スライム駆除 二日目
翌日、寝坊助のブロンを叩き起こし僕達は早くに朝食をすませると再び町の南の森の前にきた。
昨日と同じお風呂掃除スタイルです。
よく見ると僕同様に普段着に頭や手首とか露出部分に布を何重にも巻いて保護してる人がいる。
鎧兜のハンターの方が露出が多くない?
「なんだよ、俺達が一番乗りじゃねえのかよ」
「ブロンが二度寝するから遅れたんだよ」
「一番じゃないんだったらもう少し寝かせろよ」
「何言ってんだよ。ほとんど集まってるじゃん」
別に一番になりたかったわけじゃないけど、すでに半数が集まってるのを見るとギリギリ間に合ったよって気分になるのは日本人だからだろうか。
「今から気張ることはないけどふざけてると大火傷するよ」
「わかってるよ、今日もビシバシ叩き斬ってやるぜ」
ブロンのヤル気にはついていけないよ。
スライムって血わき肉おどる感じが無いんだよな。
ゴミの分別作業みたい、イヤだけどやらないと困るからこなしています。
しかも混ぜるな危険だし。
「魔法で焼いたらまずいですか」
「町を含めて毒ガス危険地帯にしていいのなら私もスライムを焼きつくしてもらいたいよ」
一応聞いてみただけです。でもそれを聞いていたブロンが食いついてきた。
「燃やしたら斬れないだろ」
「楽な方がいいだろ」
「ふざけんな、核を斬った時のプリンッて感触が気持ちいいんだろ」
こいつ1人にやらせて宿屋に帰りたい。
「おはよう、昨日は怪我しなかった?」
ブロンのハイテンションに早くも疲れる僕に見知らぬコボルトの青年が声をかけてきた。
顔つきがシベリアンハスキーっぽい。
「おはようございます。昨日はなんとか無事にやれましたよ」
「それはよかった。火傷したらすぐに救護班のとこにいくんだよ、治療が遅れると酷くなるからね」
見た目よりイイ人だ。マギさんみたい爽やか系か?
そう思うとイケメンに見えてくる。
「おはよう、マギ」
「やあ、ハウザー」
お知り合いですか。
「「友人だよ」」
ハモった。
イケメン同志気が合うんだな。
「彼が新しく入った新人君だね」
「そうだよ、銀城だ。ハンターに成り立てだけど見所はあるよ」
おぉ、マギさんに認められてるよ。
「俺はハウザーだ。よろしく」
「初めまして、銀城です」
ハウザーさんの差し出された手を握る。
肉球がない、毛深くもない。
普通の手じゃん。
「銀城君?なんでがっかりしてるのかな」
ベツニガッカリナンテシテマセンヨ。
「おやおや、銀城相手じゃ女性を口説くようにはいかないみたいだね」
「友情や信頼は一朝一夕といかないんだよ。マギはせっかちだから酒場のナディアにふられたんじゃないか」
おっと。
「ナディアは大切な友人だよ。私は君と違って女性とも友情を結べるのさ」
「なるほど、友情の比率は偏ってるみたいだけど、その交遊関係の広さは見習いたいね」
時々姿が見えなかったのはソレなんですね。
「ハウザー程じゃないさ。君は少し控えた方がいいと思うよ、先日リリーから相談されたんだ。とある男性にしつこくつきまとわれるって」
「そんなわけないさ、パン屋のリリーの方から付き合って欲しいって言ってきたんだぞ、俺は友達からってなだめて」
「私がいったのは看護師のリリーなんだけど」
なにこの人達。
「くっ、役場のテシアがマギに二股をかけられてるかもしれないって俺に相談してきたぞ」
「バカな、テシアもハンナも夕べはそんな様子はみせなかったのに」
「俺も夕べテシアとデートした」
「一昨日私もイリアと一緒だったよ」
「あんた達、いつか刺されるぞ」
イケメンでも公私爽やかな人がいるんだと思ってたのに、僕の純情を返せ。
「銀城、私は社交的なだけだよ。ハウザーと一緒にしないでくれ」
「俺は淑女に対して平等な紳士だ」
僕をはさんで睨みあうな。
「私の指導に問題があるなら改善するよ」
マギさん、そんなに必死にならなくたって。
「見苦しいぞマギ、友人として情けない」
ハウザーさんも泣いたふりって、熱い演技っすね。
どっちの株も大暴落中です。
「銀城、前にギルドで助けてやっただろ。覚えてないか?俺はお前をサマージから救ってやったお巡りさんだよ」
サマージ=オーガから救った?
あの時か、大人気ないオーガに串刺しにされそうになったとき颯爽と現れてオーガに正座で説教したお巡りさんだ。
「あなたがあの時のオーガキラー様」
「それだよ、オーガキラー」
「ありがとうございました。あれ以来オーガも大人しくしてます」
声はデカイままだけどね。体格はどうしようもないし。
「だろ、俺は命の恩人で正義の味方のお巡りさん」
「引き分けでお願いします」
「「なぜだ」」
「すみません、ダニロさんのとこに行ってきます」
付き合いきれません。
「ハウザーのせいで私の築いたイメージが台無しだぞ」
「マギと同じに見られるなんて不本意だ」
「どちらが上か君の狙ってた雑貨屋のルーシーに判定してもらおうか」
「いいだろう、お前の毒牙からルーシーを護ってみせてやるさ」
こうゆう人がいるから男も女も独身が多くなるんだ。
ちくしょう。
「ダニロさん、オーガの演説はまだですかね」
「全員揃ってからだ」
「スライムは面倒ですね、このロングソードはボロボロですよ」
「手入れはしたが俺の剣も買いかえだな。一太刀じゃ核を斬れねえよ」
ですよね。
「これで日当が銀貨1枚か」
「ハンターはいい方なんだぞ、有志は町から銅貨70枚だ」
「どっちにしろ懐は温まりませんよ」
「金をかけたくなかったら棍棒で力任せに潰すか、腕がいいなら手製の槍で核を一突きなんてことも出来るな」
「ダニロさんならどっちもいけるんじゃない」
2メールはある体躯で腕もいいし。
「棍棒はやたら飛び散るから大人数でやるときは禁止って暗黙のルールがある」
「じゃあ、槍は?」
あれ、なんか気まずそうっすね。
「槍は苦手なんだ」
「得手不得手ってありますよね」
僕はどちらも不得手。
「灰でもぶっかけたらどうですか?」
酸にアルカリで中和できたり。
「昔そんなこといってた薬師がいたが効かなかったらしい。スライムの表面に膜があるから中まで入らないとか聞いたな」
細胞膜かな、僕の知識は生物科学より小学校の理科だからよくわからない。誰だよ、学校の勉強なんて大人になったら役にたたないとか言ってたのは。
イ○ダスか知○蔵でも買っといたらアポーツ出来たのに。
「地道に斬るしか無いのさ」
「灰色の戦闘ですね」
「秋になれば新麦のパンが食えるんだ、頑張れよ」
はーい。
同じ麦ならうどんかラーメンが食べたいけど。
僕が食に思い馳せているとサマージさんが重役出勤してきた。気力がみなぎってるようだからまたアレをやるのか。
「みんなー、王都に行きたいかー」
「「「オォー」」」
じいちゃんはあのクイズ番組好きだったけど。
元凶じゃないよね。
そして今日も夕方まで無心にスライムをバシャバシャとしらみ潰しにしてやりました。
得るものよりも出ていく方が多い戦いでした。
本気でスライム対策を考えないとスライムで悟りを開きそうだな。
Y.A先生の「八男ってそれはないでしょう」の書籍化を聞き、さっそく第1巻の予約しました。
今から待ちどおしいです。




