗力だと思うけど

「あら、アタシの流麗なボディを見たかったの、本当はアタシも全身を出したいけど巣から出ると森が大変なことになっちゃうから特別な時でないとダメだって取り決めがあるのよ」

「それは残念ですね」

ははは、と愛想笑いをしながらそんな場面に出くわさないことを祈った、

下手に出くわしたらプチッて轢かれちゃうよ

「では御挨拶もできましたので失礼します」

本当は写メの1つも撮るイベントだが、お願いする勇気がない

そそくさと帰ろうとする僕に、

「アンタ何しに来たか忘れたの、挨拶で終わりじゃないわよね」

「ごめんなさい、勘弁してください、僕なんて食べても不味いですから」

お願い、食べないで

「誰がアンタなんて喰うのよ、アタシは水の上位精霊だから食事なんて必要ないのよ、まして人族なんて」

シャー、と威嚇音を出しながら怒鳴られた。

良かった、けど何しに来たんだっけ。驚くことの連続で忘れちゃった

「アンタこの世界の生き物じゃないから魔力が全然無いんでしょ」

そうでした、確か魔法が使えるようになるためにこの大蛇さんに会いに来たんだった

「はい、あなたに会えば魔法が使えるようになるってじいちゃんに聞きました」

「なのにアタシを見て驚いたり、あのジジイからアタシのこととか聞かされてなかったの」

彼女が首をかしげる、それだけで大木がメキメキと悲鳴をあげた。

動かないで下さい、葉っぱや枝がドサドサ降ってくるんで

「じいちゃんが行けばすぐ分かるからって」

「何考えてるのあのジジイ」

多分子供の頃に一緒にテレビで見た初めてのお使いと芸能人のドッキリ企画をやりたかったんだろう

「分かりません」

と言ってみた。

この世界の娯楽として流行らせてはいけない気がする

「まあいいわ、他人の家庭に口をはさむきはないし。とにかくアンタのジジイに頼まれたのはアタシの持ってる変若水をちょっとばかり分けてくれってことなのよ」

そうそう、変若水(おちみず)です、神話とかにでてくる浴びれば不死になるとか云われている神聖な水。この世界では実在するらしいが不死になるほどの効果はない。しかし飲めば長寿を得て若返りもする、おまけで魔力もアップしてエリクサーと呼ばれる復活の水と並ぶ伝説的な聖水なのだ、ってじいちゃんが言ってた

「効果が強いから飲めば千年は生きる大魔導師になるるわよ」

いやいや、そんなんなったら俗世で暮らせなくなりますがな、山にこもって仙人になりたいならともかく僕が望のは仲間を募って魔法とか使いながらこの世界を冒険していずれは家庭をもって孫に囲まれ思い出とともに生涯を終えるハッピーエンドなの

計画通りにはいかないだろうし道半ばに倒れるかもしれないけど、最初の一歩で孤高のエンディングルート一直線はないわ

「もっと控え目な水はありませんか」

聞くだけ聞いてみる

「人族にしては身の程を弁えてるじゃない。それならアタシの変若水と死水特製ブレンドを頭から浴びなさい」

突然僕の頭上に水の塊が現れたと思ったらそのまま降ってきてザバッと全身ずぶ濡れになった。

「程よくブレンドしたけど飲んじゃダメよ」

いきなりやってそんなこといわれても、口にも入ったじゃないか、ペッペッ

「少し飲んじゃいました」

大丈夫なのか

「あー、少しくらいなら大丈夫じゃない。多分」

多分かよ

「とにかくこれでアンタも魔力を得たし5,6歳は若返ったんじゃない、体もこの世界の人族と同じに変化したから子供も作れるわよ、アタシに感謝なさい」

この水が無かったら結婚しても子供は出来なかったのか、考えてみれば異世界同士だし遺伝子はもとより色々と違いがあるのは当たり前か、この星の大気が地球人にも合ってたり重力も違和感が無かったのは奇跡だな

じいちゃんはそこまで考えてなかったろうな、下手したらここに来たとたん窒息したり高重力で潰れていたりした可能性もあったはずだ

「大蛇のお姉さんありがとうございました」

マジで感謝します

「アタシの名前はディーヌよ、これからは感謝と尊敬をこめてディーヌ様とお呼び」

ははー、と五体投地し、

「この御恩は生涯を忘れません」

魔法が使えるし子供も出来る、さっきから肩のこりも腰の痛みもなく体が軽い

若いっていいな

「さようならディーヌ様、お元気で」

行きとは違い帰りは鼻唄がでるくらい足どりは軽かった。


「少し飲んだっていってたけど、大丈夫よね。せいぜい寿命が300年伸びるくらいかしら。エルフのハーフ程度ね」




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