4.父の秘密
ノルトマンは庭のダンゴムシと会話が出来るか試してみた。1匹のダンゴムシを見つけると、メイドに聞かれないような小さな声で
「ダンゴムシさん、僕とお話ししよう」
すると、逃げようとしていたダンゴムシが、不思議そうにノルトマンを見て
「私たちの言葉が分かるの?」
と聞き返してきた。
「分かるよ。僕の前世はダンゴムシだったみたい」
するとダンゴムシは近寄ってきて
「あなたは、私たちの仲間なの?」
「そうだよ」
それからはいろいろな話をした。ダンゴムシからは、庭のダンゴムシを踏み潰さないようにお願いされた。ノルトマンは「メイドたちに言っておくが、ダンゴムシは人間に比べて小さいので気づかないこともあるかもしれない」と答えた。
そんなある日ノルトマンはダンゴムシに尋ねた
「君たちは兄弟がいっぱいいていいね」
すると、1匹のダンゴムシが
「ノルトマンにも兄妹がいるよ」
と答えた。
すると、そのダンゴムシは
「あなたのお父さんが庭で小さな声で言っていた。『町の家に子供がいる』と言っていた。ノルトマンより小さいらしい。『妹』と言っていた」
始めてのことなので、ノルトマンはびっくりした。
よくわからないので、母に聞いてみることにした。母のところに行くと、ノルトマンが自分から来てくれたことに感激して、母はうれしくなってノルトマンを抱きしめた。
「私の可愛いノルトマン。自分から母のところへ来てくれたのね。母はうれしいわ」
「母上、聞きたいことがあるのだけど、僕に妹がいるってホント?」
すると母の顔が急に険しい顔になった。
「どこでその話を聞いたの」
「庭のダンゴムシが言っていた」と言うと「自分がおかしな子供だ」と思われると思って、
「何となくそう思った。だって、父上は毎週決まった日に町へ行くから」
「そうね、私もおかしいと思っていたのよ。それじゃ今度お父さんの後をつけてみようかしら。でもこのことは母とノルトマン2人だけの秘密だから、誰にも言っちゃだめよ」
「わかった。誰にも言わない。僕とお母さんだけの秘密」
そして、次の日、今日は父が決まって出かける日だ。ノルトマンは母と執事と一緒に馬車で出かけた。表向きは買い物ということになっているが、実際は父の後をつけることだ。唯馬車で付いて行くと父に気づかれるので、父の後は従者のハンスにつけさせている。
市内まで行って、教会の横の広場に居た時に、ハンスが戻って来た。どうも父は市内の1軒の家に入っていったようだ。母とノルトマンと執事はハンスの案内でその父が入っていったという家のほうに歩いて行った。
家の近くまで行って、物陰からその父が入っていったという家を見ていると、父が家から出てきた。父は家にいるときの立派な服ではなく平民の恰好をしている。そして父の後には女の人が続いて出てくる。その女の人は小さな女の子の手を引いている。女の人と小さな女の子が家の前に出てくると、父は小さな女の子を抱きかかえて歩き出した。
母の顔を見ると鬼のような顔をしている。怒りが抑えられないようだ。父は浮気をして子供まで作っていたようだ。これからどうなっていくのだろうと思った。
3人が行ってしまうと母が急にノルトマンを抱きしめて
「あなただけが頼りよ。あなたは私の子なのだから」
そう言って泣き出した。
しばらくすると落ち着いたようで、いつもの母の顔に戻っていた。そして執事に、
「見ましたね、カイト、今後のことだけど」
「はい、奥様」
「密かにあの女と娘のことを調べなさい。そして、ジーリグが伯爵家の金に手を付けていないかも調べなさい」
それからノルトマンを抱きしめて
「お父さんなんて要らないよね」
と言い出した。
これにはびっくりしたが、最近父とは疎遠だし、父と母が仲良くないのも知っていたのでただ頷くだけだった。
ここまでお読みいただいてありがとうございます。
今日はここまでです。明日は、今日と同じ時間7:10、7:20、7:30、7:40にこの作品「ダンゴムシの記憶を持つ男の物語」の5話から8話を公開したいと思います。
今後とも私の小説
(連載中)「転生者とバグでない異世界人の物語」
(連載中)「牛乳とチーズは違う味がする(顔だけ男の気ままな旅)」
(完結)「マリーの思い家族の思いそして祠がつなぐもの」
(完結)「泡沫の恋の行方と花時計の思い」
(完結)「帝国皇女の憂鬱(前世の夫の生まれ変わりを捕まえろ)」
(短編・完結)「妖精に成れなかったダンゴムシの物語」
(短編・完結)「真冬の祭りそして祠がつなぐもの」
(短編・完結)「雨の日は嫌い、雨の日はやっぱり嫌、でも雨の日もちょっぴり好きかも」
(短編・完結)「北の関を死守せよ、野望は泡沫の夢と消えて」
をよろしくお願いします。




