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Toy ガンナー  作者: チョーゆんふぁ
第三章 ハンター編
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スライム駆除 終了日

今日も朝一でやって来ました。


僕とマギさんは西端で灰汁のタライを5個と2つのバケツに長柄ザルを4本差して、更にスライム用の毒団子を60個積み上げた。

これらは夕べの酒盛りを早めにきりあげてマギさんと二人でせっせと準備したものだ。

ブロンはまだ飲み足りないとブーブーうるさかったからダニロさんに付き合わせてもらった。

これから一ヶ月は酒を飲めないんだからせいぜい今のうちに飲み溜めておけよ。




そしていつものサマージさんの朝礼が始まる。


「王都に行きたいかー」


「オー」


もはや数人のノリのいいやつだけが応えるだけだった。

恒例行事が終わりそれぞれがバラバラに持ち場に向かって動き出すその背にサマージさんの声が続いた。


「業務連絡、業務連絡、昨夜森の調査を依頼していたハンターからスライムツムリの目撃があった」


スライムツムリ?なにそれ。


「ようやくかよ」

「今年は早い方だろ」

「なんにしろ、これで解放されるな」


みんながホッとした感じでザワザワしてる。

なんだろう。


「ダニロさん、スライムツムリってなんですか」

「お前マジでなんも知らねえな」

ブロンに呆れられるのは癪だな。

「銀城、本当にどんな所で暮らしてたんだ」

ダニロさんがグイと顔を寄せて目を覗き込んできた。

マズイ、本気で不審に思われた。

「実は記憶喪失で昔の事を」

「なに、そうだったのか」

「違うよブロン、銀城は農家の三男だか四男だろ」

しまった、そうゆう設定だった。

「銀城、これが終わったら本当のところを詳しく聞かせてもらうからね」

これ以上はその場しのぎじゃ、誤魔化せそうにないな。

「分かりました、この件が終わったら全てお話しします」

この人達なら話しても大丈夫だろう。それくらいは信じられる。


「よし、話しはここまでだ。今からはスライムだけに集中しろ。終わり間近で大怪我なんざ目も当てられねえからな」

この場はダニロさんがきっちり締めてくれた。

それで思い出した。

「すみません、結局スライムツムリって何なんですか」

それが聞きたかったんだよ。


「スライムツムリっていうのはスライムを好物にしている虫なんだよ」

あれを食べるのか。

「虫の中にもブロンみたいなヤツがいるんですか」

「俺は喰わねえよ」

一回食べたじゃん。

「いや、ブロンより食い意地がはってるんだよ。平然とスライムに食いついてチュルチュルと吸い込んでいく様子は必見だよ」

「スライムツムリはこの時期だけ現れて片っ端からスライムを食いまくるんだぜ。そんで腹一杯になったら卵を産んで死んじまうだ。ツムリ様々だな」


蝉かホタルみたいな一生なのかな。


「つまり、スライムツムリが来たってことは今年のスライム駆除も大詰めってことなんだ。後はツムリが勝手にスライムを始末してくれるのを待てばいいんだから」


だからみんな喜んでるのか。

スライム駆除は装備を確実にダメにするのに実入りは領主や町からの安い日当だけだもん。

僕もダメになったロングソードを買い換えなくちゃいけないし、割に合わない。


「ちくしょう、もっとスライムを斬りてえのに」

やめろブロン、空気読めよ。まわりの目が痛いだろ。


「ともかく、それでも今日はスライムは出るからな。気を引き締めていくぞ」


「「「おう」」」



だんだん日が高くなり気温も上がってきた。

ムッとするような濃い緑と土の臭いに初夏の陽射しが小学生の頃の夏休みを思い出させる。

ノスタルジー?まさかホームシックか?

やってることは子供時分の冒険ゴッコの延長みたいなんだよな、下手すると命を落とすけど。



「俺が1番槍だー」

東側から気合いの入った声が上がった。


「マギ、ブロン、銀城。今日の仕事が始まるぞ」


「マギさん、夕べ頑張って用意した分は使いきりたいですね」

「まったくだよ。でも今日で終わりにしたいね」


僕らの前の茂みの奥からがガサガサと草木を掻き分けて何かが迫ってくる。

距離は30メートル。


待つだけってのもなんだし、なんかいたずら心がムクムクと。


スライムに火は厳禁、かといって草なんか溶かされるだけ、僕の土魔法はバケツ5,6杯の土を動かす事が出来る程度で土が石みたく固くなるわけじゃない。

となると雷魔法しか無いわけで。


「マギさん、森の中にいるうちに雷魔法で先制攻撃とかしてもいいですか」

スライムはそれなりに大きな的だからライフルを使えば狙えると思う。

暇なときにスコープを調整してグルーピング(集弾範囲)も30メートルで40センチと精密とはいかないけど魔獣相手の実戦でそれなりに有効な精度にはなってる。


「森の中なら周りに迷惑かけないしいいんじゃないかな」

少し悩んだようだけどお許しもいただいたし、久しぶりにガンナーとして働きますか。


さっそく武器をアポーツで呼び出す。

今日のライフルはレバーアクションでエアーコッキングするタイプのウィンチェスターM18ほにゃらら。

実はウィンチェスターのこのタイプは各メーカーから何種類か出ていて自分のライフルだけど1800年代の何年だったか覚えてないんです。

でも日本国内じゃ有名な東北のトイガンメーカーで弾道も素直だしお気に入りなんだよね。


雷の魔玉はすでに装填済み。


僕はライフルを構える。なんか緊張するな、スライム駆除の間はエアガン使ってなかったし。


風は軽い追い風。弾道にはあまり影響ないだろう。


ライフルの下部にある装填レバーをガシャンと起こしてしっかりと元の位置に戻す。ちなみにこの操作を素手で急いでやるとたまに手の皮をレバーとストックの間に挟んで痛い目に遭う。

かなり痛かったりするから注意しましょう。


でっかいワラビ餅の姿をスコープにとらえた。伸び縮みしながら近づいてくる。高さはあまりないがそれでも森にまばらに生えている短い雑草の上に体は半分以上見えている。


2,3発あれば当たるかな。


別に一発必中じゃなくちゃいけないわけじゃないし気楽にいくか。


スコープから逃さないように捕捉しながらゆっくり引き金を引く。


パシュッ


このライフルは弾足が速いので覗いてるスコープでその弾道は目視出来なかったがスライムの体の一部がパシャと弾けるのが確認できた。


次の瞬間。


バッシャーーン!



スコープの中のスライムに電光が走ったと思ったらスライムが粉々に弾け散った。





「銀城、なにがおきた!」


何って、何だったんでしょう?


「銀城!」


「スライムに雷魔法が命中したと思ったら爆発しました」

としか言えないよね。


僕らの周りにいてまだスライムと交戦していなかった味方がビックリして僕を見てる。


飛び散った体液は森の外まで飛んできていた。幸いみんな森から距離を置いて布陣していたから被害はなかったけど。

あっちこっちでスライムの体液がジュウジュウと草や地面を溶かしている。


一歩間違えたら大惨事だよ。


「銀城、それ禁止!っていうか頼むから雷魔法は使わないで」

マギさんのそれは懇願に近かったけど僕だって使いたいと思いませんから。


「イ、イエッサー」

せっかくの出番だったけどごめんね。

僕はアポーツしたばかりのウィンチェスターをテレポートで送り返した。


「マギさん、今のはなかったということで仕切り直しでいいですか」

冷や汗ダラダラ。


「昨日と同じ作戦でいこう」

マギさんのこめかみにも汗が。


スライムに魔法は厳禁です。



ダニロさんとブロンはスライムに剣で無双の大暴れ。

ほかの人達も剣や槍などで堅実に始末している。


そしてマギさんと二人、近いスライムはザルで核抜き、離れたスライムには毒団子の投擲というハメ技っぽい作業で夕方前に200以上の核を採取した。


そしてヒヤリとした夕凪が吹く頃、今日はおしまいかなとみんなが感じていた時、森からガシャガシャと音を立てスライムと違う生物の気配が近づいてくる。


森からスライムを追いながら黒っぽい緑色をした甲虫達が姿を見せた。

頭はシャープでお尻がずんぐりとした涙滴型の虫だった。


コイツらは森を出ると人には目もくれず次々にスライムにかぶり付き飲み込んでいく。

コイツらがスライムツムリなんだろう。

コイツらが出てからハンターや有志の連中は一様にスライムから離れ遠巻きにスライムが食べられていくのを眺めてる。


警戒しながらも呆然とその様を見ていた僕の横を通り抜けタライの中のスライムの核に噛みつく。

思わずアッ、とマギさんと二人声を上げたが処分に困っていたし食べられるなら仕方ないかと眺めていたが、タライの核に噛みついたツムリは不味いものを食べてしまったかのように口から何度か黄色い液状の物質を吐き出し悶えるように頭を上下に振ると一目散に森に走り消えてしまった。


他のツムリもスライム食いつくしもうこの場にいないとわかると森に戻ってしまった。



「ふう」

誰かのため息が静まり返った草原に広まる。


「みんなご苦労だった、おそらく今年はこれで終わりだろ。怪我人の処置をしたら各自装備をまとめ撤収。解散だ!」

サマージの宣言によりスライム駆除が終了となった。


駆除っていうか、後半は雪掻き見たいに長柄ザルでスライムの核を掬ってるだけだったが終わってみたら…特に思い返すような事も無し、不毛な日々でした。


「剣は叩きつけるだけじゃダメだ」

「イメージ通りに刃は走ってるぜ」

「ブロン、太刀筋はいいが核に当たる瞬間気持ち押すか引くかした方が刃の通りが良いぞ」

「そうなのか?ダニロは無造作に斬ってるように見えたぜ」

「まあ俺も10匹に8,9匹位しか一太刀に斬れなかったから修行不足なんだろうな」

「マジかよ、俺は10匹で4,5ってとこだぜ。あと5日はスライムが出てほしかったな」


スライムで青春してんな。ついていけん。



「じゃあ今夜はお疲れ様と銀城の秘密を肴に皆で飲もうか」

「あー、マギさんとハウザーさんの勝負が終わってからでも僕は構いませんよ」

心の準備がまだ。


「銀城、私は仲間との友情を深めることをとても大切にしているつもりだよ」

目が怖いです。

別に女たらしとか思ってませんから睨まないでください。


「よし、今日はマギの奢りだ」

「いいですよ」

「やったぜ、浴びるほど飲んでやる」

「「ブロンは今日から禁酒!」」

「そんな、銀城謝るから禁酒は勘弁してくれ」

「この際ブロンの酒癖を改善するべきだよ」

「マギ!」

ブロンのヤツ、マジで泣きそう。

「僕のいた所には断酒会ってのがあって」

「断酒って一生飲ませないつもりか!」

「お酒が飲めないならお茶がありましてよ」

ホッホッホッ

「頼む、せめて10日で勘弁してくれ」

むう、逆恨みされてもやだし。そもそも一ヶ月の禁酒なんて僕にメリットないからゆるしてやるか。

「大マケで明日から10日間禁酒でゆるしてやるよ」

「さすが銀城、可愛い後輩だぜ」


「じゃあ、行くか」



これにて一件落着?





地味なこの物語の中でも特に地味だったスライム駆除編の完結です。

むさい男社会にそろそろマスコットキャラが欲しくなってきた。

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