28.新入生歓迎パーティー
学院に入学して1か月ぐらいしたら生徒会主催の新入生歓迎パーティーが開かれた。先ず、生徒会長の挨拶、その後適当に歓談である。ダンスを踊る人もいるが、新入生はまだ慣れていなのかダンスを踊る人は少ない。
このような会合はものすごく苦手である。ノルトマンは極度の人見知り、多くの人の視線が集まるような場所では気絶しそうである。何とか自分を保ちつつ壁際で料理をつまんでいる。せめてもの慰めが、一緒に来たベルタである。会話できるのはベルタだけ、先ほどからベルタ以外とは話をしていない。
本当は当日お腹が痛くなって欠席するはずだったのだが、ベルタが伯爵邸で「今度新入生歓迎パーティーがあるけど着ていく服がない」と言ったことから新入生歓迎パーティーがあることが伯爵邸の執事にばれてしまった。
急遽ノルトマンとベルタの服が作られたという経緯がある。ドレスは1か月では作れないので辺境伯家の取引のある商会で中古のドレスをベルタ用に仕立て直したのである。
そこまですると欠席というわけにはいかず、伯爵邸の執事やメイドに見送られて馬車で、しぶしぶパーティー会場まで来たという訳である。
普通はクラスの同級生と話をするのであろうが、ノルトマンの場合クラスに友達はいない。少なくともノルトマンはそう思っている。
ノルトマンは辺境伯家の次期当主である。寄子の貴族もあるわけで、そのような貴族の子弟は親からノルトマンとは友達になるように言われているのだが、当のノルトマンは関わり合いになりたくないと思っている。
寄子の貴族の子弟がノルトマンと目線があって、話しかけようとすると、ノルトマンはすぐに目線をそらしてしまう。すると、今度はノルトマンが唯一会話しているベルタに話しかけようとすると、今度はノルトマンがベルタを取られまいとして、会話を邪魔してくる。
ベルタは、そんな主人を何とかしたいと思っているが自分は平民、それにノルトマンとはクラスも違うので難しい。それでエルザ公爵令嬢を探したが、彼女は中央で何かトラブルの真っ最中。とても近寄れる状態ではない。
結局ベルタもあきらめて時間が経つのを待つことにした。そしてノルトマンと一緒に時計ばかり見ている。そうしたら、Cクラスのベルタが仲良くしている平民が話しかけてきた。近寄って来る彼女たちの姿を見たノルトマンはベルタの後ろに隠れてしまった。本当はノルトマンを前に出したいのだが、どうもうまくいかない。それでも何とか彼女たちの前にノルトマンを出した。
「ノルトマン様、先日冒険者クラブでご一緒したノア、サラ、ケイです。憶えていますか」
「覚えている」
「ノルトマン様は魔法の腕がすごいのですね。オーク3体を一度に倒すなんて相当なものだと思います」
「ありがとう」
「それに私たちあまり貢献していないと思うのですが、1人当たり金貨1枚ももらっていいのですか」
「いい」
女子の会話に対してノルトマンの返す言葉は最小限度である。段々と女子も疲れてきた。
それでベルタに話かけた。
「ベルタさん、そのドレスはどうしたの。先日ドレスがないって言っていたじゃないの」
「このドレスは辺境伯家で作ってもらいました」
「それにしてもノルトマン様とずっと一緒だけど、仲がよろしいのですね」
「ノルトマン様は私の御主人様ですし、私はノルトマン様の専属メイドですから」
「そうなの、将来はどうするの」
「私は将来辺境伯家へ戻るということで解放奴隷にしてもらいました。だから学院を卒業したら辺境伯家で働くことになっています」
「そうもう就職先も決まっているの」
「はい、ずっと辺境伯家で過ごすつもりです」
「お前はずっと辺境伯家にいろよ。お前がいなくなると俺はやっていけなくなる」
珍しくノルトマンが自分から口を開いた。
「分かっています。ずっとノルトマン様を支えていきます」
「ずっとだぞ。エルザみたいにいなくなってしまうと寂しい」
平民3人はノルトマンのその会話を聞いて「夫婦みたい」と思ったが、相手は貴族、口に出すのはやめた。こうして、新入生歓迎パーティーは終わった。ノルトマンはやっと新入生歓迎パーティーを乗り切ったのである。しかし会話したのは、専属メイドのベルタと冒険者クラブの平民女子3人だけとは、寂しい結果である。




