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Toy ガンナー  作者: チョーゆんふぁ
第三章 ハンター編
24/36

スライム駆除 初日

雨が上がったその日の朝早く、ダニロさんはスライム駆除を一番に名乗り出た。


それから僕たちは何度か魔獣を狩に行ったりして過ごした。


スライムが大量発生するのは毎年雨季の終わりからだいたい15日後らしい。

数日の間に続々と現れて出てこなくなったらその年はおしまい。

何故か発生のポイントも決まって集落の周辺の森に限られる。

スライムの生態を調査する学者もなく謎の生物だ。


僕としてはできればお会いしたくない面倒な害虫?だよ。



フォトキワの町にスライム出現の第一報が入ったのは17日目の昼飯時だった。


スライム戦でブロンが役立たずになると僕の負担が増えそうだからヤツの食事には常に目をひからせていた。

案の定ブロンの食事当番の時は狩った魔獣の肉を怪しい焼き加減で喰おうとするからダニロさんと僕は腕ずくで防ぎウェルダンで食べさせてきた。


「銀城、こんなに焼いたら旨くないだろ」


あんたはお腹が弱いんだからしっかり焼きなさい。





スライム駆除 一日目



現在僕がいるディベスタ王国を支える穀倉地域の一つがこのフォトキワだ。

フォトキワの町の郊外、南側に広大な麦畑がある。まだ青々とした麦の葉が朝日に照らされ風に波うっている。


麦畑から一番近い森の外周にハンターと有志の青年団が集結している。

100人以上いるな。

自分たちの主食を守るためだから集まりがいい。


ここにいないハンターはスライムをいやがって他の依頼を受けるなど理由を作って町を離れていた。


僕も用事を作って逃げたかったけどダニロさんがやる気まんまんなんだよね。


仕方なく装備を整えてきましたよ。

相手はスライムだから防御力とかは考えなかった。

シンプルなデニムシャツにジーンズ、ゴムの長靴とゴム手袋に頭は白の手ぬぐい。

ゴーグルとマスクで完璧なお風呂掃除スタイルだ。

手に持ってるのはロングソードだけど。


「ブロン、スライムは食べるなよ」

さすがにブロンもやらかさないとは思うけど一応釘をさしとこう。

「あんなもん、二度と食わねえよ」

喰ったのかよ。

「まだ私達が子供のころのことなんだけど、ブロンは村の畑を狙ってきたスライムを退治していたとき剣に付いた体液を舐めちゃったんだよ」

マギさんが笑いながら語ってくれた。

「皮膚についたら火傷するようなもんを何で舐めるんだ?」

「それなんだけどよ、何で舐める気になったのか俺もわからねえ」

お前が不思議そうにするな。

むさい男が首を傾げても可愛くないんだから。

「口の中が焼けて3日ぐらいまともに飯を喰えなかったからな。スライムだけは食わねえよ」

「よく今まで生きてこれたな」

「それ以来ブロンの家族も私も毒になりそうな物に近づけないように気をつけてたからね」

マギさんはお母さんですね。

「だけどよ、体液はダメだったけど核は旨そうなんだよな。剣で斬った感触がプリンッとして気持ちいいしな」

見張ってないとコイツ死んじゃうよ。

「バカ話はここまでだ。ブロン、スライムの核を喰ったら俺がお前の腹をおもいきりぶん殴って吐かせるからな」

「冗談だろ。ダニロに本気で殴られたら俺死んじまうよ」

青ざめた顔で腹を押さえる。

「何が冗談だ。俺のパーティーでスライムを喰うようなバカは血へど吐くまでぶっ飛ばす」

そうしてやって下さいダニロさん。死因がスライムの核を喰ったからじゃ、故郷の親御さんが哀れです。



日がのぼりはじめる中、ハンターギルド支部長のサマージさんがやって来た。

いつ見てもオーガだ。

とくに笑ったときにギラリと見える歯、八重歯なんて可愛いもんじゃないよ、もろに牙だね。

見た目に反してスゴく面倒見がいい人なんだけど。


「野郎共、準備はいいか」

「「「オオォー」」」

朝からテンション高いな。

「気温も上がってそろそろスライムも動き出すころだ。森から這い出てきたやつを片っ端から潰しちまえ。絶対に麦に近づけるなよ」

「「「オオォー」」」

おー。

「みんな王都に行きたいか」

「「「オオォーーー」」」

このネタの仕込みは誰だ!

「これは何なんですかマギさん」

「20年前くらいから上位精霊の間に広まったかけ声らしいよ」

ネタがピンポイントすぎる、だいたい王都って何故だ。

じいちゃんを問い詰めたいけど、いいや。

考えるのはよそう。


みんなが盛り上がっているのをよそに僕は森を眺めることにした。

何の変化もない普通の森になんだけど、大量発生とか異変があったら何処かに兆しとかあるんじゃないの。


サマージさんの演説がまだ続いている。


みんな熱いね。



しばらくぼーっとしていると誰かが騒ぎ始めた。

体毛の長いゴールデンレトリバーのようなコボルトのお巡りさんがしきりに森を指さし叫んでいる。


彼の指さす場所をよく見ると薄茶色のプルプルが草をかき分け森から這い出て来るのが見えた。



ワラビ餅じゃん。


それは大人が一抱えするほどの大きさの半透明なワラビ餅の群れだった。


「相変わらず気色悪いヤツラだぜ」

「私もああいうのは苦手なんだよね」

ダニロさんもマギさんもワラビ餅を知らないからですよ。

「旨そうな感じなんだけどな」

ブロンが舐めた気持ちがスゴいわかるよ。きな粉まぶしてかぶり付きたい。


「銀城、動きはハエが止まりそうなくらいトロいし、攻撃もしてこないけど気をつけるんだよ。こっちが斬りかかった時の体液の飛沫に触れると酷い火傷になるよ」

マギさんの忠告。

そうだ、相手はワラビ餅の姿をしてるけど混ぜるな危険だった。


「全員突撃ー」

サマージさんのかけ声と共にみんなが雄叫びをあげ戦闘が始まった。


僕らのパーティーもダニロさんを先頭にスライムめがけて走り出す。

今日はマギさんも剣を手にしている。

「無理して一撃でしとめようとするなよ。中の核は見た目より固いぞ」

そう言いつつダニロさんはスライムを間合いに入れると一太刀で核ごと真っ二つに斬り裂いた。

周りには飛沫一つ飛んでいない。

体はモロにパワーファイターなんだけどその太刀筋は素人目にも美しい。


弟子として良いところを見せないと。

「チェストー」

僕もスライムを袈裟斬りにしようと剣を振り降ろす。

バチャッ

ぎゃ、すげぇ飛び散った。

「バカ野郎、俺にかかるとこだったぞ。下手クソ」

あっ、ブロンごめん。

「銀城、刃が合ってなかったぞ。かけ声より太刀筋に集中しろ」

すみません、少しかっこつけました。


目の前のスライムに集中だ。

体の一部が飛び散ったが構わず麦畑にスライムは這っていく。

もう一度正面?に回り込み気合い一閃。

ふんっ。

シュパッ

多少飛沫が飛んだけど今度はキレイに斬り抜けた。


キレイすぎてスライムは何事もなかったように僕のわきを通っていく。


おかしいな、核を捉えたんだけどグニンと逃げられた。

ゼリーくらいの固さだと思っていたがこぶし大のタピオカみたいな手応えだ。

ワラビ餅にタピオカが入ってる感じ?


おのれ、もう一度。


「銀城、その剣じゃもう斬れないよ」

マギさんに言われて剣を見ると昨日の夜ピカピカに磨いた剣がスライムの体液を纏い白く濁っていた。

さわるな危険だから確かめられないけど刃も腐食されてダメなんだろうな。


「スライムの体を散らして露出した核を潰すんだ」

マギさんは剣の腹で体液を掬うようにのけて姿をさらした核に剣を叩きつけている。


一度くらいダニロさんみたくやりたかったが仕方ない。


僕もマギさんを真似てさっきのスライムをバシャバシャ散らして出た核にゆっくりと剣を突き刺した。


つまらん、今朝の盛り上がりは何だったんだよ。

確かに気を付ければ子供でも出来る仕事だな。

僕は深いため息を吐く。

さて、次だ。


そうして新たに森から這い出てきたスライムに歩みより半ば作業のように順番に始末する。


時々スライムの体液を近くにいた人にかけそうになって怒られたりしながら夕暮れまでに30匹以上を退治した。

そして今日は解散。

スライムは気温の下がる夜は森で動かないそうだ。


明日も朝からスライム退治だ。

このすっかり腐食されてしまった剣はスライムで使い潰すしかないので体液を拭き取るだけで手入れはしない。


金メッキの剣とかあれば楽なのに、いっそのこと長い柄に金メッキしたザルを付けて核だけすくい出すとか。

この世界ではまだ金メッキなんて技術はないようだからないものねだりなんだけどね。


心身共に疲れたからごはん食べて寝よう。

明日も早いんだから。


お休みなさい。


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