7.剣術と魔術の練習
スキル授けの儀式も終わったことだしということで、ノルトマンの本格的な剣術と魔術の練習が始まった。剣術は父親に嫌々参加させられていたが、今回は本格的に従士の中から専任の教師が選ばれた。
名前はアンドレアス。アンドレアスというと男らしいと言う意味がある。彼はこの名前をすごく気に入っているようだ。何でも彼の父親がつけてくれたらしい。
そして、「男はいつも男らしく勇敢であれ」と思っているらしい。正直言ってちょっと引いてしまう。しかし、根は正直で性格も優しい。親切にノルトマンに指導してくれる。
父親に剣を無理やり教えられた時とは違って、ここがダメとか、そこはもう少し力入れてとか適切な場面で適切に指導してくれる。彼がノルトマンに繰り返し言っていることは、「とにかく相手の動きをよく見てそれに対応すること」である。
その指導の甲斐もあって、剣術が嫌いだったノルトマンも少しずつ剣が好きになっていった。しかし、ノルトマンの剣の腕はお世辞にも良いとは言い難い。
しかし、嫌いにならないだけでも、彼の指導がよかったということである。「このまま剣術を続けて行けば学院の合格レベルぐらいには達するだろう」と言うのが彼の評価である。これを聞いて母親であるエヴィは満足するのだった。
次に魔術である。これも、従士の中から魔術に秀でた者が選ばれた。名前はマチルダ、マチルダの意味はこの世界では強い魔法使いの代名詞だそうだ。何でもこの国の神話にマチルダという魔法使いがいてとても強く、最後は戦場の乙女と言われたそうだ。その戦場の乙女にちなんで両親がつけたそうだ。
しかし、名前とは裏腹に彼女はとてもやさしく、温厚な性格だった。そして何よりノルトマンが彼女を気に入ったのは、彼女が最初の授業で的にした岩にノルトマンが「ダンゴムシがいる」と言うと、的を変えてくれたことである。これで、ノルトマンは彼女に懐くようになった。そして素直に彼女の指導を受け入れるようになった。
彼女はノルトマンのスキルが『ダンゴムシ語理解』であることは知っていたが、このスキルでは魔術は行使できない。そこで、彼女はノルトマンが魔力を感じることが出来るかを試してみた。
ノルトマンの手を持ってノルトマンに魔力を流してみた。すると、すぐにノルトマンは「おや」という顔をした。魔力を感じることは出来るようである。
次にノルトマンにお腹の中にある魔力を動かしてみるように言った。すると、ノルトマンはすぐに魔力を動かすことが出来るようである。
次にその魔力を手から出すように命じたが、ノルトマンが
「あの岩の下にはダンゴムシが居るから、いやだ」
と言い出した。そこで、
「どこならいい」
と聞くと、少し悩んで庭の大きな木を指さした。
マチルダは「ノルトマンは今日から魔法を習うわけだし問題ないだろう」と思い、庭の木を的にすることにした。そして
「今から見本を見せるから、同じようにするのですよ。木を穿て、氷の矢」
そう言うと、マチルダの手から氷の矢が飛んでいき、木に突き刺さった。
「さあ、やってみて」
ノルトマンは今マリルダがやったのと同じように、手を突き出して
「木を穿て、氷の矢」
と唱えた。すると、ノルトマンの手から、小さな氷の矢がでていき、木に当たって砕けた。
これにはマチルダが驚いた。初めての魔術の練習で魔術を行使したのである。
すると、ノルトマンは
「もう一度するね」
そう言って、氷の矢を放ち始めた。氷の矢は何度も何度も木に向かって飛んでいく。普通だったら、もう魔力切れのはずだがノルトマンにはその様子が全然ない。これにもマチルダは驚かされた。
「この子の魔力量どれくらいあるのかしら」
最初は「マチルダくらいか」と思っていたが、それからもずっと氷の矢を打ち続けるノルトマンを見て
「この子の魔力量は私以上だわ、ひょっとしたらこの伯爵家の従士で彼に敵う者はいないかもしれない」
と思った。
そして、この結果は同じく母親であるエヴィに報告された。
「魔法は一度見せただけでその魔法を習得しました。すごく器用です。威力は弱いですが、魔力量が多いので連続して打てます。将来的はこの伯爵家でも一番の魔法士になるでしょう」
これを聞いて、エヴィはとても誇らしげに思うのであった。
ここまでお読みいただいてありがとうございます。
続けてこの後7:40にこの作品「ダンゴムシの記憶を持つ男の物語」の8話を公開したいと思います。
今後とも私の小説
(連載中)「転生者とバグでない異世界人の物語」
(連載中)「牛乳とチーズは違う味がする(顔だけ男の気ままな旅)」
(完結)「マリーの思い家族の思いそして祠がつなぐもの」
(完結)「泡沫の恋の行方と花時計の思い」
(完結)「帝国皇女の憂鬱(前世の夫の生まれ変わりを捕まえろ)」
(短編・完結)「妖精に成れなかったダンゴムシの物語」
(短編・完結)「真冬の祭りそして祠がつなぐもの」
(短編・完結)「雨の日は嫌い、雨の日はやっぱり嫌、でも雨の日もちょっぴり好きかも」
(短編・完結)「北の関を死守せよ、野望は泡沫の夢と消えて」
をよろしくお願いします。




