秘薬
その日のうちに村長にカラスを渡してカラス避けの仕組みを教え、その足でトライホーンに狼を載せた荷車を繋いでフォトキワの町に帰ってきた。
かなり飛ばして来たのでトライホーンには無理をさせたが夕方町に着いた時には僕は虫の息だった。
とにかく痛くて息苦しくてダルかった!
狼に噛まれた傷口はグジュグジュに膿んで高熱をだし3日間寝たきりになってしまった。
幸いこの世界には高額だが抗生物質らしきものがあり狼の魔獣の毛皮を売った代金で買うことが出来た。
思わぬ出費でブロンの肉祭りは中止になってしまったのは少し申し訳なく思う。
「気にするな、怪我が治ったら肉狩りに行くぞ」
その言葉に甘えることにしてしっかり療養することにした。
そして療養生活も7日が過ぎ医師と回復魔法師から完治のお墨付きをもらい久々のギルドの酒場で快気祝いの酒盛りをダニロさんのおごりで開いてくれた。
「銀城のハンター復活を祝って、乾杯!」
リーダーで主催のダニロさんの音頭で僕は待ちに待ったエールを一気に飲み干す。
「旨い、けど頭がクワンて来たー」
「銀城は弱いんだからほどほどにね」
「構わねえよ、ぶっ倒れたら俺が担いで帰ってやるぜ」
ブロン、いいこと言った。それでこそパーティーだよ。
「おら、ジンもしっかり食えよ」
ダニロさんは青菜や果物をジンの前の皿に盛り付ける。
「ジンがいなけりゃ銀城もヤバかったからな、大殊勲だ」
「いやもう、ダニロさんのおっしゃる通り。ありかとなジン」
「キュー」
「まったく大したもんだぜ。魔獣の鼻っ面にガツンと喰らわしたんだろ。俺も見たかったぜ」
「そこの4人組、うちはペットお断りだ!」
カウンターの向こうからオーガの無愛想な怒鳴り声が聞こえてきたがふざけるな!
「「「「ジンはパーティーの仲間だ!!」」」」
「キュー!」
「うぉっ」
流石の人食いオーガもダニロさんにまで言い返されると思わなかったんだろう。目を見開きアゴを落として驚いてるよ。
「あの親父さんはほっといて仕切り直しだ。ガンガン食って落ちた体力を取り戻せよ銀城」
「うっーす」
この世界も病人食は味気ない麦の粥だったからしっかりした味付けの食べ物が嬉しいよ。
ありがたい、いただきまーす。
旨いもんを食べられるって幸せだ。
「これからのことだが食べながら聞いてくれ」
「あん、肉狩りのことか?」
ブロン、口一杯に肉をほおばって更に肉にいきますか?
「肉はおまけだね」
「と言うとメインは何ですか」
また猪を狩ってお土産に肉を貰うとか?
それとも虫系がメインでついでにウサギ狩りをするみたいな?
「銀城のリハビリで大物狙いはキツいだろ。そもそもろくな魔獣討伐の依頼も無いしな」
「じゃあ山奥で希少薬草の採取か?かったりいな」
「先日銀城の治療で病魔消しを使ったろ」
病魔消しとはここで言う抗生物質のことだ。顕微鏡とかで細菌を発見したとかじゃないが昔からの経験則で体内に目に見えない病魔が入り込むと高熱を出したり壊死したりすることがあると世間に知られている。
その対策に病魔消しと言われる特殊な薬があるそうだ。
僕もその薬のお世話になったので効果は身をもってばっちり知っている。
「あれスゴく効きましたよ」
「この町にある病魔消しの在庫が心もとないらしい」
それは大変だ。
「んー、つまり病魔消しの原料を取りに行くと」
「その通りだマギ」
「まあいいや、それでその薬草は何処に生えてるんだ」
「それが原料は薬草じゃ無いんだ」
「じゃあ魔獣の角か内臓か?へへ、やりがいが出てきたぜ」
「おしいな」
「もったいぶるなよ」
ダニロさんとブロンのやり取りを食べながらボーッと見ていた僕をダニロが突然指差す。
「何ですかダニロさん」
急にきたからドキッとしたよ。
「お前の爺さんだ」
「じいちゃん?」
ダニロさんはうんうんと大きく頷きもう一度はっきりと言い直した。
「病魔消しの原料はトレントだ」
僕にじいちゃんを狩れと言うのか?




