6.ノルトマンの隠遁生活
ノルトマンの波乱に満ちたスキル授けの儀式が終わった。しかし、これはノルトマンの苦難の歴史の始まりだった。とにかくノルトマンのスキルが『ダンゴムシ語理解』であることは町中の人に知れ渡ってしまった。
町へ行けば、人目が気になる。貴族家の次期当主がこんなどうでもいいスキルしか持っていない。それを噂されているようで、人の話が気なる。でも人の近くは寄りたくない。よれば馬鹿にされるような気がする。
しかし、町の人にとってノルトマンはそれほどひどい存在ではなかった。スキルが『ダンゴムシ語理解』であっても町の人には関係無い話である。
それにスキルがしょうもなくても、この町の次期領主ということには変わらない。それに平民が貴族を馬鹿にすればどんな罰を受けるか分からない。
むしろしょうもないスキルを貰ったことでよけい町に来なくなったことの方を喜んだ。平民としては貴族と関わり合いにならないことの方がうれしかった。
ノルトマンは、このスキルを貰ったことで、町にはほとんど行かなくなった。家庭教師の授業を受けた後は庭でダンゴムシと会話して過ごすことが多くなった。
すると、ダンゴムシからこの家のメイドや従者が漏らした独り言をよく教えてもらうようになった。すると、彼ら彼女らの情報が自然とノルトマンのところに集まるようになった。中にはかなりやばい情報もあった。それらの情報をどうするかノルトマンは悩んだ。そして母親に打ち明けた。
「あのね、庭のダンゴムシさんが言っていたのだけど『今度、屋敷に来たメイドが屋敷の情報をよその人に漏らしている』らしいの」
するとこれを聞いた、母親はすぐに執事を呼んでメイドの監視を命じた。
しばらくして、そのメイドが追放になった。何でもそのメイドは母親の情報を実家の男爵家に送っていたようである。屋敷の様子ぐらいなら問題はないのであるが、そのメイドは公にしていない情報を執務室の掃除をするときに入手していたようである。
それで、次からは執務室の入室は信頼のできるメイド以外は出来なくなった。この件は母親に褒められた。始めてノルトマンのもらったスキルが生きた瞬間であった。
しかし、このようにしてノルトマンが屋敷の監視をしているということが屋敷のメイドや従者に知られると、ノルトマンが気味悪がられても困るということで、このことは執事以外には秘密にされた。
そのため、相変わらず、ノルトマンは残念なスキルしか持たない、かわいそうな子供であった。そして、ノルトマンのスキルの話は寄子の貴族はもちろん近隣の貴族にも知れ渡っていた。そのため、ノルトマンは同じくらいの貴族の子弟と付き合うことも避けるようになった。
辺境伯が夫を離縁したと言う話は、新たに婿入りを狙う貴族にも知れることになった。そして貴族の綴り書きが寄せられるようになった。しかし、母親のエヴィは「再婚する気はない」と言ってそれらの綴り書きをすべて送り返した。
一方伯爵家を追放された元夫ジーリグは囲っていた女と娘を連れて実家の子爵家に戻ったが、伯爵家からの請求額があまりにも多かったので、実家の子爵家からも追放された。すると囲っていた女から
「あなたが、息子を追放すると言ったからこんなことになったのですよ。私はあのままでもよかったのですから」
と責められた。
娘からは
「お腹減った。もっと美味しい物を食べたい」
とせがまれたが、お金はなく、途方に暮れていた。
腕は立つのだから冒険者でもすればいいと思うのであるが、まともに働くのは嫌なようで、冒険者登録はしてもクエストはあまり受けなかった。そのため、いつも金に困っていた。また、今まで貴族として周りからちやほやされていた人間が、いきなり平民になってもうまくいかないようで、絶えず周りの人間と諍いを起こした。
ここまでお読みいただいてありがとうございます。
続けてこの後7:30、7:40にこの作品「ダンゴムシの記憶を持つ男の物語」の7話と8話を公開したいと思います。
今後とも私の小説
(連載中)「転生者とバグでない異世界人の物語」
(連載中)「牛乳とチーズは違う味がする(顔だけ男の気ままな旅)」
(完結)「マリーの思い家族の思いそして祠がつなぐもの」
(完結)「泡沫の恋の行方と花時計の思い」
(完結)「帝国皇女の憂鬱(前世の夫の生まれ変わりを捕まえろ)」
(短編・完結)「妖精に成れなかったダンゴムシの物語」
(短編・完結)「真冬の祭りそして祠がつなぐもの」
(短編・完結)「雨の日は嫌い、雨の日はやっぱり嫌、でも雨の日もちょっぴり好きかも」
(短編・完結)「北の関を死守せよ、野望は泡沫の夢と消えて」
をよろしくお願いします。




